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動画活用事例#1:テレビCM配信 その2

前回は、テレビCMをインターネットを使って動画配信することのメリットについて、実際の事例を紹介しながら解説した。今回は、企業がCMを動画配信する際に気をつけておきたいポイントについて説明したい。

■ストリーミング配信 vs プログレッシブダウンロード配信

テレビCMをインターネット上で動画配信する際に真っ先に考えなければならないこと。それは、ストリーミング配信とプログレッシブダウンロード配信のどちらの配信方式を採用するかということだ。この両方の配信方式の違いについてよく理解することなく、どちらかの配信方式を採用して動画を配信してしまうと、場合によっては、こんなはずじゃなかったのにということになりかねない。よって、事前に理解しておくことが必要になる。とは言ってみても、2つの配信方式の違いなど理解することなく動画配信サービスを利用している企業がほとんどであり、実際は至るところで問題が発生している。

たとえばYouTube。YouTubeはどちらの配信方式を採用しているかご存知だろうか。YouTubeは、プログレッシブダウンロード配信方式で動画を配信している。ストリーミング配信方式だと勘違いしている方が結構多いが、YouTubeはプログレッシブダウンロード配信方式で配信しているということを、まずは良く覚えておいていてほしい。

では、そもそもなぜこんな間違いが起きてしまうのだろうか。理由は、一見しただけでは両者の違いがわかりにくいからである。動画を再生するユーザーの立場からすれば、どちらもFlash Playerで再生できることから、違いがわかりにくくなっているのである。その結果、ストリーミング配信とプログレッシブダウンロード配信がごちゃ混ぜになってしまっているのだ。よって、今回は両者の違いを明確にしたいと思っている。

尚、技術的な違いについては、ウェブ上に膨大な情報があるのでそちらを参考にしてほしい。ここでは、あくまでも動画を配信する当事者として知っておいた方が良いと思われる違いについて触れることにする。

■Webサーバで十分なプログレッシブと専用サーバが必要なストリーミング

まず、配信に必要なサーバの環境が全く異なる。プログレッシブダウンロード配信方式はWebサーバがあれば十分だ。つまり、HTTPプロトコルを使って配信するのである。Webサーバだけで配信ができるということは、余計な投資が必要ないのでコスト的にもかなり大きなメリットとなる。また、Webサーバだけで配信できるということは、サーバなどの運用・監視などの負担も軽くなる。

一方、ストリーミング配信方式の方は、別途ストリーミング配信サーバが必要になる。プロトコルも、HTTPではなくRTMPプロトコルなどを使って配信することになる。別途ストリーミング配信サーバが必要になるため、コスト的な負担はプログレッシブダウンロード配信方式よりも大きくなるし、サーバなどの運用・監視に必要な管理稼働も増大してしまう。

つまり、動画配信事業者の立場からすれば、プログレッシブダウンロード配信方式の方が実現が簡単だしコストもかからないわけで、正直言ってサービスを提供しやすいということになる。YouTubeなどの動画投稿サイトのほとんどが、プログレッシブダウンロード配信方式を採用しているのもうなずけるわけだ。

■セキュリティの脆弱なプログレッシブと強固なストリーミング

次に大きく違うのがセキュリティ面である。プログレッシブダウンロード配信方式は、動画を再生したユーザー側のキャッシュメモリ上に、再生した動画のファイルが自動的に保存されてしまう。よって、先日の尖閣諸島問題のように、動画ファイルをアップロードした本人がファイルを削除しても、その動画を再生したユーザーのキャッシュメモリ上にファイルが保存されてしまっているため、簡単に動画ファイルがコピーされてしまうという問題が発生してしまう。

一方、ストリーミング配信方式は、動画を再生してもユーザーのキャッシュメモリ上に動画ファイルが保存されてしまうというようなことはない。よって、動画ファイルが勝手にコピーされて流出してしまうというリスクは少なくなる。セキュリティをより強固にしたいのであれば、ストリーミング配信方式の方がお薦めである。

■コストとセキュリティのどちらを優先したいか

テレビCMは、タレントなどの著名人を起用しているものも珍しくない。事務所との契約で、テレビCMのYouTubeなどへの流出を厳しく禁止されている場合もあるだろう。そういった場合は、セキュリティの強固なストリーミング配信方式を採用するべきだ。ただし、ストリーミング配信方式は一定の再生回数(正確には配信流量という指標値で測定される)を超えるとプラスで課金されてしまうことになる。コストをあまり気にすることなく、セキュリティ面も大して重要でなければ、プログレッシブダウンロード配信方式の方がいいだろう。

配信しようとしているテレビCMのコストとセキュリティのどちらを優先したいのか、それを明確にしておくことが必要だ。

itoman

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伊藤 靖

伊藤 靖

株式会社リトルウイングス代表取締役。
青森県弘前市出身。大田区蒲田在住。
企業のメディア戦略、コンテンツ戦略、モバイル戦略の構築と実行をサポートするサービスを提供しています。

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