オルタナティブ・ブログ > 平凡でもフルーツでもなく、、、 >

感覚人間の思いつき、、、気になった記事、、、雑記等

『正社員』で働くことの脆弱性を明らかにした『老後報告書』の2000万円問題

»

人類の歴史は、安定した生活確保への飽くなき追求

通称『老後報告書』の2000万円問題がどんどん炎上加速しているようです。

選挙を控え与党を揺さぶりたい野党からすれば、消費税の増税問題なども抱える現状がありますので、この2000万円問題は神風的な恩恵を与える可能性もありそうな気がします...

大多数が不安定な生活よりも安定した生活を望んでいるだけに、この問題が大きく取り上げられているのだと思いつつ、人類の歴史はまさに生活に対する安心・安定をいかに確保するかという歴史だったよな...と「銃・病原菌・鉄」の上巻のことを思い出しました。

産業別就業人口の劇的変化

わたしが小さかった頃、昭和40年代の青森県では第1次産業に従事している人たちも多く、天候や環境などの影響が生活に収入に直結する農業や漁業に従事している人たちが身近にいました。また、家業として商売をしている人たちもそれなりの割合で存在していた時代だったように記憶しています。

戦後の産業別従事者の推移は今更いうまでもなく、第3次産業に従事する層が莫大に増加しています。

s1111-6b01.gif

日本の『正社員』として年功序列・終身雇用で雇われることは、いまどき農業や小規模事業を何十年も続けていくことと比較し、安定感重視の職業選択なのだろうと思います。

そういう意味で、生活維持への約束があればこそ『正社員』生活を耐え忍ぶことを受け入れたという方々からすれば、「話が違う!」「約束が守られていない」ということで不満もあるだろう...と理解できるような気はします。

ちなみに何回もブログに書いている話で恐縮ですが、わたしは今風の『正社員』として働いた経験がゼロです。

20歳で専門学校を卒業して半年だけ非正規(契約社員)で働いたあと、正社員としてのお誘いもいただいたのですが、自らの意思でフリーランスの道を選択、30代から53歳になる現在までは零細企業の経営者としてギリギリ何とか生き延びて来ました。

生活の安定とは無縁で、いかに生き延びるか日々向き合う人生で、自転車操業どころか、1輪車操業みたいなもんです。

ですので、安定を重要視する方からすれば、こんな生活したくもないという人も多いだろうと我ながらに感じることもあります(苦笑)

手に入れた安定と引換に失うもの

物事すべてに、良い面と悪い面があります。

今回の一連の報道を眺めながら感じたのは、『正社員』として人生を差し出してしまうと、前提条件が破綻したときに、自助的な対策を講じることが非常に困難であるということでしょうか。

他方、安定とは無縁ですが、自らが稼ぐ手段・能力を保有・維持していれば、政府と言わず、外部要因の変化に対して自分で対処する方法が残されているのは、非常にありがたいことだと感じます。

ドネラ・メドウズの「世界はシステムで動く」で『レジリエンス』についての記述があります。

この『レジリエンス』、工学、生態学、システム科学など定義しようとする部門でさまざまな定義があるそうですが、「世界はシステムで動く」においては

『レジリエンス』とは、ある環境の中でシステムが生き残り、持続する能力がどの程度あるか、ということ。

として、レジリエンスの反対は「もろさ」や「硬直性」と指摘しています。

『正社員』として会社に労働力を提供し、安定した生活を手に入れる。

ただその安定に身を任せるばかりに、訪れる環境変化の中で自身が生き残り、持続する能力(レジリエンス)を失ってしまうのが『正社員』の一番のリスクでは?と感じます。

Comment(0)