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シアトル市が採用した『最低賃金15ドルという資本家の理論』は暴論か?

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ファストフード店の時給を1500円以上にというデモが開催され、その事に言及した記事にも大きな反響を呼んでいるようです。

単純労働の時給をその水準まで上げることは無理であるという主張と、他国ですでに実施している例があり実現可能性はあるという主張が真っ向からぶつかっています。

このデモが報じられた際に以前に投稿した『「短時間=簡単、だから安価で」というロジックが横行する日本の弊害』というエントリーで紹介したTEDのビデオの事を思い出しました。

このビデオはプルトクラート(上位0.01%の富裕層の一人)のニック・ハノーアー氏は、格差拡大は私たちが民衆に襲われる危険性を高めるばかりでなくビジネスにも大打撃を与えます...という、ある意味格差が広がっても襲われる心配なければどうするの?という経済的な価値で語られることに違和感を感じつつも、プルトクラートから米国でも中産階級に再びお金が回るような富の分配が必要とする声が出て来た点において注目に値すると自分は考えました。

このニック・ハノーアーという人は、中嶋よしふみ氏に反対意見を唱える井上伸氏のエントリ

で紹介されているシアトル市の最低賃金の時給15ドルの話しが登場しますが、2013年6月19日 ブルームバーグ誌に『最低賃金15ドルという資本家の理論』を書いた人であったりします。

このビデオによればその記事が掲載されて ほんの350日後 シアトル市長のエド・マレーが シアトルの最低賃金を時給15ドルに上げるという条例を法律として成立させたと紹介されています。

ただ、このニック・ハノーアーの指摘においても注意すべきは、彼は最低賃金の引き上げによって失業は増えないと主張はしているのですが、以下の基本前提があってのこと。

ちょっと長いですが引用します

1980年以来我が国のCEOの賃金は平均賃金の30倍か 500倍に上がりましたこれが人件費増加の実体です。さらに私が知る限りCEOの職を外部委託したり自動化したり中国に移したりしている企業は 一つもありません。それどころかかつてないほど多くのCEOや経営幹部が雇われているようです。

テクノロジー系や金融サービス系の労働者もそうです。彼らは平均賃金の何倍も稼ぎますが彼らの雇用は増加しています。人件費の増加が高給取りの増加であることは明らかなのです。

ほとんどの人は最低賃金15ドルというのは常軌を逸したリスクの高い経済的実験だと思うでしょう。私たちはそう思いません。私たちはシアトルでの最低賃金15ドル法を論理的な経済政策を維持するための策だと考えています。それによってこちらの都市がそちらの都市をやっつけられるようになります。

というのも ご存知でしょう ワシントン州はすでに 最低賃金が国内で 最も高い州です。ここでの時給は9ドル32セントでこれは連邦最低賃金である 7ドル25セントより3割多いですが重要なのは チップをもらう職種の連邦最低賃金である 2ドル13セントの427%に当たる 金額であるという点です。トリクルダウン支持者の言うとおりなら ワシントン州は大量の失業者を抱えていたでしょう。シアトルは沈没していたでしょう。

ところがシアトルは国内の大都市で最も急成長しているのです。ワシントン州は他のどの主要な州よりも高い成長率で 小企業の雇用を増やしています。シアトルのレストラン業は好景気に沸いています。その理由は資本主義の原則として労働者の持つお金が増えるとビジネスには客が増え働き手が必要になるからです。

レストランが従業員に払う給料で従業員が外食できるようになればそれはレストラン業にとって悪くない話です。良い話なんです。レストラン経営者の中にはそうは考えない人もいるようですがね 言うは易く行うは難しと思われますか? もちろんそうですさまざまな力学が働いています

でも 低賃金労働者の 稼ぎが少し増えると失業が急増し 経済が崩壊すると考えるのは もう止めませんか? そんな証拠はないのです。

トリクルダウン経済論の最もタチが悪い点は、金持ちが もっと金持ちになれば 皆が幸せになるというその主張ではありません。貧乏人が金持ちになることは経済にとってマイナスだとして最低賃金の引き上げに反対する人々の主張です。

ここで考えたいのは、まず基本のなるビジネスが伸びていて(伸びる兆しが有り)、高い給料を支払うことが可能な職種、「CEOや経営幹部」「テクノロジー系や金融サービス系の労働者」への資本投下が可能なビジネス状況があればこそだとだということです。

今回こういうビデオを紹介しましたが、自分は他の国では時給1500円も滅んでいないのかもしれませんが、自身の労働価値に無頓着で、スキルも磨かず、ただただ法律使って時給を上げろという主張に自分は簡単に同意できません。

ただ経営者としてSWOT分析の脅威の項目で法律・規制の変化を除外する人は居ないでしょうし、今後そういう環境に晒された時にどうやって経営を成り立たせることが出来るのかを考える必要はあると感じています。

松下幸之助氏が提唱していたダム式経営について、「ダム経営をしなければならないのは分かるのですが、そのような余裕がないから困っているのです。どうすればダム経営ができるのでしょうか」と質問されて「まず願うことですな。願わないとできませんな」と答えたのは有名なエピソードかと。

更に、この現場にいた稲盛和夫氏は「何か簡単な方法を教えてくれ、というような生半可な考えでは経営はできない。できる、できないではなく、まず、おれは経営をこうしようという強い願望を持つことが大切だ」と受け止めた、という話しに続いていく訳ですが...

自分は音楽の仕事がバックボーンにあり、楽器が弾けないのにバンドに入れて下さいはあり得ないし、テクニックを磨かなければクビになるのも当然だと考えており、誰もが望んだ職場に雇われて高給を得られる社会は理想像としては良いかもしれませんが、それはあり得ないという考えです。

わたしの会社は現時点では労働集約型の業務形態ではありますが、幸いITテクノロジを活用する素養はある組織を経営しているので、労働者側と経営者側双方が対処をすべく、創意工夫をしながら他所の倍の最低時給を設定できる仕組みってどうやって実現可能?って来週から仲間達と考えてみたいと思います。

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