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米原万里さんは、私が好きなエッセイストのひとりだった。ロシア語の通訳としては、第一級で、ゴルバチョフやエリツィンなどが訪日したときの通訳などをしていた。2006年、ガンで亡くなるまで、大胆かつ繊細なエッセーを書き続けていた人だ。

米原万里さんのエッセー「ガセネッタ & シモネッタ」は、通訳や言葉、言語に関するエッセーがふんだんに入ったエッセー集で、対談なども載っている。ジェームズ・ジョイスの翻訳で有名な、柳瀬尚紀氏との対談「翻訳と通訳と辞書」で、実に示唆のある事を米原万里さんが語っている。柳瀬氏が、

だけど、文学はほんとに読まれなくなっちまったんでしょうね、現実に。

といったのを受けて、

ある意味では、資本主義の宿命かもしれない。やはり資本主義社会においては、いちばん優秀な学生は会社の営業部へ配属されるんですね。ものをたくさん売る人が偉いんです。文学でも、いちばん売れる作家が偉い。それで編集者も、わかりやすく、やさしく書けっていうんですよ。そうすればたくさん売れるからです。市場原理というものはそういうものだから、これはしょうがないんですね。だけど、文学というものはある意味で非市場的な要素がかなりあって、市場原理にばかりとらわれていると駄目になっちゃうと思いますけど、どうなんでしょうね。

米原万里さんは、日本共産党常任幹部会委員(当時)・衆議院議員米原昶(よねはら いたる)の子だ。この父親が日本共産党員として、チェコに赴任したため、ソ連の国営学校に行きロシア語を覚えた。ご自身も日本共産党に入党されているので、少なくとも資本主義にどっぷりと浸かった人ではない。ただし、万里さんの訃報に際し、共産党の機関新聞赤旗では党員歴に触れていないらしい。米原万里さんのエッセーを見ると、共産主義だの、資本主義だのをすでに超越されているように思える。

万里さんは、資本主義においては「いちばんお金を稼ぐ人が、一番偉い」と言い切っている。「ルールに従って稼ぐのであれば、それは正しい」と言うこともできる。すでに噂も消え果てた堀江さんなどは、「儲け方入門~100億稼ぐ思考法」などという本を書いた。時代の寵児と讃えられたが、ルールを破ったとたん、マスコミからぼこぼこにされた。

マスコミは、こういったときに暴走しているように見えるが、マスコミのお客さんは大衆であり、マスコミは大衆の望むことしかしない。マスコミの横暴に我々は眉をしかめるが、実はマスコミが大暴れすることを、我々は望んでいるのだろう。

そうすると、「いちばんお金を稼ぐ人が、一番偉い」とは、我々は実は思っていないのだ、と思う。それは、良いことだ、と私は思う。もっと素直に、「いちばんお金を稼ぐ人が、一番偉いんじゃない」と言いたいね。

とおる

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現在サン・マイクロシステムズにて、様々なミドルウェア・ソフトウェアの販売推進・ビジネス開発を担当しています。旅行、食べ歩き、読書が趣味。

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