企業によるメンタルヘルス対策、70%以上が「効果不明」
いま受講している社会心理学の講義の中で「抑うつと社会不適応」という項目があり、その中で、「うつ病」と「うつ状態」という違いについて書いてあるところがあるのですが、ちょっとテキスト読んだだけでは素人には判断つかない話しで、この手の話しの難しさを感じてしまいます。
そういう中で目を引いたのは、社会不適応研究が目指すものとして
●社会的適応を目指して
最後になるが、これまで本章で述べてきたような社会的不適応に関する研究は、社会的に不適応な反応を特定し、それを取り除くという、どちらかといえば引き算の発想で行われたものだった。しかし、近年、社会的に適切な反応を行うために必要な力を特定し、それを育てていくという足し算の発想で行われる研究にも関心が集まっている。中略
人がより適応的に生きるために必要な能力について検討していく足し算型研究は、疾病の予防や健康増進に焦点を当てた「健康心理学」や、人間のポジティブな精神機能に注目した「ポジティブ心理学」の興隆とともに、今後さらに発展していくと思われる。
こんな記述があります。
巷で最近見聞きする、隠れうつ病・仮面うつ病など、どんどん広範囲になってきてその対処への難しさは増すばかりですが、前述の研究と同じで世間の「うつ病」に関する考え方も、本人のやる気が足りないというような言わば引き算的な考えから、大企業においては1割程度が「うつ状態」というような数字もあるようで、それなりの割合の人が抱える症状として対応して行こうという、足し算的な考え方を取り入れざる得ない状況なのかもしれません。
4年生の自由選択科目として、メンタルヘルスの科目もとってみてこちらの基本レポートをすませたところなのですが、こちらはテキスト、大阪商工会議所の
メンタルヘルス・マネジメント検定試験公式テキスト II種 ラインケアコース
これが採用されているのですが、 II種 ラインケアコースということで、管理職に向けての内容が主体となっており、まず最初のほうは労働安全衛生法や安全配慮義務、労働契約法など企業側に求められる状況などについて学ぶことになります。
このテキストで紹介されている「職業性ストレス簡易調査票」、冒頭こういう質問から始まる事に驚いてしまいました。
- 非常にたくさんの仕事をしなければならない-------------------- 1 2 3 4
- 時間内に仕事が処理しきれない-------------------------------- 1 2 3 4
- 一生懸命働かなければならない-------------------------------- 1 2 3 4
- かなり注意を集中する必要がある------------------------------ 1 2 3 4
- 高度の知識や技術が必要なむずかしい仕事だ-------------------- 1 2 3 4
- 勤務時間中はいつも仕事のことを考えていなければならない ------ 1 2 3 4
- からだを大変よく使う仕事だ---------------------------------- 1 2 3 4
- 自分のペースで仕事ができる---------------------------------- 1 2 3 4
- 自分で仕事の順番・やり方を決めることができる---------------- 1 2 3 4
- 職場の仕事の方針に自分の意見を反映できる-------------------- 1 2 3 4
- 自分の技能や知識を仕事で使うことが少ない-------------------- 1 2 3 4
- 私の部署内で意見のくい違いがある---------------------------- 1 2 3 4
- 私の部署と他の部署とはうまが合わない------------------------ 1 2 3 4
- 私の職場の雰囲気は友好的である------------------------------ 1 2 3 4
- 私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、換気など)はよくない -- 1 2 3 4
- 仕事の内容は自分にあっている-------------------------------- 1 2 3 4
- 働きがいのある仕事だ---------------------------------------- 1 2 3 4
企業、職場におけるメンタルヘルス対策は、それが労災認定された際に企業側へのダメージがかなり大きいという趣旨の記述も多くみられて、これらの仕組みを浸透させたいと考えている協会が発行している参考書を大学の講義のテキストにしていることに正直疑問を感じました。(ただ、産業心理コースもあるので、そちらの資格取得を目標とした科目なのかもしれません)
わたしが感じた疑問について同様の指摘がこちらの記事ではなされています。
つなごう医療 中日メディカルサイト | 心の職場健診義務化、「待った」 厚労省案に専門家ら異議
医師でジャーナリストの富家(ふけ)孝氏は「厚労省の官僚は、常に製薬業界や医師の利益拡大を考えている。メタボリック健診はその典型。血圧や総コレステロールなどの基準も、昔と比べれば大幅に厳しくなって治療する人が増えた。気にするほどのレベルではない人まで病気にされている」と批判する。
そして今日産経新聞のほうにこんな記事が出ていたようです。
3人に2人「効果不明」 心の健康 企業対策浸透せず (産経新聞) - Yahoo!ニュース
調査は平成25年11月、厚生労働省の科学研究費補助を受け実施。労務担当者や産業医らの実務者429人が回答した。社内で実際にメンタルヘルス対策を講じているとした213人のうち、65%に当たる139人が「効果を認識できていない」と回答。17人(8%)は「効果が表れていない」と答えた。
前述の記事の最後にはこんな指摘があります、
「メンタルヘルス疾患の8割は職場が原因で発生している。医師が診察して快方に向かったとしても、環境が変わらないのでは職場に戻せない。健診や医師の診察の前に、事業者が、心の病が発生しないよう真剣に取り組めば、多くの問題は解決するのではないか」
日本型雇用から外れると積み上げてきたものが全て失われるとか、同一労働、同一賃金の実現していない現状では、根本的な問題解決には繋がらないのでは?という指摘に私には思えます。
昨日も書きましたけど、こういう状況では企業側が何してくれるという事より、自身のエンプロイ・スキルを磨いておくことが非常に大事だと思います。
実際に行動に移すかどうかは別問題としても、食べていける職能を磨いておき、いざとなれば気に入らない奴とは仕事しないという選択肢が選べるという心の余裕を持つことは凄く大事だと思います。