オルタナティブ・ブログ > 平凡でもフルーツでもなく、、、 >

感覚人間の思いつき、、、気になった記事、、、雑記等

雇用の安定も大事だけど、有益で報酬の見合う職を得られる権利を重要する考え方もあるよね

»

前回、フリーランスや零細業者の立場では使い捨ては当たり前という話を自分の経験を踏まえ書きました。

この週末またまたYahoo!のトップに「解雇ルール」について掲載されており、リンク先で一番大きく扱われている記事はこちらでした。

「解雇ルール見直し」に強まる反発
 「日本は解雇しにくい国といわれるが、それはウソ。大企業では追い出し部屋が広がり、中小企業では無法な解雇がのさばっている。解雇規制の緩和などとんでもない」。ある労働団体の幹部は憤る。(東洋経済オンライン)

この記事や先週から幾つかの記事を眺めつつ、アメリカは実際中高年の雇用問題はどうなっているのか気になって、この週末何年ぶりかでマイケルムーアの「キャピタリズム」を見直してみることにしました。

今回見直した中で印象的だったところは2点あり、

1点目は、ルーズベルト大統領の第二の権利章典の提言

  • 有益で報酬の見合う職を得られる権利
  • 衣食住に加え、余暇を賄うに十分な収入を得る権利
  • 農業従事者が生産物を栽培し売ることによって生活できる対価を得る権利
  • 企業がその規模の大小に関わらず、自由に取引し国内外を問わず不公平な競争や独占から守られる権利
  • 家族が適正な家に住む権利
  • 適正な医療を受け、健康に暮らせる権利
  • 老後・病気・事故・失業などの経済的不安から守られる権利
  • 良き教育を受ける権利

これらが米国民には保障されていないのに、欧州や日本ではどれもが保障されているのはなぜだろう?と問いかけ、ルーズベルト政権に居た人々が、ドイツ・イタリア・日本の復興に参画、イタリアの男女平等、公益のための私有財産や生産手段を国が用いる権利、そして”アメリカが日本に書いた”憲法にはすべての労働者には団結権があると紹介しています。

「キャピタリズム」で描かれているアメリカの資本主義は凄まじく、収益重視、競争主義がそれなりに必要であると考える人でも、従業員に無断で生命保険をかけ、受取人になるところまでを受け入れられるかというと多くの人が違うと答えると思います。

「キャピタリズム」では、突然の解雇に対して対抗する労働者の姿が描かれており、持てる権利を行使するのは当たり前だし、自分の不利になるような改正に黙って従う訳がないだろうと言われればそれまでなのですが、池田 信夫氏のこの記述を読んで日本における問題ってここだよな、、、と自分も思うのです。

「解雇ルール」についての誤解

このバッファとなっているのが非正社員である。特に派遣や請負の規制がきびしくなったため、規制の弱いパート・アルバイトが増えている。彼らの待遇を改善するには、無期雇用(正社員)と3年の短期雇用しか認めない規制を撤廃し、有期雇用を全面的に自由化するなど、雇用形態を多様化する必要がある。

2点目は、大きくて潰せない方式の矛盾。

つい最近日本でも再生した日航の話が紹介されていましたが、古くは日本の金融機関も特別ルールをつくり公的資金で支えてもらった歴史があります。

「キャピタリズム」の冒頭では、ローンの支払いが出来なくなり、ルールに従い家を追われる家庭が何軒も紹介されます。そして物語が進むうちにアメリカの金融危機で大手金融機関があの手この手を使って救済されるも、立場の弱い労働者や自営業者が救済・保護されないのは何故か?と疑問を投げかけ、差し押さえ活動を停止した保安官事務所の話を紹介しています。

労働者は確かに企業との関係で見れば弱者ですが、前述の通り日本の労働環境下においてはその地位・環境を維持するためバッファとなっている存在があるのは日本特有で、先日書いたように解雇ルール緩和以前にホワイトカラーエグゼンプション的な制度導入も考える必要があると思います。

また、潰れたら困るという恐怖を利用して、ルールを都合良く変更したうえで救済に税金が投入された企業の正社員の守られ方と、適者生存ルールで放り出されてしまう人との差は何からくるのか…ここのモヤモヤは晴れることはないと思いますが、欧米圏と日本における「自由」という概念の違いについてのこの指摘を見て考えることろがありました。

土居 健郎氏の「甘え」の構造の中で、自由という言葉は「自由気まま」という表現があるように、多少とも非難せられるような意義の含まれていることが多く、明治以後、自由が訳語となった freedom ないし liberty の場合と正反対であり、西洋における自由は人間の尊厳を示すものでこそあれ、非難されるべき筋合いのものでは無いとあり、西洋的自由の観念は、個人の集団に対する優位性の根拠だと書いています。

より多くの人が安心して暮らせる仕組みとして終身雇用、年功序列が機能した時代があったでしょうがそれ自体を日本全体で機能させることが困難になったいま、その一部を延命させるために他所の犠牲が大きいのでは本末転倒。

「解雇ルール見直し」に反発があるのもわかりますが、有益で報酬の見合う職を得られる権利であったり、企業がその規模の大小に関わらず自由に取引し国内外を問わず不公平な競争や独占から守られる権利の観点もすごく大事だよなと思ったのでした。

Comment(0)