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iPhoneまたはiPadのユーザなら誰でも知っている、アドビとアップルによって繰り広げられたFlash戦争。このユーザを巻き込んでの戦争も、そろそろ終わりに近づいているようだ。結果はアップルが勝利を得たというのが大方の見方のようである。

アップルは、次期iPhone/iPadをFlashに対応させる気は全くないようだし、Flashに対応していることで期待されていたAndroid搭載のスマートフォンやタブレットPCも、OS2.2からFlashに対応するという戦略上のミスもあって、市場を制圧することに失敗した。

むしろ、当初強気だったアドビの方が、アップルが開発したストリーミング配信技術であるHTTP Live StreamingプロトコルをFlash Media Serverに対応させたりと、アップル側に歩み寄りを見せ始めているように思える。

本題に入る前に、アドビとアップルが繰り広げたFlash戦争を知らないという方のために、その顛末を簡単に説明しておくことにする。そもそものことの始まりは、アップルがiPhoneにFlashを搭載しなかったことにある。

Flashは、アドビが開発したソフトウェアで、PCの95%以上にインストールされていると言われている、動画を再生するために必要な技術だ。ことPCに限って言えば、YouTubeもこのFlashを使って動画を配信しているほど、動画の配信/再生に関して言えばデファクトスタンダードと言っても過言ではないほど当たり前になっている技術である。当然、アドビもユーザーも、iPhoneもFlashを搭載し、Flashを使って動画を再生するに違いないと信じ込んでいた。

ところが、蓋を開けてビックリとはこのことだろう。アップルは、iPhoneにFlashを搭載しなかったばかりか、それだけでは飽き足らず、iOS搭載の端末は永遠にFlashを搭載することはないだろうといったニュアンスの発言を繰り返し、アドビの神経を逆なでする始末だった。このFlashを搭載しないという方針は、ご承知の通りiPadにも引き継がれることになる。

困惑したのはユーザだ。せっかくウェブサイトにアクセスできても、動画が再生できないのでは購入した意味がない。ユーザからは、当然不満の声が聞かれるようになる。しかし、アップルはそれにも動じることなく、Flashを断固として拒み続けてきた。結局は、冒頭でも触れた通り、アドビが譲歩するカタチで終戦を迎えそうだ。

このアドビとアップルが繰り広げたFlash戦争であるが、新しい市場を創造するという副産物をもう一方で生み出していたということをご存じだろうか。弊社のような動画配信事業者が、iPhoneとiPadでもウェブサイトの動画が再生できる機能を開発し、それを新しいサービスとして市場に提供することに成功しているのだ。弊社に限って言えば、かなり多くのお客さまに使っていただいている。

仕組みは以下の通り。

1.サーバでiPhoneとiPadで再生可能なMP4形式のファイルに変換する。
2.サービス側で用意しているアプリケーションが、アクセスしてきた端末を自動で判別する。
3.iPhone/iPadだと判断した瞬間にサーバからMP4形式のファイルを呼び出す。
4.端末上に搭載されているQuickTimeを起動する。
5.動画の再生開始。

この5つの処理を瞬間的に実行することで、ユーザはPCと同じような操作でiPhoneとiPadでもウェブサイトの動画を再生して楽しむことができるようになる。

iPhoneとiPadでウェブサイトの動画を再生可能にするサービスは、今では弊社にとって欠かすことができないほど重要なビジネスにまで成長しており、収益にもかなりの貢献をしている。アップルがユーザに不便さを強いたことが、新しいビジネスを創造したのである。一見するとマイナスに思えることでも、発想を変えることでプラスに変えることができる典型的な例かもしれない。

アップルがiOS端末にFlashを採用しなかったことを、心から感謝している人間がここにいる。

itoman

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伊藤 靖

伊藤 靖

株式会社リトルウイングス代表取締役。
青森県弘前市出身。大田区蒲田在住。
企業のメディア戦略、コンテンツ戦略、モバイル戦略の構築と実行をサポートするサービスを提供しています。

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