米国、イランの反体制派支援に「ネットサービス」を輸出
「米国が他国の反体制派を支援する」と聞くと、以前なら「CIAが密かに武器・資金を援助する」というイメージが浮かんだことでしょう(単に僕が映画の見過ぎなだけかもしれませんが)。しかし最近、政治的弾圧が行われている国において、インターネット上のサービスが反体制派の活動を支える貴重なツールとなるというケースが出ています。例えばイランでの抗議活動が記憶に新しいところですが、米オバマ政権はこうした事例を念頭に、インターネットサービスの輸出規制緩和を決定したそうです:
■ ネットサービスの輸出許可=イラン、スーダン、キューバに-米 (時事ドットコム)
米財務省は8日、イラン、スーダン、キューバの国民の情報発信を支援するため、3カ国に対する輸出規制を緩和し、電子メールやチャット、会員制交流サイト(SNS)などのインターネットサービスや関連ソフトウエアの輸出を許可すると発表した。
と、この記事では決定の意図までは説明されていませんが、以下のNew York Timesの記事に解説があります:
■ U.S. Hopes Internet Exports Will Help Open Closed Societies (New York Times)
“The more people have access to a range of Internet technology and services, the harder it’s going to be for the Iranian government to clamp down on their speech and free expression,” said the official, who spoke on condition of anonymity because the announcement had not been made yet.
(中略)
In a speech in January, Secretary of State Hillary Rodham Clinton declared that Internet freedom had become a fundamental principle of American foreign policy. “Viral videos and blog posts are becoming the samizdat of our day,” she said, referring to censored publications that were passed around in Soviet-era Russia and helped fuel the dissident movement.
発表がまだ行われていないことを理由に、匿名での取材に応じたある政府高官は、「より多くの人々が、多種多様なインターネット技術およびサービスにアクセスできるようになれば、イラン政府にとって言論や表現の自由を抑圧することは難しくなるだろう」と述べている。
(中略)
ヒラリー・クリントン国務長官は1月に行った演説の中で、米国の外交政策において、インターネットの自由を守ることが基本方針となったことを宣言した。彼女は「ネット上で大流行するビデオやブログ記事は、今日における『地下出版物』のような存在になりつつある」と述べ、ソ連時代に検閲を受けながらも流通し、反体制活動を支援した出版物を引き合いに出しながら説明した。
ということで、今回の決定がイランでの状況を念頭に置いたものであることが述べられています。以前から米国務省は、イランでの動きを考慮してTwitter社にメンテナンス時間の変更を要請しているくらいですから、こうした判断に至ったというのも不思議ではないでしょう。地下出版とバイラル・ビデオを比べるというのはちょっと違和感があるものの、確かに米国独立運動における『コモン・センス』と、イランの反体制運動における「ネダ」さんの銃撃映像は、同じ役割を果たしていると考えられるかもしれません。
この輸出規制緩和が、現実にどのような効果をもたらすのかは今後の状況を見極めなければならないでしょう。技術の輸出が可能になっても、相手国の国内で取り締まりを受ける可能性は大きいですし、逆に誤った情報を流して反体制派を混乱させるという手口も考えられます。しかし少なくとも今回の動きは、インターネットサービス、特にTwitterを始めとしたソーシャルメディアが、かつての武器に比類するほど大きな存在になっているということを示しているのではないでしょうか。「Twitterなんてお遊びのツール」という評価も確かに真実ではあるのですが、一方でこうした状況も生まれていることを、よみうり寸評の筆者の方にはご理解いただきたいと感じた次第です。
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