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バイラルビデオを探していると、時々自分のツボにピッタリはまる作品に出会うことがある。そういった作品のほとんどは、凄い大ヒットになるようなことはない。どちらかというと、万人受けしないマニアックな作品が多い。ところが、不思議なことに、なぜかそういう作品に限って新作が待ち遠しくてしかたがなくなる。そんな宝物のようなバイラルビデオを、今日見つけてしまった。

■ PEPSI PINAS | "Sa Akin Ang Pinas" FULL



ペプシのPEPSI PINASというブランドのバイラルビデオ広告で、見ての通りのハチャメチャ振りがいい。2分5秒もあるのに、全然飽きさせない。こういう作品を、勝手にB級バイラルビデオ広告と呼ばさせてもらうことにする。ところでこのPEPSI PINAS、調べたところによると、フィリッピンでしか売っていないペプシの新しい飲料らしく、ペプシのウェブサイトを調べてもあまり詳しい情報が載っていない謎のドリンクである。もし詳しい情報をお持ちの方がいれば是非教えてほしい。

このぺプシのPEPSI PINAS、フェイスブックにファンページも用意されている。こちらも是非チェックをお薦めしたい。
※ http://www.facebook.com/pepsisarapmagbago

この「PEPSI PINAS | "Sa Akin Ang Pinas" FULL 」を何度も視聴していたら、急にコカコーラとペプシのバイラルビデオ広告のことを調べてみたくなった。ということで、今回はコカコーラとペプシのバイラルビデオ広告を比較してみたいと思う。実は、6月3日のブログ「1,000万回視聴されたバイラルビデオ広告68作品のランキングチャートを作成してみた」を書き終わってから、ランキングチャートにペプシの名前はあるのに、コカコーラの名前がなかったことがずっと気なってしかたがなかった。なぜなら、コカコーラもペプシに負けず劣らず、印象的なバイラルビデオ広告を数多く発表しているという印象を持っていたからだ。

早速下に用意した「コカコーラVSペプシ バイラルビデオ広告TOP20 」を参照してほしい。例によって、visiblemeasuresViral Video Chartを使ってチャート化してみた。今回の基準は、視聴回数100万ビュー以上。偶然にもTOP20となったので、可能であれば是非全ての作品を視聴してみてほしい。

Cocacola_vs_pepsi

今回のチャートは、区別しやすくするために、コカ・コーラを「赤」ペプシを「黒」で表している。チャートを見てすぐにわかる通り、数は赤の「コカ・コーラ」が多く、上位TOP5はすべて黒のぺプシという結果となった。TOP20にランキングされた件数は、コカ・コーラが12でペプシが8と、コカ・コーラの方がぺプシより4件多い。ところが、ランキングされたTOP20のぞれぞれの合計視聴回数は、コカ・コーラが33,141,339回でペプシが106,675,265回と、ペプシの方がコカ・コーラの約3倍もある。コカ・コーラの方がペプシよりもランキング入りしている件数は多いのに、全体の視聴回数で大きく差をつけられている原因は、TOP5全てをペプシに独占されているからである。

私の探し方が悪いのかもしれないが、コカ・コーラの1千万回以上視聴されたバイラルビデオ広告を探してみたのだが、結局見つけることができなかった。また、6位の「Rocket Car」は、コカ・コーラとメントスを混ぜればどんなことが起きるかという実験を試みたバイラルビデオであって、コカ・コーラが制作したものではない。そういう意味では、本当はTOP6迄をペプシが独占していたことになる。視聴回数の合計に至っては、「Rocket Car」が560万回も記録しているので、3千万回にも届かないということになる。

ランキングの結果だけを見れば、ぺプシの圧勝ということになる。コカ・コーラは、100万以上視聴される少・中ヒットのバイラルビデオ広告は生み出せるものの、大ヒットするバイラルビデオ広告についてはペプシの独壇場といったところだ。

Top20_2

この差の原因はどこにあるのか、素人目線で分析してみる。ポイントは大きく二つあると思っている。まず第一に、コカ・コーラのバイラルビデオ広告は、キレイに出来てはいるものの、驚きという部分で物足りなさが残る。大ヒットするには何かが足りない。これは勝手な想像なのだが、コカ・コーラというブランドを大事にするあまり、挑戦的なアプローチができなくなっているのではないだろうか。この点については、8位以下の作品を視聴してもらえれば、ある程度同意してもらえるのではないかと思っている。一方のぺプシは、完全に挑戦者の立場でアプローチしていることが明確だ。少・中ヒットよりも大ヒットを狙いに来ていることを、作品を通して感じることができる。

■ Coca-Cola Happiness Machine



第二に、コカ・コーラは、今のところバイラルビデオ広告を、ペプシほど重要視していないように思う。コカ・コーラのバイラルビデオ広告を視聴して物足りなさを感じるのも、バイラルビデオ広告に対するこのスタンスが大きく影響しているのではないだろうか。その反対に、ペプシは間違いなくバイラルビデオ広告を重要視している。それを証明するのが、両社のキャラクター戦略だ。

大ヒットするバイラルビデオ広告には法則がある。絶対ではないが、取り入れることで大ヒットする確率が高くなるという法則だ。その一つにキャラクター戦略がある。ある特定のキャラクターを起用することで、ヒットする確率が高くなるというもので、赤ちゃん・子供、イヌ・ネコ、スターの3つである。そして、コカ・コーラに一番欠けているのがスター。バイラルビデオ広告に関して言えば、コカ・コーラはスターをほとんど起用しない。つまり、あまりお金を使っていないのだ。一方ペプシは、時々スターを起用してあっと言わせてくれる。最近では、デビット・ベッカムを起用した「Unbelievable David Beckham 」が記憶に新しい。

※ コカ・コーラ最大のスターはサンタクロース?

■ Snow Globes - Coca-Cola 2010 Christmas Commercial (long version)



※ 本当にアン・ビリーバブルなデビット・ベッカムが話題になった最近の作品。

■ Unbelievable David Beckham



以上の結果から、バイラルビデオ広告の世界では、ペプシがコカ・コーラをリードいていると言っていいだろう。ただ、もちろん個人の好みの問題もあるので、コカ・コーラのバイラルビデオ広告の方が好きだという読者がいても何の不思議もない。ブランドイメージを大事にした正統派のバイラルビデオ広告と、今回の「PEPSI PINAS」のようなかなり行っちゃっているバイラルビデオ広告のどちらが好みかということだ。

コカ・コーラとペプシが、今後どんなバイラルビデオ広告を発表してくれるのか、楽しみでしかたがない。

itoman

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伊藤 靖

伊藤 靖

株式会社リトルウイングス代表取締役。
青森県弘前市出身。大田区蒲田在住。
企業のメディア戦略、コンテンツ戦略、モバイル戦略の構築と実行をサポートするサービスを提供しています。

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