今回は、ビデオSEOの効果と、ビデオSEOを成功に導くためのポイントについてレポートしたい。というのも、私のブログでも度々紹介している米国のイーコマースサイト事業者ザッポスが、ビデオSEOを導入して成功を収めているという調査結果が報告され、それからというもの、ビデオSEOに再び脚光が集まりだしているからだ。

ビデオSEOというキーワード自体は特に目新しいものではないが、前述したザッポスの成功事例やソーシャルメディアの普及などもあり、ソーシャルビデオマーケティングを構成する重要な戦略の一つとして、ビデオSEOが生まれ変わろうとしている感がある。そこで、ビデオSEOの導入効果と成功に導くためのポイントを、ザッポスの事例を紹介しながら明らかにしてみたいと思う。

【1】　ザッポスが証明したビデオSEOの導入効果

米国のソリューションプロバイダ、サンディスカイが今年の7月に公開した「STATE OF VIDEO IN E-COMMERCE:Quarterly Research Report-Q1 2011」の中に、ビデオSEOに関する興味深い調査レポートがあるので紹介したい。

(1)　調査内容その１

■　調査方法

ショッピング・ドットコムで検索される上位のキーワードから、17のカテゴリと3,400個の上位キーワードを選び、オンラインビデオのSEO効果を検証。

■　調査結果

・検索エンジンの結果、18％がビデオを表示した。

・ほとんどのカテゴリでYouTubeが良い結果を出したが、ごく少数の小売事業者(ザッポス、HSN、オーガナイズ・ドットコム)は、自社のウェブサイトにトラフィックを直接運ぶことにビデオが影響を与えていた。

・検索エンジンによって上位に表示されたオンライン小売事業者は、自社のウェブサイト上に何千ものプロダクトビデオの資産を持っていた。

※　この調査結果で特筆すべきポイントは2点あある。

・検索エンジンが、ビデオをかなり高い確率で認識している。18％という数字は、ビデオが検索エンジンにかなり高い評価を受けているということを証明している。

・検索結果で上位に表示されるためには、ザッポスのように何千という大量のプロダクトビデオが必要である。

検索結果でビデオを表示したキーワードのグラフがレポートに掲載されていたので、参考までに紹介しておく。トップのコンピューターゲームと最下位の家具とでは、数字にかなりの開きがあることがわかる。

(2)　調査内容その２

■　調査方法

ショッピング・ドットコムで検索される上位のキーワードから、靴に関連した21,000個のキーワードを選び、ザッポスが公開しているオンラインビデオのSEO効果を検証。

■　調査結果

・検索エンジンの結果、8.1％がザッポスのビデオを表示した。

・ビデオの検索結果に起因している毎月のザッポスのトラフィック増加は、1カ月平均で訪問者数が77,316にも達した。

・インデックスされたザッポスのプロダクトビデオは、検索エンジンからかなり高い評価を受けていることが判明した。

たとえば、セレブの間で人気の高いブランド「michael kors fulton leather」をグーグルで検索すると、下記のようにザッポスのプロダクトビデオが上位を独占していることがわかる。ザッポスは、間違いなくビデオSEOを意識して導入している。

※　サンディスカイのレポートは、以下のURLからダウンロード可能。

　　 http://www.sundaysky.com/resources/state-of-video-in-e-commerce-11q1.html

【2】　イーコマースサイトにビデオSEOが必要な理由

ビデオSEOは、ザッポスの例からもわかる通り、自社で運営するイーコマースサイト上に用意するプロダクトビデオに対して行うものである。よって、プロダクトビデオ単独に実装するというよりは、プロダクトビデオを配備した製品紹介ページ全体に対して実装するという認識が正しい。

そこで、こんな疑問が持ち上がってくるはずだ。なぜイーコマースサイトにビデオSEOが必要なのか。あるいは、なぜYouTubeだけでは十分ではないのか。ビデオSEOの重要性を理解するためには、この疑問を先にクリアにしておかなければならない。

■　ビデオSEOはYouTubeよりも高いパフォーマンスを発揮する

米国のイーコマースサイトにおけるイーコマースビデオ(中でもプロダクトビデオ)の普及には目覚ましいものがある。しかし、サンディスカイのレポートにもあった通り、米国のイーコマース事業者の中でも、ビデオSEOを自社のイーコマースサイト上で実践している企業は、ザッポスをはじめ2、3社に過ぎないと言われている。イーコマース事業者のほとんどは、いまだにYouTubeを利用してプロダクトビデオを配信している。

しかしYouTubeは、自社のイーコマースサイトのトラフィックを増やすことに貢献はしてくれない。YouTubeは、ブランドを消費者に広く認知させるという点ではもの凄い効果を発揮するが、製品の検索結果を上位に表示させ、最終的に売上を増やすという点ではほとんど無力であるということが、最近になって専門家の間で常識になっている。

ただ単にブランドの認知を向上させるだけではなく、製品の検索結果を上位に表示させ、最終的に売上を増やすという結果を求めるのであれば、自社のイーコマースサイトで公開しているプロダクトビデオに対してビデオSEOを実装しなければならない。

