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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

電子書籍のビジネスの勝負所

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 さて、Salesforce.comやGoogle Appsなどエンタープライズなクラウドの領域に注力するのと並行して、相変わらず力を注いでいるのが電子書籍がらみのビジネス。とはいえ、この電子書籍、さまざまな可能性は感じるのだけれど、現状なかなかお金になるビジネスに発展しないのが玉に瑕だ。

 なぜにビジネスになりにくいかというと、電子書籍は紙の印刷物よりも安いというイメージ。さらに、一部大手を除けば、中小、零細の域に含まれてしまいそうな出版社などにとっては、電子書籍化は手間であり、コストをいかに下げられるかという対象になってしまっているところがある。

 もちろん、紙に印刷しないほうが紙代や印刷のコストは削減できるし、郵送費も必要ない。また、倉庫などに在庫するリスクもコストもなければ、返品されたものを処分するコストもないので、たしかに安くはなる。とはいえ、それで価値のほうまで安くなるわけではない。このあたりを租借してくれて、それなりにお金を払ってくれる仕組みというかビジネスの流れができてくれるとありがたいのだが。

 それと、たんにいままで紙だったものを電子書籍に置き換えるというのであれば、安くなるというのも納得できる。が、電子書籍ならではの紙にはない価値もあるわけで、そのあたりをどう対価に変えていけるか。電子書籍を企画、プロデュースする側が、そのメリットをきちんと伝えることはもちろん、その価値による成功事例というものを早く示して行けなければなぁというのを痛感するところだ。

 アフェリエイトを埋め込んだり、読者とのインタラクティブな双方向性を確保できるなどのコンテンツを提供する側にもさまざまなメリットがあり、それらを活用するには電子書籍だけでなく、その後ろというか周りのシステムといかに連携させて新たな価値を生むかというのも、ビジネスとして成り立たせるには重要なポイントになる。まあ、そういったことも含め提案、コンサルティングできる体制がやっと見えてきたというところなので、これからがこのビジネスの勝負所なのかもしれない。

 そんな中で、まだ十分な電子書籍のメリットを発揮したとは言えないけれど、つい最近、ブロガーの佐々木さんと共同で、Jazz Japanという音楽雑誌の電子書籍化のプロジェクトに参画した。是非みなさん見て欲しいと言いたいところだけれど、これ、紙の雑誌に掲載されているパスワードとiPhone/iPadが必要という制約があるので、ちょっともどかしい限りだ。この雑誌の電子化はまだ始まったばかりなので、今後継続して佐々木さんと共に、さまざまな電子書籍ならではのメリットを提案していくつもりだ。

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