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逸失利益の計算に「非正規労働者」という分類が追加されるのは誰のためになるのか?

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交通事故で亡くなったり、障害を負ったりした場合、将来得られたはずの収入「逸失利益」を非正規労働者は正社員より少なくするべきではないか――と提案した裁判官の論文について波紋を読んでいる朝日新聞が取り上げています。

「逸失利益」には以前は男女別全年齢平均賃金などを基準とする「東京方式」と平均初任給を基準とする「大阪方式」で未就労者の逸失利益を算定する方法があり、地域格差があったという事にちょっと驚きましたけど、そもそも命に値段をつけられるのか?という「功利主義」や「費用便益分析」についての議論がサンデル教授の「ハーバード白熱教室」でもテーマのひとつになっていましたね。

「逸失利益」を検索すると、平均賃金額の統計資料が出てきますが、当然のことながらここには学歴別の年収額も出てきて、その名の通り遺失した利益の算定基準を知ることが出来ます。

今回のニュースで取り上げられている非正規労働者の「遺失利益」算定について、徳永幸蔵裁判官と田端理恵子裁判官が法律専門誌「法曹時報」において

  1. 実収入が相当低い
  2. 正社員として働く意思がない
  3. 専門技術もない

などの場合、若い層でも逸失利益を低く見積もるべきだと提言、これに対して脇田滋・龍谷大教授が以下のように指摘。

「論文は若者が自ら進んで非正規労働者という立場を選んでいるとの前提に立っているが、若者の多くは正社員として働きたいと思っている。逸失利益が安易に切り下げられるようなことになれば、非正規労働者は『死後』まで差別的な扱いを受けることになる」

逸失利益の基礎収入額では以下のような分類が存在し、そこには実収入がないから逸失利益を認めない…という考えはさすがに無理があるので、それぞれに例外を含め設定されている訳ですが、

  • 給与所得者
  • 事業所得者
  • 専業主婦
  • 有職の主婦
  • 学生・生徒・幼児
  • 高齢者
  • 失業者

望みであれ満足であれ、ある程度存在していればどんなものでも測定できるという考え方があるそうですが、自分を社会における経済的な価値でのみ測定される事に対して違和感を感じる…という方も居もいらっしゃると思います。

実際、事故の加害者側が「平均賃金まで稼げる見込みはない」として訴訟で争うケースが増えていて、実際に非正規労働者の逸失利益が正社員より低く認定される司法判断も出てきている…とこの記事では伝えていますから、

今後こういう考え方がそれなりに浸透するかもしれないと考えた場合

  1. 実収入が相当低い
  2. 正社員として働く意思がない
  3. 専門技術もない

という状況が1と3は現実としてあっても、2においては自ら進んでその立場でいるのではない…という事を妥当性をもって主張できるようにしておかないと裁判においては不利になると考えるべきなのかもしれません。

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