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「起業する時って、いくら自己資金を用意すれば良いのでしょうか?」。最近、これから起業しようと考えている人からよく受ける質問である。ほんと、いくら用意すれば良いのだろうか。そりゃあ、多ければ多いに越したことはないのだろうが、何千万円も用意できる起業家なんてそうそういるもんじゃない。

私の場合、去年の7月に自己資金300万円でビムーブ株式会社を設立した。48歳にもなって恥ずかしい話だが、この300万円を用意するのに本当に苦労した。結局親に100万円出してもらい、妻に無理を言って家計から200万円出してもらったのだが、7月末時点の伊藤家の預金残高は限りなくゼロに近かったのを今でも覚えている。体中を戦慄が走った。

ところが、会社設立の時よりもさらに苦労したのが、ベンチャー・キャピタルから出資を受け入れる段階になった時だ。良い話じゃないか?そう、良い話なのだが、大きな問題があった。というのも、資本金300万円では、いくらベンチャー・キャピタルが1株5万円を10倍、20倍で評価してくれたとしても、過半数を持つことが難しくなる。

そして、ここで私の無知ぶりが露呈されてしまうのだが、正直言うと簡単に700万円くらい調達できると思っていたのである。どうやって?国民金融公庫から700万円を借り入れして、それを資本金に充てようと考えていたのだ。信じられないかもしれないが、本当のこと。

ところが、よく調べてみたら、国民金融公庫から借入れしたお金は事業資金としては使えるが、資本金には充てられないということがわかった。さらにもっと慌てたのは、国民金融公庫は最初から700万円も融資してくれないということ。参考のために、国民金融公庫は最初から満額回答はしてくれない(ほとんどの場合は)。

結局、最終的にビムーブの経営陣で400万円(合計700万円)を用意し、2月末にベンチャー・キャピタルから無事出資を受け入れることができたのだが、この3カ月くらいは本当に落ち着かない毎日だった。それだけに、実際にベンチャー・キャピタルからの出資が決まった時の安堵感といったらなかった。

今日の結論。起業する際いくら自己資金を用意すれば良いのか。これはあくまでも私の個人的な考えだが、経営陣で1千万円用意できれば、かなりその後の展開が楽になると思う。だから、これから起業を考えている人は、経営陣(家族や友人を含めてもOK)で1千万円用意することを目指したらどうだろう。

もちろん、1千万円なんてそうそう簡単に用意できる金額じゃない。私も700万円しか用意できなかったのだから。その場合、最低でも500万円は用意したいところだ。エンジェルなどの力を借りることができれば、500万円あれば十分何とかなる。それと、ベンチャー・キャピタルの多くは、経営陣で500万円位用意できないようであれば、そもそも本気さが足りないと見る傾向が強い。

自己資本を300万円以上用意するのは無理だと言った途端、いくつかのベンチャー・キャピタルの担当者から、本気で起業する気があるのかと問い質されたことがあった。そういう意味でも、自己資金500万円は起業するための試金石なのかもしれない。

最後に、今回ほどちゃんとお金を貯めておくんだったと後悔したことはない。お金がある時は起業なんて考えもしなかったくせに、ない時に急に起業したくなる。そんなものなのだろうか。

itoman

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伊藤 靖

伊藤 靖

株式会社リトルウイングス代表取締役。
青森県弘前市出身。大田区蒲田在住。
企業のメディア戦略、コンテンツ戦略、モバイル戦略の構築と実行をサポートするサービスを提供しています。

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