オルタナティブ・ブログ > 平凡でもフルーツでもなく、、、 >

感覚人間の思いつき、、、気になった記事、、、雑記等

電子書籍元年はもう終わったのか?

»

電子書籍元年はもう終わったのか?日経ビジネスオンライン小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明の最新の記事「あらゆる文字はGoogleの資産になるのだろうか?」でこんな指摘がされています。

「3Dテレビ元年」ということが喧伝されはじめる直前まで、2010年が「電子出版元年」と言われていたことをおぼえておいでだろうか。
 結果は、いずれも空振り。モノ離れ元年。特に電子出版元年の方は、iPad(アイパッド)の需要が一巡すると完全に忘れられた。

そう言われてみればもう2010年も10月で残り2ヶ月あまり…元年の終わりかけにシャープのガラパゴスが登場して新聞や雑誌の定期購読分野に参入する試みがどこまで浸透することが出来るのか非常に興味があるところ…

ただ残念ながら零細会社で異業種参入の我々が、このような日本を代表するメーカーと出版社が取り組むビジネスに出る幕なぞあるわけもなく、成り行きを見守るしかない訳で…なんかネットが日本に普及したあたりの頃を思い出すような様相であったりしますが、この辺の想いはまた別な時にエントリ化するとして、

今日は電子書籍のフォーマットとしてオープンなプラットフォームであるePubではあるけど、現状iPad・iPhone向けにコーディングだけでなく、ほかのデバイスを考えた場合にどのビューワーを考慮しようか?と当然悩む訳で、多分名前が最初に挙がるのは「Adobe - Digital Editions」か、Firefoxのプラグインではないか?と思います。

音楽雑誌の新しい形を模索する試みの中でAppleとSONYの溝に多いに苦しめられているのですが、この2社はPC、携行型の音楽プレーヤーを販売し、音楽のダウンロード販売も当然手がけており、来年あたりはテレビの分野でもいろいろぶつかりそうな情勢…ただ電子書籍分野においてはePubをベースにするという点では合致していて、そういう観点から考えた場合、こちらのサイトで提供されているPC用の電子書籍ビューワーは注目すべきアプリです。

まだ日本語バージョンは出ていないのですが、前述のように大手メーカと出版社が戦略的にビジネスを開始する場合には、それ相当の予算を確保して数年やってみて大赤字…という話はよくありますが、外部業者がiPadやiPhoneだけに届くePubというか電子書籍の企画を持ち込んでも、まず売り上げとして見込める部数の段階で話を聞いてもらえないケースも多々ありこの観点においても、こちらの記事ある、

また今回の発表に合わせ、ソニーでは専用の電子ブックリーダー以外でコンテンツの閲覧が可能なソフトウェアの提供スケジュールも発表している。現在PC向けの閲覧ソフトウェアとしてはWindows版とMac版の2種類が用意されているが、今年末をめどにAndroid版とiPhone版アプリの2種類を提供する計画だという。

↑これが実現して、その対応フォーマットの基本がePubでOKだとすると、前述のPC用ビューワーのほか、現在iPad/iPhone向けにコーディングしているePubを「Sony Reader」での表示互換を確保しつつ、ソニー系の試聴音源がこの「Sony Reader」派生のビューワーで聞ける環境をSONYが構築してくれると、電子書籍における音楽活用の試みが劇的に変化することが想像できます。

紙の売り上げ増加が大事とは言いつつも、AppleのiPadやiPhoneといった製品だけでなく、Xperia、Sony Readerでも共通コンテンツが流通、PCでは前述のSONYが提供するReader Libraryで閲覧・コンテンツ購入できるとなればePubでコンテンツ提供をしようと取り組んでいただける出版社さんも増えるのではないか?と思うから

ただ、そこには当然いろいろ受け入れにくいだろう…と予測できる事もありまして、

 

Jazzjapan_2
Reader Libraryでの「JazzJapan Vol2」ePub表示例

日本においては、縦書きやらルビの問題でXMDFに頼らざる得ない状況あり、ePubの表示は問題外という方も多いように感じますが、さらに電子書籍で互換性の高いコンテンツ流通をさせる場合には、元々の書いてある情報が大事という根源的な問題と対峙する必要が出てきます。

参考として、ソニーの「Reader Library」から接続するオンライン書店と、AmazonのKindleストアで買い求められる電子書籍と、実際の紙のレイアウトがこれだけ違う…という例をお見せしておきたいと思います。

「Reader Library」はビューワーとして機能するほか、iTunesのようにオンラインストアへのアクセスを行い、書籍の検索や購入はここで済ませることになります。(残念ながら日本居住者は購入は出来ません)

Readerlibrary02

「Sony Reader」向けのレイアウトがどの位のレベルなのか残念ながら日本からは確認できないのですが、この「Damon Brown's Simple Guide to the iPad」という書籍はAmazonでも販売されていますから、Kindle版の状況は確認できるのでトライしてみます

Amazon_2

「Sony Reader」向けが$1.99なのにamazonが$3.79なのが不満ですが、仕方ないので購入…例としてKindle for PCでの表示状態を例示します。

Kindle01

↑こちらのページ最初は何のページなのだろ?と思ったら、紙媒体はこんなレイアウトでした…

Amazon01

もう1例、

Kindle03

Amazon02
見出しの色訳やフォントサイズの変更などCSSでそれなりに制御できそうなところも一切手は入れていない感じです。

これを見て、「もう全然話しにならん…」という方もいらっしゃるでしょうし、「もともと学術系で文字と簡単な図表だけだから気にならん…」という方もいるかもしれませんが、日本の出版に関わってきた多くの方々にこの見た目を受け入れてもらうのは非常にハードル高そうだと感じつつも、実際のプロジェクトではPDFならタダなのにePubの変換にコスト掛けられないというなら、これを受け入れるしかないという現実をどう受け止めるか、まずはお考えいただく必要ありと申し上げておきたいと思います。

昨日も書きましたけど、日本の場合書店が減っている…という割には、ユーザが書店や新聞の書籍広告欄以外に「書籍」の存在を知り、購入するかどうかの判断が下せる従来書店における「立ち見」の環境をどう提供するのかへの取り組みが遅れているように思われ、冒頭に紹介した小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明の「あらゆる文字はGoogleの資産になるのだろうか?」ではこんな一説が…

一度はじまった変化は、二度と昔には戻らない。
 街からCDショップが無くなり、写真屋が根絶やしになりつつあるのと同じように、この先、書店が少しずつ消えていく中で、本を読むわれわれの読み方も以前と同じではいられない。本を書く人間の書き方も変わっていく。

すくなくとも現在は日本のiBooksも開いていないしePubにしたってiPadやiPhoneとかごくごく限られたレンジの人たちのところにしかリーチしそうにな状況ではありますが、SONYが「Reader Library」でiTunes的な事を始めたら話はもう全然違う次元にひとっ飛びな訳です。

音楽販売のところでSONYとAppleが手を組むことは現状想像できませんけど、ePubフォーマットという細い線でつながったこの両者が、音楽ビジネスとの関わりをこの電子書籍分野でどう確保していくかで、モノ離れ元年として電子出版元年は完全に忘れられたものになるのかどうかの鍵を握っているような気がします。

Comment(0)