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30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

EVの時代はいつ来るのか

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最近は少し軸足を変えて、スマートグリッドを追いかけている。スマートグリッドは関連する分野が広い。電気自動車(EV)もそのひとつ。スマートグリッド関連のコンファレンスやミーティングに行くと必ずEVについての話が出る。そこで、現在のEV技術の何がネックになっているのか、筆者は決して専門家ではないが、米国から見た視点でまとめてみる。これを読めば、何も知らない人を相手に、いっぱしのEV専門家のような顔ができるかもしれない。

EVの問題点として次の6項目が主要なものとして挙げられる。

1. バッテリーの容量

2. バッテリーの充電時間

3. 充電ステーションの設置

4. 標準

5. 同時期充電による新たなピーク時の発生

6. 石油や石炭を燃やして発電した電気を使用して、本当にエコなのか

その他にもあるだろうが、相手が素人としての話だからこのくらいでよかろう。

まずバッテリーの容量だが、研究開発のおかげで増加し続けているので、どのデータを引けばよいか迷うところだが、一旦フルチャージすれば100Km程度の走行が可能なようだ。シリコンバレー中心地のサンホゼ市からサンフランシスコ市までは片道6070Kmあるので、これでは往復はできない。この2つの街を通勤で往復する人は結構いる。現在のEVでは、その人たちは途中で充電しないと家に帰り着けない。

では2番目の充電時間はどうだろうか。家に帰って普通の100V(日本)や110V(米国の標準電圧)のコンセントに繋いだ場合、3時間程度必要とされている。家でならともかく、外での充電となるとそれでは時間がかかりすぎる。ヨーロッパは一般的に220Vのようだが、実は米国でも220Vは家庭まで来ていて、乾燥機は220Vで作動する。これだと1時間半程度だそうだ。電圧を更に上げて480Vにすると45分くらいで済むという。だがこれではとてもとても実用的とは言えない。しかも普通の家庭に480Vはない。

1番目や2番目の問題と関連して、充電ステーションの設置も大きな問題だ。バッテリー容量の進歩にもよるが、長距離走行が難しいということは充電ステーションの数が相当必要になるということだ。そしてそのステーションをどこに設置するかということも、また悩ましい。

上で述べたように、480Vを供給できるステーションを設置したとしても、充電に45分待てる人は稀だろう。1番から3番までの問題点が示しているのは、バッテリー技術の重要性で、現在のバッテリー技術ではEVを発展させるのは難しいと言っても過言ではない。最近のスマートグリッドのコンファレンスで、Parc研究所の人も、技術面での一番の問題はバッテリーだと指摘していた。

4番目の標準の問題はEVだけに限らない。そのためNIST国立標準技術研究所)はスマートグリッドに関する莫大な数の技術の標準化に取り組んでいる。NISTは民間の会社や研究機関から参加者を募集し、22の分科会(送電、配電、EV、通信など)を設置してそれぞれの分野で標準化の作業を行っている。筆者もそのうちの研究開発のグループに属している。EVに関する標準で言えば、480Vによる充電はTesla社が主に押している技術だが、標準となっている訳ではない。日本では、自動車会社や電力会社を中心とするチャデモ協議会が急速充電の技術を研究開発しており、この技術を世界標準にしようとしている。

一日の内で一番電力需要が高いのは、一般に午後の早い時間だ。しかし、仕事から帰った人々が、例えば8時に、一斉にEVを電源に繋いだら、新たなピークが生じる。最悪の場合は電力が欠乏して停電を起こすかもしれない。この5番目のピーク時の問題については、ITの出番がある。地域ごとに供給可能な電力量をリアルタイムで把握し、供給可能量に見合うように電力を振り分けて、待機中のEVを順次充電して行けばよい。これは言うのは簡単だが、その技術を開発するのは結構難しいと思う。電力の供給量は時間と共に変動する。そしてどの地域で誰がいつEVのコードを電源に接続するのか、予め分かるわけではない。需要も供給も時間と共にダイナミックに変動する。それを踏まえながら、すべてのEVの充電を、できるだけ公平に停電を起こさないように、状況に応じてダイナミックに行えるようにしなければならない。困難ではあるが、研究のテーマとしては面白そうだ。

さて6番目の問題だが、EVそのものは排気ガスを出さないのでエコだと言える。しかしEVは電気で走る。その電気をどうやって生成するかというと、大部分は石炭・原油・天然ガスなどを燃やすことによる。そう考えると、結局EVを運転することは化石燃料を燃やすことを助長しており、エコとは言えないように見える。以前こう発言したら、日本の自動車メーカーで長年EVを開発している人に反論された。EVでは電気エネルギーをモーターの回転に変換するときの効率が良い。ものの本によると最高90%にも達するとか。それに比べるとガソリン車はその効率が非常に悪い。最高でも50%とか。そうすると、同じ化石燃料を燃やして動力源にしていても、EVの方がよりエコと言えるというものだ。2つの選択肢のうち悪くない方、ということだろう。

