オルタナティブ・ブログ > 一般システムエンジニアの刻苦勉励 >

身の周りのおもしろおかしい事を探す日々。ITを中心に。

北朝鮮の独自OS「Red Star」

»

北朝鮮がLinuxをベースとした独自OSを開発したとのニュースがありました。

『せかにゅ:「iPadは3月26日に発売」のうわさ - ITmedia News』 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1003/04/news029.html

Yahoo!のトップニュースで知った方が多いのではないかと思いますが、上のリンクにある通り3月にロシア人留学生のブログ(下のリンク)でその画面などの詳細が明らかになっていました。この度はそれが韓国の政府系シンクタンク科学技術政策研究院(STEPI)のレポートにも掲載されたとのことでいよいよ信ぴょう性が高まったようです。

『Говорит и показывает Пхеньян - OS "Red Star" - линуксоиды всех стран, соединяйтесь!』 http://ashen-rus.livejournal.com/4300.html#cutid1

(↑起動画面など画像がたくさんあります)

さてこの件をどう見たらよいでしょうか。

(1)ソフトウェア開発

北朝鮮は世界コンピュータ将棋選手権でも好成績を残しており、OS開発(OSカスタム?)と合わせて判断するとそれなりのソフトウェア開発能力があるんじゃないかというような気がします。ちなみに将棋選手権への参加マシンは以下のリンクにある通り、intel製のCore i7 965(3.2GHz)を搭載していたそうです。どこのお店で買ったんでしょうね。

『第19回世界コンピュータ将棋選手権 参加チーム』
http://www.computer-shogi.org/wcsc19/team.html

(2)著作権

もしLinuxをベースとしたOSであるとすると、GPLとの関係がどうなるとかそういった問題が付随するかと思われます。北朝鮮がカスタムをしたことがOKかどうか、そしてもしRed Starが正式公開されたり、不正コピーが出回った場合に日本からそれをダウンロードして使用して良いのかどうか。

Wikipediaの「朝鮮民主主義人民共和国」の項を見ると著作権に関して以下のような記述があります。

朝鮮民主主義人民共和国はベルヌ条約に加盟しているものの、日本政府は国家としてみなしていないため、事実上朝鮮民主主義人民共和国の著作物(主にテレビ画像)は日本国内で「使い放題」の状態になっているのが現実であった。

ベルヌ条約の加盟国(Contracting Parties  > Berne Convention (Total Contracting Parties : 164)   ) ← Republic of Koreaとして下のほうに記載あり
http://www.wipo.int/treaties/en/ShowResults.jsp?lang=en&treaty_id=15

そもそもGPLと日本法の関係ですら正しく認識できている自信のない私は、この件がどのように処理されるべきものなのかまったくわかりません。

(参考)
『GPLは契約として成り立つか---日本法との整合性を検証する:ニュース - CNET Japan』
http://japan.cnet.com/news/ent/story/0,2000056022,20062500,00.htm

(3)インターネット

日本でISDNやアナログ56kbpsのインターネットが流行し始めた際、「インターネットには核兵器や毒ガスの製造法が載っている」なんていうことが話題になりました。実際には製造法を知っていても素人にどうこうできるものではなく、またインターネット「にも」載っているだけであって実は大きめの図書館でも調べられるレベルのものである、というようなこともあり今では話題になることもほとんどありません。

ソフトウェアの場合は電子的な情報に価値があり、製法が移転してしまうこととソフトウェアそのものが移転してしまうことには大きな違いがあるように思います。今回発表されたOSのような改造ができるということからは、ソースコードが開示されている様々な種類のソフトウェアは同じように改造される可能性があるのではないかと思います。

ソースコードの開示されていないプロプライエタリなソフトウェアであってもCD-ROMやDVD-ROMのイメージをインターネット越しに届けることができ、輸出規制のような仕組みがあまり意味をなさなくなってしまうかもしれない,そのようなことを感じました。ある製品のエンドユーザライセンス契約書にはこのような記載があります。ソフトウェア開発を仕事として行っている人であれば一度は「ミサイル?なんじゃ?」と思われた経験があるのではないでしょうか。

本ソフトウェアが、米国の輸出禁止国(現在では、キューバ、北朝鮮、イラン、スーダン及びシリアがこれに該当する。)、日本の輸出禁止国又はその国民若しくは居住者に対し、輸出、再輸出、その他移転されるものではないこと、及び(iii) 本ソフトウェアが、核物質、核関連設備施設、核兵器、ミサイル又は化学/生物兵器の設計、開発、製造又は使用に関連する活動に従事するエンド・ユーザーに輸出、再輸出又は移転されるものではないことに同意する。

個人と個人の関係も、企業と企業の関係も、国と国の関係も、お互いに何をしているのかわからないことは疑心暗鬼を生んでギスギスしてしまいがちです。下のニュースのように「ネットサービス」を輸出することで国民レベルでのお互いの意見交流ができれば相互理解も深まるかと思いますが、日本と韓国ですら衝突があるくらいですので非常に難しいところがあるでしょうね。

『米国、イランの反体制派支援に「ネットサービス」を輸出:シロクマ日報:ITmedia オルタナティブ・ブログ』
http://blogs.itmedia.co.jp/akihito/2010/03/post-7850.html

『米国務長官、「Twitterはイラン国民にとって重要」とコメント - ITmedia エンタープライズ』
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0906/19/news019.html

Comment(0)