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お風呂のカビを抑制する洗面器

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お風呂のカビを防止するという効果をうたった洗面器の広告が
景品表示法違反となったそうです。
そこで、JIS規格における防カビの試験のことについて調べてみました。

販売元が防カビ効果があるという根拠を提示できなかったことから、
「本当か嘘かわからないような広告を出すな」ということで排除命令が出ました。

このような根拠としては、JISなどの規格で定められた実験に基づいて実験をし、
その結果として防カビ効果があることを証明して提示するという方法があります。

そう言えば「ゼロに斜線をつけますか?」というエントリを作った際に
JIS規格について調べました。
JIS規格としてはゼロに斜線をつける事を許しているのか?
というのが気になったからです。

JIS(日本工業規格)とはJISC(日本工業規格会)が定める
日本国内における標準化の規格です。
(2008年9月末で旧JISマークを表示できなくなります。ご注意を。)
新JIS新しいJISマーク

おなじみのやつです。おなじみの古いJISマーク

JISでは様々な標準規格が定められています。
おもしろいところではトイレットペーパーの規格が有名です。
細かく参照される場合はこちらからご覧下さい。(JISP4501になります)
書かれている事をざっくりとまとめてみると

  • 衛生的で適度の柔軟性があり,トイレに流した時,水にほぐれやすく,すきむら,破れ,など使用上の欠点がない品質で,適度な強度をもつもの。

適度の柔軟性……そうですね。
水にほぐれやすい……そうですね。
穴がない……そうですね。
適度な強度……そうですね。

どれも「そうですね」としか言えません。
くれぐれも不合格品には出くわしたくありません。

これらはそれぞれ数値的な指標がないと合格/不合格が判定できません。
そこで10枚重ねにしたときに78kPa以上の圧力に耐えることや、
水300ml(水温セ氏20±5度)を入れたビーカーを
1分に600回のペースでかき混ぜながら、横幅はそのままで
長さ2mmに切り取った試験片を投入してほぐれやすさを計測します。

話が横道にそれまくりましたが、ゼロに斜線をつけるのは
JISで決まっているのだろうか?と疑問に思って調べたという話でした。

関係しそうなものとして、製図関連の規格から文字に関するものを探してみると
JISZ8313-1』というものがありました。その中には

「文字は、たとえ少々毀損していても、文字間の混同がなく、明瞭に見分けられるようにする」

という一文がありました。このルールのおかげで斜線つきゼロというのが
許容範囲内になっているのだと思います。なお、この規格によれば
aと7は下の図にある通りの書き方が最初から認められているそうです。

あんたもナナって言うんだ

これでゼロに斜線の話がすこしすっきりしました。
で、本日の主題はお風呂のカビを抑制する洗面器でした。

こちらに関しては防カビ効果を確かめるための試験の規格というのが
JISで定められています。「かび抵抗性試験方法(JISZ2911)」です。
そのへんでよく見られる菌の増殖が、防カビ商品の作用によって
止まるのか(防カビ)、止まらないのか(not 防カビ)を検査するものです。
石川雅之『もやしもん』の第17話(単行本2巻105ページ)でその存在を知りました。

法律違反と指摘された洗面器が、このJIS規格を満たしていなかったのか、
JIS規格は満たしていたけれども広告でうたったほどの
性能を発揮できなかったのかはわかりません。
しかし防カビの洗面器としておおっぴらに販売されていたいくつかの商品の
紹介サイトを見ましたが、JIS適合という表示が見つかりませんでした。
その代わりに、なんとか研究所というところの独自の実験結果を併記して
「カビが全滅!」という文字が派手なフォントだけで表示されていたりします。

こういうなんとか研究所というのには怪しいものが多いように思います。
そういうところの独自研究は鵜呑みにせず、JISなどの信頼できる規格に基づいた
試験をクリアしているかどうかを確認していきたいものです。

そのようにして、規格というものが私達の身の回りにある製品を
確からしいものであることのおすみつきをくれます。
しかし規格というのはメリットもあり、またデメリットもあるものです。

最近ですと官公庁がMicrosoftのOfficeを買うのをやめるとか
やめないとかいう話がありました。あれで、

「オープンな規格を扱えるソフトでないと購入しません」

と宣言していましたが、そのオープンな規格というのはISOなどの
国際的な標準化団体で定められたものになります。
wordの.docファイルやexcelの.xlsファイルなどは
オープンな規格じゃありませんので公的機関で扱うのに好ましくありません。
そのためOpenOffice陣営のODFという国際規格(ISO)が生まれました。
そうしたらMicrosoft陣営がOOXMLという国際規格(Ecma International)が生まれました。
使う側としては早くどっちかに統一して欲しいです。
企業側としては、自分が作った規格が標準となれば
おいしい思いができますので、がんばって規格を作る事になります。
他にはブルーレイとHDDVDの規格争いや
SDカードとメモリースティック、xD、コンパクトフラッシュなどがあるでしょうか。

同じような問題が、この防カビの規格と言うのにもあるようです。
JISベースの規格が緩いらしく、SEI法というもっと厳しい規格がよく用いられているそうです。
それがわからない人には「JIS法による防カビ効果をクリア」という表示は
それなりに大きな効果があるように見えるでしょう。
そうすると少し高いお金を出してもその商品を買ってしまうことがあるかもしれません。
それなのに実効性が薄いとなると規格のメリットがありません。

とはいえ、JISのようなきちんとした規格においては、そのようなケースは
ごく一部だと思います。やはりJISの有効性は大きいと言えるでしょう。

半永久的にカビを消し去る洗面器のような「おいしい商品」を買いたくなってしまった時は、
ひとまずJISやISOの何かの規格をクリアしているかどうか
購入する前に確認してみてはいかがでしょうか?
上に挙げた様に、規格にはメーカの思惑がうずまく腹黒い部分もありますが、
詐欺みたいな商品をつかまされるよりはよっぽど良いと思います。

以上、関係ないようで関係のある防カビ洗面器と官公庁のオフィスソフト問題でした。

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