名刺交換のフリをした電子メールアドレスの収集
日曜の日経新聞の朝刊コラムに道端で名刺交換を迫られた、ということが書かれていました。身の回りの何とおりかのルートであれは危ないということを聞いており応じたことはないのですが、日経の朝刊コラムでも触れただけで警鐘なし、ということに少し驚きました。関連エントリはこちら。
『路上で「名刺交換してください」と、せがんでくる人の正体:イーコマースの兵法書:ITmedia オルタナティブ・ブログ』
http://blogs.itmedia.co.jp/rfid/2010/02/post-1fc7.html
なおこれは特定電子メールの送信の適正化等に関する法律、通称は特定電子メール法や迷惑メール防止法と言われますが、この第3条「特定電子メールの送信の制限」にはこのように書かれています。
送信者は、次に掲げる者以外の者に対し、特定電子メールの送信をしてはならない。
これにより法改正以前には電子メールで営業攻勢に出ていたいくつかの業者には大打撃が出たわけですが、それに対向する手段として「名刺交換」が生み出されました。名刺を渡したことをもって「書面により自己の電子メールアドレスを通した者」とみなされてしまうというからくりのようです。
特定電子メール法のパンフレットはこちらから(PDF)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/m_mail.html
「新人研修の一環で」という文言は曖昧ですので、このパンフレットと見比べる限りは名刺交換により「取引関係」が始まった、なんていう解釈も可能かもしれません。となれば取引は会社と会社の話とも受け取れますので別ルートで入手していた他の人の電子メールにも堂々とメールを送れる、なんていう暴挙に出る会社もあるかもしれませんので要注意ですね。名簿が流出している場合、たった一人でも電子メールの生成ルール(姓-名の頭文字@~など)が把握されてしまえば後は予想することもできるという点も要注意です。
さてこういった焼畑農業的な販路開拓は世の中で広く行われているわけですが、畑を焼いた後を任される人はつらいものです。自分も学生時代にある業種のアルバイトを募集するバイトというのをやったことがありまして、先輩が何も考えずに強引な営業活動をしまくった結果、ある場所では出禁、また声をかけた人からは蔑まれた目で見られるなどの大変な目に合いました。
それがきっかけで私は最終的にそのバイトを短期間で辞めることになるわけですが、焼畑を行った張本人は自分含め後輩達に向かって「自分たちのときは1日でxxx人はゲットした」などと自慢話をするというあまりよくない印象があります。これと同様に、場当たり的に電子メールの宛先を調達する手法はおそらく1年や2年ほどで完全に枯れることでしょう。特に有望な商談先であるはずの大企業ほどこういった対抗策は素早いですので、社内文書で注意喚起が回っている可能性は高いと思われます。
一方で企業としてはオーソドックスな飛び込み営業をシャットアウトすることは非効率にもつながります。コピー機のレンタルや派遣では出入の業者を絞ることで価格競争を誘発できず、いつのまにか業者同士のカルテルを招いていたという話を聞くことがあります。個人レベルでも新聞を半年ずつ切り替えていくと野球のチケットや無料購読などで得をすることがあるという話もあります。今回取り上げたような「迷惑メール送信」を目的とした名刺交換は長続きしないと思いますが、飛び込み営業はまだまだ長く続くことでしょう。
オルタナブロガーの小池さんがこのように書かれていました。
・営業が自分で見込み顧客を探す大変さ、効率の悪さ を体感する
・アポイントや事前のヒアリングや提案イメージが無い中での法人営業のダメさ を体感する
・マーケティングからロケートされるリードがどれほど大事か を理解する『最近よく新橋とかで「名刺下さい」と言われる件について:小池智和の「B2Bマーケティング力」:ITmedia オルタナティブ・ブログ』
http://blogs.itmedia.co.jp/bbkoike/2010/04/post-55f5.html
特に「提案イメージが無い中での法人営業のダメさ」についてはとても納得させられます。飛び込み営業をするにしてもネットなどで飛び込み先のことについて最低限を理解した上で商談に行けば商談相手に無駄な時間を使わせません。その一方で話を聞く側としては飛び込まれた上に「それくらい調べてこいよ!」というところまでヒアリングされると腹が立つでしょう。
それを新人さんに認識させるために一時的に飛び込みをさせるというのはきっと良い経験になるのではないか、そう思いました。まっとうな仕事をしている新人さんにおかれましてはガンガン飛び込んで99.9%くらい無駄弾を飛ばすよう、がんばってください。