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今週、個人的にとても気になる動画配信関連のニュースがあった。ところが、意外なことにネットではあまり話題に上がらなかった。ニュースの内容はというと、米アマゾンが定額制のビデオ有料配信サービスを開始するというもの。

※ 映画.comyより ⇒ http://eiga.com/news/20101208/3/

アマゾンって、もうすでにビデオ有料配信サービスを始めているのでは?確かにすでに始めいる。そこだけを見れば、なんのニュース性もないかもしれない。今回気になってしかたがなかったのは、アマゾンが定額制のビデオ有料配信サービスを始めるという点である。しかも、マイクロソフトやソニーまでもが、自社のゲーム機を対象とした定額制のビデオ有料配信サービスのリリースを計画しているという。そして、ここからがさらに興味をそそられる。各社が定額制のビデオ有料配信サービスを開始する背景に、ネットフリックスの存在があるというではないか。しかも、各社とも、このままではネットフリックスがビデオ有料配信サービス界のiTunesになってしまうことを危惧しているという。

ネットフリックスについては、広い意味で同じ動画配信事業者(ビジネスモデルも規模もまったく違うが。。。)にあたることから、随分前から注目していた。このまま行けば、ビデオ有料配信サービス界のiTunesになることも夢ではないと思っている。もともとは、オンラインDVDレンタルの会社だったのだが、今はビデオ有料配信サービスも提供している。

また、最近は話題にもこと欠かない。2010年11月20日には、アメリカ経済誌「フォーチュン」が選ぶ全世界商業人ランキング50で、ネットフリックスCEOのReed Hastings氏が第1位に選ばれている。また、業績も絶好調で、つい最近のスタンダード・アンド・プアーズが選ぶ総合500種銘柄に始めて加えられた。

では、ネットフリックスがここまで成功した要因はどこにあるのか。いろんな意見があるかと思うが、私は、成功の要因は月額定額制の料金体系とマルチデバイス対応にあると思っている。

■月額定額制&見放題の料金体系

ネットフリックスが月額低額制を採用したのは1999年。1998年に事業をスタートしているが、もともとは1枚につき4ドルのレンタル料金と2ドルの郵送料金を請求するシステムだった。1999年に月額定額制を採用してから、一気に顧客数を伸ばすことになる。ライバル会社のウォルマートも、今年9月に破産してしまったブロックバスターも同じ月額定額制を採用しているのに、なぜネットフリックスが業界1位の座に君臨できるのか。それは、単に月額定額制であるだけではなく、見放題だからである。

プランによって料金は異なるが、日本円で1カ月約1,700円くらいのプランに加入すると、一度に借りられるDVDの枚数は3枚までだが、1ヶ月間に借りられる枚数には制限がない。ちなみに、日本のツタヤの場合は1カ月に借りられる枚数にも制限がある。単なる月額定額制ではなく、消費者のことを一番に考えた、借りられる枚数の制限をなくした見放題プランを採用したことが成功の要因であったのではないだろうか。

■マルチデバイスな視聴環境

ネットフリックスの会員になると、PC以外のデバイスでコンテンツを視聴できるようになる。特にゲーム機への対応を急速に進めていて、プレイステーション3、Xbox360、Wiiなどでコンテンツを視聴することができるようになっている。もちろん、iPhoneを始めとしたスマートフォンでも視聴可能だ。

ビジネスモデルは異なるが、ビムーブが最近手がける動画配信サイトの事例においてもiPhoneとiPad対応は外すことのできない要件の一つになっている。あらゆる動画配信サービスにとって、マルチデバイス対応は避けては通れない大きな課題の一つだ。

■成功の教訓が活かされていない日本

一方、ちょっと気になるのが、ネットフリックス成功の教訓が、日本ではあまり活かされていないという点。たとえば、12月1日に日本テレビが始めた「日テレオンデマンド」。料金は1本315円で7日間しか視聴できない。視聴できるデバイスも、今のところPCと携帯のみのようだ。このあたりに、日本産の有料のコンテンツ配信サービスが成功しない原因があるような気がしている。アニメや映画など、日本には優れたコンテンツがたくさんあるのに、コンテンツ有料配信ビジネスの分野では米国の足元にも及ばない。この現状がちょっと残念だ。

itoman

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伊藤 靖

伊藤 靖

株式会社リトルウイングス代表取締役。
青森県弘前市出身。大田区蒲田在住。
企業のメディア戦略、コンテンツ戦略、モバイル戦略の構築と実行をサポートするサービスを提供しています。

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