広告・宣伝担当者には本物に触れる事にもっとお金や時間を使ってほしい、、、というお話
先日私よりもすこし上の年代の作曲家の方と仕事の話をいろいろした中でインパクトがあったお話をご紹介。
一昔前(パソコンでの音楽制作がここまで普及する以前)は、CM音楽とかアルバムに収録するような楽曲の制作などデモテープの段階であってもスタジオにミュージシャンを集めて、ラフを作りそこから企画を煮詰めていくという流れがある意味必然だった。
ここにPC1台あればそこそこの物が作れて、関係者全員が納得ずくであればスタジオなどを借りずに完パケのデータが作成できる環境が整ってきたことで、手軽さ、コストダウンなど多数のメリットを享受することができるようになってきた。
ただし、パソコンでお手軽に、、、という作業はそこで扱う良質な素材があって初めて可能な話であって、その素材はいろいろなディスカッションや実験的なアプローチなど、さまざまな一見無駄ともいえる作業の積み重ねの中から、ほとんど偶然と言えるような結果として手に入るようなものだったりもする。
CMなどの広告宣伝に多額の費用を投下する企業の担当者や広告代理店の方々がだんだんこの手の制作手法に慣れ親しむことで当然良い面もあるのですが、負の側面として素材活用ばかりで、ほんとうにゼロのところからモノを作り上げる仕事が減っていて自分達の仕事の領域での達成感が得られる仕事が凄く少なくなっている、、、というお話でした。
ここ数日、押井監督や宮崎監督のアニメ作品の制作過程をレポートした番組が連夜放送されていました、そこで紹介されている制作の様子はほんとうに地道な作業の積み重ねです。
押井さんが番組の中で
「アニメの制作の中でやっている9割9分、、、、まあ9割くらいは見ている人にはわからない作業だったりするけれど、それをやっているかやっていないかで作品を見終わった時の印象は確実に違うんだ」
という趣旨のことを仰っていました。
その他スカイウォーカースタジオでの効果音の録音などの様子も紹介されていましたので、当たり前の事ではありますが、作品の中で出てくる絵と音はすべて制作者が意図したものをゼロからの積み上げで出来上がっていて、そこに掛けられている時間・労力は膨大なものである、、、ということをこの手の制作現場をこれまで知ることが無かった方にも知ってもらえる機会としては非常に優れた番組だったと思います。
世の中の大半の仕事はクライアントのビジネスをどう拡大させるのか、もしくはコスト削減をして効率化させるのか、、、が大きなポイントだと思いますが、多くの利益をあげて、それを広告宣伝分野に資本投下できるポジションの企業の広報・宣伝担当者の方には、自社のCMであったり、その他消費者が目にする広告・宣伝物の制作において、前述のようなすでに実績のある人たちだけでなく、これから活躍の場を広げていくような若手だったり、日の目を見ていないような人たちが、何かしら社会的な影響を与える可能性があるものを制作し、それなりの対価が得られるような仕事の場を提供していくことに関してもっとより多くの理解をしていただけるとイイのにな、、、と感じる事が多くあります。
工夫をしながら効率良くモノを作ることも「工夫」が楽しいのですが、そこで得られる報酬も、時間が掛かっていないんだから安くなるでしょ方式で先細りするとか、価格競争しかなくなってくるとクリエイターもどんどん目先の仕事を追うことになってしまいます。
企業も研究開発に投下できる資金を確保するためにはいろいろな工夫をして資金を捻出していると思いますが、
何かを生み出していくにはコストが掛かる、相手が儲けることで自分達にも次にまた何かを生み出してくれる試行錯誤をする「のびしろ」が得られる、、、というところに理解を示してくれる企業広報・宣伝担当者が増えてくれることをとっても期待してしまうのでした。
パソコンとかでバーチャルに楽しむ事もアリですが、この手の仕事に従事している方々(発注する側、される側問わず)にはやはり、絵画、音楽、映像、その他芸術分野だけでなく、人々に何かしらの影響を与えようとしている本物に接するところがまずは大事なんだろうな、、、と思ったりしたのでした。
最後に、会社が儲かるとか上場して調度品とかにすんごいお金掛けたりするような会社さんとかもあったりしますけど、そこでお金使うのにすでに有名な人のものに多額の投資をするのは、確実に儲け度合いを示すには好都合かもしれませんが、この辺においてもチャンスを与えるとか、育成に興味を持つ会社や広告・宣伝担当者が増えてくれるといいんですがね、、、、