オルタナティブ・ブログ > 平凡でもフルーツでもなく、、、 >

感覚人間の思いつき、、、気になった記事、、、雑記等

「元素図鑑」作者インタビューから電子書籍の成功要因を考えてみる

»

書籍の世界では同じ内容なんだけどタイトルを替えたら売れてしまった…という例があるという話を聞いたことがあります。

あと表紙で売れるってケースもあるようで、我が家の息子も何年か前に太宰治の「人間失格」を「DEATH NOTE(デスノート)」小畑健さんバージョンになったのを買ってましたっけw

そして、最近感心したのは「超訳 ニーチェの言葉」なんですけど、何に感心したって、このニーチェの言葉を読んでいろいろ気になることが出てきて、自分としてはニーチェ全集の中から「人間的、あまりに人間的」とか追加購入してみたんですけど、タイトルにもあるようにその「超訳」っぷりにですw

ここまでの話で何が言いたいかというと、イマドキ上手に商売をする人たちは、こうやって優れたコンテンツを再利用してマネタイズに成功しているよな…とこれ以外の例でも感じる事が多いというお話でして、

最初に紹介したタイトルの例は違いますが、それ以外の例は、そこで扱われているコンテンツは基本的にすでに著名な作品だったりして、やはり一定のネームバリューが再利用の成功の大きな要因であることは事実だと思います。

さて、わたしが最近電子書籍関係の制作だけでなく、企画の相談などにも関わっている中で、電子化に掛かるコストに対する考え方で案件が進展するか、ストップするか非常に大きなポイントだったりする訳ですが、iPad用のアプリとして大成功を収めた「元素図鑑」の作者であるセオドア・グレイ氏のインタビューから感じるのは、既存コンテンツの電子化で成功するためのポイントとして大事なのは以下の2点のような気がします。

  • 電子化する事の意義を作者自身が強く感じている(そもそも電子のほうが向いているけど昔は紙しか無かったとか)
  • 電子化を決断した時点で、素材(写真・文章・回転するオブジェクトの素材)はすべて揃っていた

このような作者の情熱と最低限のコストでスタートできるというビジネスとしての側面からも好条件が揃っていた事はラッキーな訳ですけれど、もともとこの「元素図鑑」はiPad用の電子書籍が出来る前から、これだけのラインナップがあって、

 

それには出版社を含め相当なお金と労力が投じられている筈ですから、紙版の元素図鑑の販売価格は30ドル。発売以来9万部の売り上げで化学書としてはかなりのベストセラーという背景を踏まえると、電子書籍化に掛かった2ヶ月間の開発費を十分に賄う利益がすでにあったから…と言われてしまうと身も蓋もない話になってしまいますが、iPhone4用に新たにレイアウトをすべてやり直してしまう拘りから感じるのはやはり電子化する事の意義を著者自体が強く感じているからではないでしょうか。

バブル時代ならいざしらず、サラリーマンという立場であれば、このコスト最優先の今の時代に会社の方針に歯向かってリスクを取るのは大変だと思われますから、電子出版については、あくまで出版社主導でと電子化に必要な開発コスト負担をお願いするモデルと、我々のような会社と作者主導で開発コストの負担を含めた電子化作業と販売を行い、出版社側にはそれに応じた利益配分を行うモデルの2パターンで考えていくのが具体的な事案を増やしていくためには必要だろうと考えています。

あとセオドア氏のインタビューでひと味違うな…と思ったのはこの一節

インタビュアーである林信行さんの「実際にこの本を教科に取り入れるような学校もあるのでしょうか」という質問に、こんな風に答えています。

この本は教科書になることを目指したのではありません。むしろ、子どもたちを豊かにする本として学校の図書館に置いてもらってに自発的に読んでもらったり、両親から買い与えてもらう本、というポジションを狙っています。

中略

もしこれが教科書に選ばれたり、政府公認のカリキュラムに組み込まれたら、急に退屈になって誰も読まなくなってしまうでしょう。

これって日本だったらもっと優等生的な答えが出てきたりすることが多いような気がするのですが、自分が夢中になれることをやれる事の大切さが@ITに掲載されたインタビューのほうにあるんですね。

最後にそのインタビューを紹介させてもらいますが、大事なポイントのところでも触れたように作者自身が電子化の意義を強く感じつつ、商売っけがないと生きていけないという事と一生懸命やったからといって、成功の保証はないという覚悟をもってその現実に向き合うことの大切さを改めて感じたつつ、やっぱり感度の合う人との出会わなければ何にも始まらないのだよね…と思ったのでした。

――何でも、ご自身で手掛けるのは、とても大変そうです。

グレイ 自分が楽しまなければ良い仕事はできません。楽しくなければ、時間の無駄です。そんなことすぐに止めて、ほかに何か楽しめることをやった方がいい。そうすればもっと、上手くいくはずですよ。私自身、自分が好きじゃないことで何かを上手くやるのは苦手です。

 とはいっても、楽しくて、かつ、自分以外の人をも楽しませられることで食べていくのは大変なことです。商売っけが全然ないと、生きていけませんからね。

――どうすれば、楽しいことをやって生きていけるのでしょうか。

グレイ 何かにものすごく興味が湧いて、自分の“仕事”を放り出してでもやりたいと思えることができたら、それは良い予兆です。簡単な話、何かに長い時間をかけたとしましょう。それが人がやったことのないたぐいのことだったと分かったら、それはすごく面白いことです。「元素図鑑」を作っていたときのことを思い出しますけど、すごく楽しかったですよ! 2カ月間、それ以外は何もやらなかった。家族にも会わずにね。家族には悪かったけど、やったかいがありましたよ。

 ただ、運もあったとは思いますけどね。一生懸命やったからといって、成功の保証はないわけですし。時間をうんと使ったところで、何にもならないことだってありますから。失敗したって、誰が気にしてくれるもんですか(笑)。ただただ、楽しかったからこそ、できたことなのです。

Comment(0)