セミナーで良い質問をするための2つの約束
勉強会やセミナーで良い質問をするために、2つ大切なことがあります。ひとつは準備しないこと。ひとつは準備することです。
先日、シトリックスさん主催の仮想化に関するセミナーに参加してきました。
ブロガーズ・ミーティング@CITRIX 2009/06/26そのときのことを林さんが「オルタナブログのブロガーの質問力」としてエントリされていましたので、自分なりの考えをこちらにまとめました。
私は社会人としての経歴は林さんよりもずっと短いわけですが、学生時代に少し変わったボランティアをしていたことがあります。というのも大学の就職部(学生に就職を斡旋するところ)でOBなどを集めて学内向けの会社説明会を開催するにあたり、司会や資料配布や会場案内などの運営で人手を募集していたからです。運営としては10社以上、参加者として20社以上の学内説明会に参加してきました。
説明会の空気を悪くする質問(以前のエントリ)
その経験から得た教訓は2つです。1つは質問を準備していかないこと。もう1つは事前に情報収集してその会社の説明を聞く準備をしていくことです。
質問を準備していかないことのメリットはその場限りでの生(ナマ)な意見交換ができることです。せっかく生身の人間を招いて話を聞いているのですから、その人がその日に話した内容について質問すればよりフレッシュな情報を得ることができます。別にネットや書籍などで得た情報を準備していって質問しても悪くはありませんが、必ずしもその場でないと答えられない質問になるとは限りません。ご意見ご質問メールに投げたら手馴れた感じのコピペメールが帰ってくるような質問もあるでしょう。反対にその場で答えることができないような質問を投げてしまうと重苦しい雰囲気になってしまいます。
具体的には話の途中で少しでも疑問に思ったことをどんどんメモしていくことになります。ちょっとまとまったところで疑問と疑問を対立させたりグルーピングさせたりすると新たな疑問がわいてきたりして、そういう練られた質問をぶつけると話者の方も「なるほどねー」なんて言ってくれたりします。あまり切り込むと心中穏やかでないかもしれませんが。
事前に情報収集していくことはその会で話される内容に対する理解度を飛躍的に高めますのでぜひ取り組むべきです。マナーとして、ぐぐればわかるような専門用語などをいかにも勉強不足ですというオーラを発しながら質問するというのは許されがたいことであるでしょう。他にも質問したい人がたくさんいるにも関わらずそういうことをしてしまうとそれもまたぐっと空気が悪くなります。
具体的にはネットや書籍で情報を収集していくことになります。就職の説明会であればネットで説明会の内容がタレこまれたりしますので、それで概要を想像しておくのもいいかもしれません。また同業他社のところへ行ったり、OB訪問をしたりというのも効果的と思われます。ただし上の「準備しない」との兼ね合いもあり、一生懸命に調べた情熱を質問で発散させてしまうと周りの人には理解できないハイレベルな質問になりますし、回答者の方も「これやべー」と焦りますので要注意です。
自分が知らないことがあるのでそれを聞きにいくわけですから、知らない言葉や概念が出てくることは当たり前です。ただしそれについてちょっと自習していけばわかるような基本的な知識も何も知らないでいくことは、せっかく自分に物事を教えてくれようとしている方に失礼です。例えば有償の勉強会ではもったいないから予習をしていくという人が多いはずです。無償だからといって何を聞いてもタダだから簡単なことでも聞いてしまえというのは自粛したほうがよいでしょう。
この2つは質問の心構えについて以前感じていたことですが、もう少し小手先の技術というのもあります。
1つは過去・未来をはっきりわかりやすく質問することです。
「過去にどうであったのか。今どうなのか。事実(データ)を教えてくれ」
「これからどうなっていくのか」
この2つを回答者にわかりやすく伝えることが重要です。就職説明会ですと「A社は最近Xに力を入れていらっしゃるようで、そのへんのところをお聞かせ願えますでしょうか」という質問がよくあります。色々と調べた結果、Xに力を入れていることを知って「これを知っていることをアピールしておこう」という心理により出てくる質問です。確かにそういった情報にたどりついたことはすごいのかもしれませんが、さすがに質問スタイルがひどすぎます。
「Xについて過去にどういった取り組みをしてきたのか」
「Xをこれからどうしていくのか」
のどちらを知りたいのか、また両方知りたいのかを伝えないと答える側が困ります。また「これからどうしていくのか」についても内容が2つありまして、
「これからどうしていくと決まっているか(計画)」
「これからどうしていきたいか(思想)」
というように分類できます。質問者が今後の思想・展望について聞きたいのに、回答者が最近の動向として「あそことここを買収した。シェアが3割を超えた。実はもう一社交渉中だからニュースをお楽しみに。」という答えをしてしまうかもしれません。それだといまいちですよね。回答者の方の権限によっては過去か計画しか回答できない可能性もありますので、そのへんも相手が思想を語れる立場にあるかどうかについて空気を読んでいきたいところです。
また、回答者からの回答が思ったよりも緩い回答になることがあります。自分はあれも知っているしこれも知っているというときに回答者が気を利かせて噛み砕いてわかりやすく回答するとまどろっこしく感じてしまいます。それを回避するためには質問でさりげなく専門用語を使っていくことです。「自分はこれくらいの知識レベルがありますよ」ということを伝えれば相手もそれに合わせた回答をしてくれます。反対に背伸びした質問で意味不明な回答をもらってしまう可能性も否定できません。就職説明会などで質問タイムを自分の知識をアピールする場と勘違いして色々とがんばる学生さんがいます。人事の方などはこういうのに慣れていて適当にあしらうのですが、人事の方に連れられてきた現場の方などは予想外にハイレベルな質問に気合たっぷりで回答してもう質問も回答もカオスな状態に、ITの未来に日本社会の行く末が語られんばかりのすごい空間というのも見かけました。
最後に、すごい質問をしている人がいたら散会後にその人と仲良くなることも有効です。
長くなりましたので要点をまとめます。
- セミナーや説明会の話者に敬意を払い、持ってきた質問でなく話者の方の話の内容に対して質問を行う。
- セミナーや説明会の内容について下調べをしていく。右も左もわからないという状態で話を聞くのはマナー違反である。
おまけ編のまとめはこちらです。
- 質問の時制を意識する
- 自分の知識レベルを質問の仕方で伝える
- すごい質問をした人とコネを作る
なにかわからないところはコメント欄まで!