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30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

IT企業がスマートグリッドに参入‐Oracle

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以前、ITは新しい技術を開発するだけではもう生き残れないと書いた。そしてスマートグリッドにはICTITと通信)を応用するチャンスがあるとも書いた。震災以前の日本ではスマートグリッドの位置づけは特殊なもので、米国のスマートグリッド技術をそのまま適用するわけにいかなかった。だが震災で東日本の電力不足が起こり、その対策としてスマートグリッドの活用が現実味を帯びてきている。そこで今回は、米国の大手IT企業によるスマートグリッドへの取り組みなどについて述べてみよう。

スマートグリッドは、多種・多数のデータを実時間で収集・解析して有益な情報に変換し、その情報に応じて種々の機器やシステムを制御することで円滑に運営される。そのため、ITと通信の技術(ICT)の応用が必須だ。以前述べたように、最近データの発生源が増加している。普通のコンピュータ環境でもデータは増加する傾向にあるが、モバイル分野と人間を介さないマシン間(M2M)の分野では通信量とデータ量が爆発的に増加しており、今後更に増加すると予想されている。そのM2Mの分野でスマートグリッドは通信量とデータ量で断トツだ。

最近スマートグリッドのコンファレンスで、Oracleのスマートグリッドへの取り組みの話を聞いてきた。Oracleと言えばSAPと並びソフトに特化した大手で、最近Sunを買収してハードも手に入れたIT企業の中のIT企業と言える。そのOracleがスマートグリッドに参入している。スマートメータから得られたデータの解析と管理、電力会社のバックオフィスでのアプリケーションの設置と管理、そしてLANの分野(Sunの買収による)でスマートグリッドに参入していると市場調査会社の報告にあった。

Oracleのプレゼンテーションで特に面白いと思ったスライドが下の写真。これは大手電力会社が取り扱うデータ量の変化を示したもので、Y軸がデータ量(単位はテラバイト-TB)、X軸が時間の推移だ。スマートグリッドの色々なアプリケーションやサービスが時間と共に展開されていく様子を示している。現在100TB程度のものが最終的には800TBになると予想されている。

Oraclesgtb

図中の矢印で示された各ポイントは以下のとおり。それぞれの機能の詳細はここでは述べない。というのは、それぞれがそれひとつで独立したブログになる内容なのだ。

· 自動化の配電網への伸張(配電網レベルでの監視・管理の自動化)

· 作業員管理システムの設置(作業員の管理の自動化)

· 変電所の自動化(変電所内の機器・装置の監視・管理の自動化)

· モバイル データの実装(モバイル機器によるデータのオンライン化)

· リモート ターミナル ユニットのアップグレード(リモートで監視・管理するシステムの機能アップ)

· 地理情報システムの設置(新しい装置の位置情報が自動的にシステム全体に反映される)

· 停電管理システムの設置(停電を自動で検知し、可能な限り自動で修復する)200TB地点に到達

· 配電網管理システムの運用開始

· 自動メータ インフラの展開(スマートメータをサポートするインフラの設置)

· 通信用設定可能サーモスタットの実装(通信機能を通じてコントロールできるサーモスタットの設置)700TB地点到達

· スマートメータ接続の新しい家庭用機器の利用(スマートメータと交信可能な機器や装置の家庭内設置)800TB到達

ICTは機能やサービスの自動化に大きな役割を果たし、自動化により生成される莫大な量のデータを管理・処理するにはICTが不可欠だ。例えば、配電網内の機器や装置の故障で起こる停電について考えてみよう。機器や装置を個別に監視して正常値から逸脱した際はそれが故障か、あるいは故障につながるトラブルかを判断し、将来故障する確率を分や時間単位で算定できるようになれば、その装置にかかる負荷をコントロールして故障を防ぐことができるようになるかもしれない。数多い機器や装置を実時間で監視してその健全性を判定することはICTを駆使しなければ到底不可能だ。身近なところで、家庭内でも、洗濯機、冷蔵庫、調理器具から、TVPC、プリンタ、そして冷暖房や照明機器に至るまでの多種多様な機器も、電力消費量を測定しスマートメータと通信可能になってゆく。その通信は人間を介さないM2Mで、ここでもICTの技術が使用される。

将来出てくると予測される機能やサービスに、電気自動車の展開や再生可能エネルギーによる発電に伴う電力の管理がある。電気自動車の充電には家庭一軒で消費されるのと同程度の電力が必要だ。このため、個人個人が好き勝手に充電を始めると電力需要の急激な増加が起こり供給が追いつかなくなる可能性がある。電力需要と供給のバランスを保ちながら充電できるようにするための制御機能が必要だ。いつ、どこで起きるのか分からない充電による需要の増加を監視し、全体の需要と供給の状況に応じて最適な充電スケジュールを算定し、個々の充電に対し許可するのか延期するよう求めるのか決定しなければならない。更に、高い料金を払えば、先に充電しようとしていた人よりも優先して充電を行なうことができるようにするサービスだって開発できる。それもこれもICT技術があってこそだ。

また発電では一定の電圧や周波数を保つ必要があるが、太陽光や風力による発電ではそれが難しい。発電量が多くなりすぎた際にそのまま流すと送配電網の許容量を超えて電力網全体が不安定になってしまう。秒単位で変化する発電量や送配電網のその時点での許容量を把握して蓄電器への充電や発電の一旦停止などの判断をする。ここでもICTの技術が頼りだ。

ICT屋さん、皆さんの将来は明るい。

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