自宅開発環境のライセンスがグレーになっていませんか
先回のエントリで「違法コピーが悪い理由、コンプライアンスが大切な理由」ということを書きました。
一旦は今日エントリしたような内容を書いたのですが、なんとなく結論がまとまらなかったために本旨をすげかえて投稿をしました。結果、タイトルも内容もいまいちになってしまいました。当初書こうと思っていた内容について、まとまりはないままですが投稿します。
ソフトウェアのライセンスでは「開発者ライセンス」と言われるものがあります。開発者ライセンスにもいろいろとありますが、開発者一人が1ライセンスを契約すれば、その開発者は自分が管理するPCやサーバに開発用のソフトウェアを何台でもインストールできるというものがあります。または機能を限定する代わりに無償で入手・利用できるエディションが作成されている場合もあります。
こういった制度を利用すれば会社では会社のPCで受託開発を行い、家でも自分のPCに環境を作って個人的に勉強をするということができます。
(もちろん私の職場の話ではありませんが)開発者ライセンスを契約をしていない人がメディアを自宅に持ち帰って開発環境を構築したり、試験勉強をしたりという話を聞いたことがあります。また、そもそも開発者ライセンスという制度がないソフトウェア(しかもサーバライセンスで超高額な)でライセンス違反のインストールを行ったり、会社にも無断でメディアを持ち帰ったり、という事例もあるのではないかと思います。
本来ならば販売されたであろう開発者ライセンスが売れなかったという点ではそのソフトウェアの販売元には損失が生じるでしょうが、その一方でOSやDBといった分野では開発者を育てなくては製品そのものが先細りしてしまいます。ですので開発者にとって受け入れやすいライセンス体系を作り、開発者を育ててエンドユーザの利益を最大化することが全体の幸せにつながります。
その一方でエンドユーザ向けのライセンス体系は固まっていても開発環境のライセンス体系が曖昧な(担当営業の裁量で決まるような)ソフトウェアもあったりします。市場の小さな分野ですと仕方が無いのかもしれません。ここでライセンス制度を杓子定規に解釈するか、細かいことには目をつぶってしまうかという受け止め方に違いが生じます。
- きちんとした人は「ライセンス○万円か。それだけあったら本が○冊買えるなぁ。しばらく見送るか。代わりにオープンソースで似たような環境を作っておくか。」と考える。
- 適当に済ませる人は「会社からメディアを借りて家に開発環境を立てて勉強をしよう。もっとすごい技術を身につけてお客さんに喜んでもらおう。」と考える。
そもそも家で技術の勉強をするな、時間的なダンピング行為だ、とする意見を耳にすることもありますがそれはさておき、会社員でもフリーでもIT技術者には家に開発環境を立てるという人は珍しくないと思われます。開発者にとって負担の大きいライセンス体系である場合、かつ開発メンバーの誰かがグレー(またはクロ)な状態で家に開発環境を立てて自分を磨いているとなると、自分もそうせざるを得ないような感じになってしまうかもしれません。スキルの差も開きますし、それが資格の形で結実してくると、自分もライセンス違反をしないと損なような雰囲気が生まれるということも考えられます。
もちろん会社の開発環境でライセンス違反を犯すことはコンプライアンス上の大きな問題になりますし、昨今の情勢では比較的厳しく監査しているところも少なくないのではないかと思います。その一方で会社の監査も、そしてライセンサーも、目の届かない個人宅ではライセンスがグレーな開発環境が残りやすいのではないでしょうか。開発ライセンスのボリュームはエンドユーザ向けの販売額と比べれば一般的に少ないという事情もあります。開発者がスキルアップしてくれることは良いことだ、という考え方は技術者を雇用する企業にも、ライセンサーにもあることでしょう。技術者自身もスキルアップしたいと考える人が多いはずです。かといって会社に「自分の家用にライセンスを1つ追加購入していいですか?」と聞いて承認を得ることはなかなか難しそうです。
開発者ライセンスや機能を限定した無償版の配布などのやり方を見ていると、ライセンス制度を守りつつ、エンドユーザの利益も確保して、開発者もやりやすいという非常に優れたモデルであるように感じます。こうしたモデルを作るためには、「自分たちは家でも開発がしたいんです。」「この値段じゃ個人の自腹で開発環境なんて買えません。」というような要望をライセンサーに提示することが重要なのではないだろうか、そのように思います。
もし自宅のPCにグレーなライセンスの開発環境があったら、開発者ライセンスや無償版のリリース有無などを調べてみるというのはいかがでしょうか。