■　なぜビデオSEOが必要なのか

⇒　ビデオSEOは、既存のイーコマースサイトのSEOを強化する

ビデオSEOは、プロダクトビデオを配備した製品紹介ページのトラフィックを増大させると伴に、既存のイーコマースサイト全体のSEOを強化にも貢献する。よって、イーコマースサイト全体のSEO戦略の中に、ビデオSEOを取り込むことが必要になってくる。

つまり、ビデオSEOによって最適化されたプロダクトビデオは、製品紹介ページとイーコマースサイト全体の両方のSEO強化を実現することを可能にするということだ。検索エンジンで上位に表示されるプロダクトビデオの検索結果は、イーコマースサイトに多くのトラフィックを運び、最終的には売上の増大に貢献することになる。

しかし、そのためには、プロダクトビデオを正しく配置した製品紹介ページが必要だ。そのための貴重なサンプルが、video-commerce.orgに公開されていたので紹介しておく。ポイントは、プロダクトビデオの回りに写真とテキストを効果的に配置することだ。

実際の事例としては、やはりザッポスの製品紹介ページが参考になる。プロダクトビデオを配置するために考え抜かれた、お手本のような製品紹介ページだと言っていいだろう。

※　ザッポスのイーコマースサイト　⇒　http://www.zappos.com/

【3】　製品紹介ページにビデオSEOを実装するためのポイント

最後に、イーコマースサイト上の製品紹介ページにSEOを実装する際に気をつけておきたい、12のポイントを紹介して終わりにしたい。

(1)　ビデオのためのランディングページを作成する

1つのプロダクトビデオに対して1つのURLを用意する。そのURLは、自社の製品名を含んだキーワードで、必ずユニークなものでなければならない。また、タイトルのタグの終わりには、必ず”video”のキーワードを含めることを検討する。

(2)　製品紹介ページにビデオを埋め込む

ウェブ・ページに直接ビデオを埋め込む。そうすることで、個別のページ上にビデオを実装する以上に、SEOにとって最も大きなチャンスがもたらされる。ビデオをポップアップ・ウィンドウ埋め込むことは悪いSEOの例である。

(3)　すべてのウェブサイトSEOの基本を適用する

タイトル・タグ、ヘッダ＜h1、h2…> 、説明文、本文、URLへのキーワード・アンカー・テキスト、関連製品ページと他のウェブサイト・ページのクロスリンクなど。

(4)　ビデオの回りに文脈を配置する

ビデオの回りにキーワードとテキストを配置することは、顧客にとって有益である。タグ、記述、さらに顧客のコメントを許可することも非常に効果がある。もしも顧客からのコメントを受け入れるのであれば、それらの調整役を果たさなければならない。

(5)　レビュー・ビデオの導入を検討する

レビュー・ビデオを支持することが必要になる。一般の消費者、ファン、ウェブ上の著名人が参加してくることで、それを確認しようとする他のユーザが集まってくる。そして、他のユーザは自社の製品を口コミで広めてくれる。

(6)　グーグル・ビデオ・サイトマップでグーグル・サーチにビデオを供給する

ビデオを配置している実際のウェブページ、ビデオをアップロードしてある場所のURL、使用しているサムネイルのリンク先を必ず含める。

(7)　メインのイーコマースサイトとは別のビデオ専用サイトを検討する

.tvやvideoのサブドメインを切って、ビデオ専用のサイトを用意することは非常に効果がある。かなりの数のビデオを持っているイーコマースサイトに向いている。

(8)　コミュニティと係わる

各プロダクトビデオに、ソーシャルメディアへのリンクボタンとシェアボタンを用意する。これらのカウントは、バックリンクとして検索エンジンの最適化に大きな影響を与える。プロダクトビデオにリンクを張ったり、埋め込んだりすることを可能限り推奨し、ビデオへの反応を受け入れることを検討する。

(9)　ソーシャルメディアのためにディスクリプションの中にホットリンクURLを含める

(10)　可能な限りカタログ全体にプロダクトビデオを拡大して行く

(11)　ビデオの回りにユニークなコンテンツを配置する

メーカーやブランドが他のイーコマースサイトにも提供しているコンテンツは、そのままコピーして使わない。検索エンジンからも、コピーとみなされてしまう可能性が高い。

(12)　ビデオを使って、最適化された製品カテゴリページを作成する

以上である。原文は以下のサイトで参照可能だ。

※　情報ソース　⇒　http://video-commerce.org/2011/08/video-seo-product-pages/

今回紹介したビデオSEOに関するまとめは、YouTubeの利用を検討しているイーコマースサイト事業者のにとって、もう一度戦略を練り直すヒントになったのではないだろうか。ビデオSEOは、自社のイーコマースサイトのトラフィックを増やすことが、成功への第一歩であるということを改めて教えてくれている。

また、ビデオSEOに関するチップスやノウハウに関する情報は、他にもウェブやブログでたくさん紹介されている。今回紹介し切れなかった情報については、機会をみてまた紹介したいと思っている。

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