どうだろう、これなら相手が素人なら偉そうにEVの話を30分程できるだろうか。筆者にとっての一番の問題は、車を買い替える時期に来ていてさて何を買うべきかということで、頭の痛いことである。

Comment(5)

コメント

himat

化石燃料から発電して、それを充電し、さらにモーターに伝えた場合の二重三重に発生する変換ロスはどこへ行くのでしょう?50%程度のロスでは収まらないはず、と屁理屈を捏ねたら、どう反論されるか聞いてみたいものです。
発電は化石燃料のみではない、循環可能な天然物や太陽光、ゴミ焼却からも発電できるのだから、化石燃料の使用自体を減らせるのだと熱弁されたのなら揚げ足取るのは難しくなるのですが。

今月からオルタナブロガー入りしたベネッセの秋山と申します。

6番の問題は、himatさんの言うとおり、太陽光発電のような再生可能エネルギーの普及と合わせてEVが普及すれば解決する問題ですね。電気エネルギーの発電からそれを動力に変えるまでCO2などのGHGを排出しないことが実現すれば、ゼロエミッションどころかマイナスエミッションが実現できます。

また、火力発電は確かにエネルギー効率が悪い(40%くらい?)ので、エネルギー効率だけの話で言えば、ガソリン車との比較で勝てるかどうか難しいところですが、レシプロ車はピストンで回転運動に変えられた力をギアやシャフトで各車輪に伝えるのでその損失も大きいです。その点、弊社のグループ会社のSIM-DRIVEの開発しているインホイールモーターを採用したEVカーは各車輪にモーターを付け、それをギアではなく、インバーターコントローラーで制御するのでそのあたりの損失が防げてエネルギー効率がさらにあがるそうです。

1~5の問題も、バッテリーの標準化やリースやレンタルによって、
たとえば以下の解決策が考えられそうですね。

1. バッテリーの容量
  ⇒エネルギー効率の効率化により、同容量で長距離走れるようにする。

2. バッテリーの充電時間
  ⇒リースやレンタルしたバッテリーをスタンドでまるごと
   充電済みのものと交換できるようにする。
   バッテリーには充電した回数などを記憶できるように
   して、リースアップ期間や費用を管理する。

3. 充電ステーションの設置
  ⇒2が実現できれば、既存のガソリンスタンドでもできますし、
   自動交換システムができれば、パーキングやコンビニの
   駐車場でもOKです。

4. 標準
  ⇒2、3を実現するためにはバッテリーの規格、形状の
   標準化は必須ですね。まずは特区みたいなテストベッドでの
   FSが必要でしょうか。

5. 同時期充電による新たなピーク時の発生
  ⇒2~4が実現すれば、交換したバッテリーを夜間などの、
   余剰電力で充電しておくなどが考えられますね。

昨年、このあたりは結構研究したので、つい長いコメントに
なってしまいました。すみません。

ご意見有難うございます。まとめて、頂いたコメントにコメントします。急遽日本に出てきたので、まとまった時間が取れていません。英語のを日本語にしますが、バッテリーの話しとBetter Placeのビデオです。http://bit.ly/cEieiM とhttp://bit.ly/bW7Y1T(3分後以降日本で行っている実験のビデオ)

バッテリの問題はここ10年は解決無理の様です。急速充電はバッテリーを痛めるようです。バッテリーはしばらくはリチウム系統で行くようですが、20年で30%の容量増し程度の進歩の様です。

充電ステーションですが、better placeのモデルはイスラエルや世界の一部では可能性がありますが、そのためにはその形式が標準になる必要があり、これが一般的に広がるということはあまり可能性がないと言われています。

バッテリに標準は国家戦略もからみ、そう簡単には決まらないと思います。各国ばらばらになると思います。それが統合されるのはかなり時間が掛かります。

最後のポイントも電気自動車がきれいに平均的に増えるのではないので、そう簡単にはいかないと思います。

日本が電気自動車でリーダーの立場を得るためには、さっさと動くことが必要でしょう。しかし、アメリカがそれを黙ってみてはいません。国家戦略が掛かっている場面では正義だけでは勝てません。これは日本の一番不得意なところ。。。。。

ここ10年程度は細々と電気自動車の発展はあると思いますが、局地的な動きを除き大きな動きはありません。アメリカは50%革新で、50%は保守です。日本ではありかも知れませんが、アメリカやヨーロッパは日本の方式を意図的に外してくると思います。それも織り込みで交渉ができるか。。。。。あまり期待してません。

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