電子雑誌としてのePubの可能性をJazzJapanとその他の事例から考えてみる
谷川さんが書かれたエントリをご覧になった方はすでにご存じかと思いますが、谷川さんと協力しながら電子書籍制作プロジェクトの案件を具体化することが出来ましたので、報告かたがたエントリ書かせていただきます。
その中身とは、ジャズの専門誌、スイングジャーナルが七月号で休刊、新たにその編集部のメンバーが中心になって、発売元をヤマハミュージックメディアが務め、書籍販売と電子書籍で「JazzJapan」として先月28日にVol.1が創刊するので、その電子版を31日に配信するという企画で、かなりのハードスケジュールをなんとか無事消化することが出来ましたw
ePub制作についてはこれまたオルタナブロガー永井さんの著書をePub化する試みを経験していた事が幸いし、たまたまAppleのほうが拡張方式ではあるのですがビデオや音声、PDFをePubに埋め込む方法をリリースしてくれたというタイミングだったので、JazzJapan編集部の方々にその時点で考えられる音楽ネタと連係した活用方法を説明、
編集サイドの要望としてはアーティストインタビューのビデオの掲載と、方法は何でも良いので電子書籍の中で試聴が出来る事、来日アーティストのライブ情報掲載とそこからリンクをたどって、チケットの予約や購入できる仕組みを作りたいとの事でしたので、技術面での問題はクリア、あとはレイアウトで出来ること、出来ない事の確認と、一応iPad/iPhone/iPod touchに最適化で了承はいただいたのですが、、StanzaやAdobe Digital Editions、FirefoxのePubビューワーでの閲覧も考慮しつつコーディング作業を進めることにしました。
今回この短期間で良く話がまとまったと思うのですが、そこには編集部の方々がこれからは電子でやっていく事を考えなくてはダメ!という強い思いと我々の提案を受け入れてくれる柔軟性があったからだと思います。
日本の出版社および印刷会社の大多数の方々は、当然ながら日本語としての縦書き表示を大切に考えられていて、電子書籍を新たな媒体としてうまく活用していこうという思考よりも、従来あるコンテンツの電子化(XMDF、T-Time、.book による縦書き再現の精度など)に目が向いているケースが多いように思われ、どうも話が噛み合わないケースもあったりして、
それはそれは大事な事なのですが、雑誌媒体の電子書籍の利用形態のひとつとしてePubが持つお手軽さとインタラクティブ性を活用すること、そしてiBooksという書棚に収まり、ひとつのコレクションとして蓄積されてく特性を考えると雑誌媒体の方々には注目・活用すべきテクノロジだと思うのです。
例えば、
出版という事をまずePubが前提ということで取り組んでしまうというモデル。そしてこのモデルはすでにジェットダイスケさんが編集長として取り組まれていらっしゃいますね。
ポットキャスト配信を利用することで定期刊行するオススメレシピ(ePub形式)が読者のiBooksの本棚に届くという先例を示したテーブルマーク株式会社とWhizzo Productionの事例も有名なところですね。
ホンダさんの場合には、自社のバイクを特集した記事をメーカーサイトで通常のWebコンテンツとして再掲するだけでなくePubとして配信する取り組みをスタートされており、特集記事の利用方法として今後こういう手法は多くの会社が採用すると思われます。
そして我々が取り組んでいるJazzJapan
こちらは何より雑誌創刊と同時にスタートした電子書籍なので既存雑誌なら活用できるバックナンバー利用が出来ない…という辛さと、フリーではなく紙媒体を購入いただいた方向けのコンテンツという難しさがあるのですが、ここに関わる人達が電子書籍という形態で新たな音楽雑誌の形態を作って行こうという心持ちでプロジェクトを進めておりますので、次号からこんな機能を付けてみたいとか、こういう使い勝手を実現できないものか…などなどまだ進化の余地は十分あると考えています。
そして何より、アプリとしてのリリースやiBooksへの登録はAppleの審査がある以上、コンテンツ制作・提供側の思うタイミングでリリースするのは困難であることや、アプリの場合その中身によっても掲載がストップしてしまうリスクを考えると、自社サーバから無料でも有料でも自社の考えるスケジュールと中身で定期・不定期を問わずePub雑誌をリリースできるというのは利用価値があると考えます。
このほかにも今回のePub電子書籍の発刊という具体的な案件を経験したことでかなりノウハウを得ることができました。残念ながらビジネスの絡みもありそのすべてをここで書くことはできませんが、JazzJapanは紙媒体を買っていただいた方限定のコンテンツとしてリリースしていく方針なので、無料配信のものと比較してどうそのプレミアム感をコンテンツで実現していくのか?などの非常に難しい課題がありつつも、そこにトライしていく機会を得られた事は本当に有り難いことだと、今回の関係者の皆さんには本当に心からお礼を言いたいと思います。
そして、記念すべきJazzJapanVol1の表紙を飾った世界的なギタリスト、渡辺香津美さんがパットメセニーのオーケストリオンの衝撃という寄稿をされていて、JazzJapanVol1の電子版についてもTwitterでのつぶやきを介して交流を持たせていただけた事はこれまた予想外の展開であり、わたしにとって電子書籍がこういう形で衝撃をもたらすとは思いもよりませんでしたw
残念ながら我が社に営業として動けるのは私しかいないので、雑誌編集部・出版社へのePub活用について印刷会社さんや代理店さんを通じて提案をお願いしているのですが、もしこの事例をみて、うちの雑誌でも取り組んでみたいとか、メーカー側として自社コンテンツの活用方法のひとつとしてePub利用してみたいという方は是非
↑こちらのページをご覧いただき、お問い合わせいただければと思います。