働きがいがないと労働力を搾取されているように感じる
坂本さんが「搾取」についてエントリに書いていらっしゃいます。確かにネット上の発言等を見るにつけ、「搾取」という実感が広まりつつあるような印象を受けることがあります。
『「会社から搾取される」という考え方が何故生まれるのか:坂本史郎の【朝メール】より:ITmedia オルタナティブ・ブログ』
http://blogs.itmedia.co.jp/shiro/2012/06/post-2b3e.html
私はこの理由のひとつに、会社が「消費者からの搾取」をしているように見受けられ、それが社員の不信感を煽っているのではないかというように考えています。それを通じて会社への信頼を失い、自身もまた労働者として搾取されているように感じられるのではないでしょうか?
例えば、全体から見ればごく一部の事例ではありますが、携帯電話会社は加入者数の増減や一人あたりの収入を重視するあまりに極端なキャンペーンを企画し、MNPユーザが優遇され、長期のユーザが軽視され「養分」とまで呼ばれてしまうような状況があります。
私自身の経験としては、あるガソリンスタンドでアルバイトをしているときに「水抜き」を売るよう命ぜられたことがありました。製品の説明書きを読めば、ガソリンタンクに残った水分はサビを誘発するので、アルコールを添加することで、水がガソリン中に取り込まれ、燃えながらタンクから消え去る、というようなことが書いてあります。3ヶ月に1回とか6ヶ月に1回という推奨の利用頻度がありました。それ自体に疑問を呈することはしないでおきましょう。しかしながら先輩バイトを見ていると売り込み方が怪しく、敢えて中年の女性を中心に声をかけて「エンジン音がちょっと怪しいですね。水抜きを入れたほうが良いですよ」とか、「前いつ入れました?覚えてない?私の感覚だと1年は入れてないですねー」とか、特に不安を煽るような売り方をしていました。で、先輩よりも売上本数が少ないと、店長(正社員)からは真似してでももっと売れというプレッシャーをかけられるわけです。
あまり強く意見を言えないアルバイトにとって、「成功パターン」だから真似しろというように胡散臭い売り込み方を強いられると、なかなか拒否が難しいものです。それは精神的な消化不良を起こし、消費者から搾取することの片棒を担いでいるような気持ちになり、精神的な傷を負います。知識のない人を騙すようなビジネスをしろと言われた場合、個人の工夫や努力でそれをひっくり返してやりがいを見つけることは難しいものです。お金儲けにやりがいを見出すか、自分を押し殺すくらいしかありません。
バイトであればいろいろと次を探すこともできますが、特に不況期の正社員職においてはなかなか次を探すことも難しく、自分の仕事が消費者からの搾取であるように感じて使命感を持てないでいるような人もいるのではないでしょうか。そのような人は自分の気持ちの整理をつけるために、自分も労働力を搾取される被害者であって、主体的に「消費者からの搾取」の片棒をかついでいるわけではないという方向にいってしまってもしかたないように思います。いわゆる情弱ビジネスだとこの意味が強まりそうです。
胸を張って自慢ができるような仕事をしていれば多少は長時間労働であれ、多少は低賃金であれ、我慢はしやすいものです。が、そこが根本のところで「胡散臭い」となるともう逃げ場がなくなってしまいます。
「労働者として搾取されている」という実感が増えている裏側には、なぜそのような仕掛けになっているのかという説明が対外的に難しいようなビジネスが増えてきている現れではないかと、そのように思いました。