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ビムーブが事業を開始したのは、2008年の4月1日。つまり、震災で一番大変な最中に無事3年目を終え、そして4年目に突入したことになる。振り返ってみれば、あっという間の3年間だった。この間、いろんな紆余曲折がありながら、2008年の4月時点で0社だったお客さまは契約ベースで200社を超え、従業員は4名から8名に増えた。大きなマイナスの変動要素さえなければ、月次ベースでの黒字も達成できるまでになった。提供できるサービスのメニューも増えた。事業開始当初は1種類だけだったサービスの種類が、現在では4種類に増えている。数字だけで見れば、3年前に比べてかなり会社らしくなったと言っていい。

この3年間、ビムーブはある二つのことを大事に守り続けてやってきた。それは、動画配信サービス事業者とベンチャー企業であること。商談や名刺交換の際、必ず「動画配信サービスを法人向けに提供しているベンチャー企業です」と言って相手に名刺を渡して続けてきた。なぜなら、動画配信サービス事業者としてのこだわりと、ベンチャー企業であるという誇りがビムーブには重要だったから。

3年前、法人向けにクラウド型の動画配信サービスを提供すると決めた時、実は多くの方から、YouTubeという無料のサービスがあるのでお金を払ってまでサービスを利用する企業なんてないんじゃないかとか、同様のサービスを提供している競合会社がたくさんいるので、差別化を図るのが難しいんじゃないかとかいうアドバイスをたくさんもらった。当時もらったこれらのアドバイスを、今も否定する気は全くない。なぜなら、当時アドバイスをくれた人たちは、本当にビムーブのことを心配してアドバイスをくれたからだ。それらのアドバイスに真剣に耳を傾けた上で、こう考えるようにした。

まずはYouTubeの存在。YouTubeは、もともと一般ユーザー向けの動画共有サービスとしてスタートしている。無料である点は確かに重要な要素ではあるが、法人が利用するサービスとしては不足している機能が多いことも事実だった。YouTubeで十分な企業がいることは間違いないが、YouTubeが提供する機能では満足できない企業があるのも確かだった。YouTubeでは満足できない企業にアプローチさえできれば、市場は十分あると考た。

次は競合他社の存在。同様のサービスを提供している企業は確かにたくさんあったが、料金も機能も似たり寄ったりで特長がないように感じられた。大胆な料金プランと、顧客の要望を毎月新しい機能として提供し続けることで差別が図れるのではないかと考えた。当時、競合他社のほとんどが、動画配信サービス以外の事業も展開していた中、ビムーブは他の事業には手を出すことなく、動画配信サービス事業者であることにこだわり続ける道を選んだ。ビムーブが動画配信サービス事業者であることにこだわり続けてきたのは、ベンチャー企業であることの誇りがそうさせていたことは間違いない。

ベンチャー企業かそうでないかの違いは、本来企業の規模や知名度によって決まるものではなく、その企業がベンチャー企業であることをやめない限り永遠にベンチャー企業であるというのが自論だ。IPOを目指すこと=ベンチャー企業では決してないはずである。ビムーブは一体この3年間、何に対してベンチャーし続けてきたのか。それは、動画配信サービスを利用してもらうことで企業、利用者に喜んでもらい、感動してもらうことだった。そして、ビムーブがベンチャー企業であり続けるというこの目的は、これからも変わることがないだろう。

今回の震災は、ビムーブにも大きなインパクトを与えた。詳細については触れないが、4年目を迎えることなど不可能なんじゃないかと一時は覚悟を決めた瞬間があった。ビムーブは、幸いにも震災後もベンチャー企業としてあり続けることができている。このこと自体が幸せなことだと心の底から思っている。被災地では、志半ばでベンチャー企業であり続けることを断念せざるおえなかった多くの経営者と従業員がいる。ベンチャー起業を創造するという夢を断念せざるおえなかった多くの起業家もいる。彼らの無念さと喪失感を背負いながら、残されたベンチャー企業は何を目指せばよいのだろうか。

一つだけ言えることは、ベンチャー企業であり続けることができる企業は、いつまでも喪失感などに浸っていられないということだ。ベンチャー企業は経済活動を止めてはいけない。震災後に目指すべきものは、その後に見つかるのかもしれない。

itoman

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プロフィール

伊藤 靖

伊藤 靖

株式会社リトルウイングス代表取締役。
青森県弘前市出身。大田区蒲田在住。
企業のメディア戦略、コンテンツ戦略、モバイル戦略の構築と実行をサポートするサービスを提供しています。

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