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Suica自動改札機の残額表示におけるユーザビリティが著しく劣化している件

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ここ最近導入されたSuica自動改札機、これまで出口の近くにあった表示画面に何も表示されず、手元のほうの画面に残額が出てくる状況に自分は非常に不便を感じていました。

先日facebookで投稿されたこの写真を見かけて、(写真は知人に許可をいただき掲載させてもらっております)

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やはり同じことを感じている方がいるのだな...と思い、この自動改札機の開発エピソードを思い出しました。

JR東日本の非接触自動改札機は1995年の段階ですでに10年以上研究されており技術的にはほぼ現在と同じレベルに近づきつつあったと、山中俊治氏の「デザインの骨格」で紹介されています。

しかし実際に試作テストしてみるとうまく動作せず、「私のは5回に1回しか通してくれない。2割バッターだ」などと参加した重役に開発部長が罵倒される場面があり、開発中止直前に追い込まれていたというエピソードは興味深いところです。

この問題を解決するためにどのようなテストが行われたかというと、その当時はまだユーザビリティという言葉もあまり知られていない時代ではあったのですが、認知科学の知見を活かした実験計画にあったそうです。

この実験は田町の臨時改札口を利用して2日間で行われたそうですが、この準備には2ヶ月以上を費やしたとのこと。

この実験では、カードを縦に当てる人、アンテナの上で激しく振る人、ともかく光っている所にかざす人などが出て来て驚いたそうですが、この実験で手前に少し傾いている光アンテナ面の作りや、文字による案内の有効性、警告表示の置かれるべき位置も分かったきたと記述されています。

これらの結果を踏まえて1999年の実験では読み取り率は劇的(50%近かったエラーが1%以下)に向上、2001年の導入されいま現在に至っているのです。

冒頭指摘した残額表示の件ですが、進行方向と逆の位置に残額を表示して、あげく「残高は手前」という案内をするのは認知科学を勉強した方であればご存じのアフォーダンスの考え方からいってもちょっと考えられないアプローチではないでしょうか。

開発段階からの様々な知見が活かされて優れたデザインが出来上がっているのに、なんでユーザビリティを低下させるような開発が行われているのか残念でなりません。

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