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調和の取れた業務の流れを作り上げるには?~今もあれ以上のアイデアに出会ったことが無い

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社会人になってもう早や十数年。人と話していて、自分が何屋さんなのか?を説明するのは非常に難しい。

人によっては「IT屋」だと見てくれるようだが、オルタナティブ・ブログのブロガーさん達と話していると、いかに自分が何も知らないかを思い知らせてくれるし、何より元々きちんと自分でシステム構築を一からやり遂げた、なんてことも無いので、「IT屋」と名乗るというのは、専門でされてきた方々に失礼だと思う。

営業の経験もあり、長い間、営業部門、という所に籍だけは置いてきたから、「営業屋」かと言えばそれも違うのだ、と思う。自慢できる程の実績では無いから自分から言うことは無いが、まぁまずそこそこの成績は残したものの、真の意味できちんとした「営業屋」さんを前にすると、自分の気配りの足りなさや思い切りの無さとつい比較してしまい、落ち込んでしまう。

消去法で選択していく訳では無いのだが、結局の所、自分は「業務組立屋」なのだと思っている。誰かが、何かを、実現したい、と考えた時に、それをどのようにして実現すれば良いのか?、何を選択して、何を捨てるのか?、何を優先するのか?、何を考慮しなくてはいけないのか?を相手と一緒に考えていく・・・ということを自分は今までやってきた訳であり、その結果として、実現のツールがIT化ならそれはそれだし、非IT化の部分に対しても積極的に関わっていきたいと思っている。それはこれからもきっと変わらないだろう。

新たな業務を作る、ということになると、ほぼ大抵のケースではIT化が必然のようについてくる。しかし、そのIT化が本当に必要なのかどうか?を見極められるか?、また、それを投げ掛けるだけではなく、対案が出せるかどうか?が自分の腕の見せ所だと思う。

他の人が作り上げた見事な業務の流れを見つけた時は、感心すると共に自分自身の発想力をさらに高めないと、という自分への発破になる。

1991~2年あたりに、自分は大阪の「新大阪」駅近辺でアルバイトをしていた。昼食時によく行くお店があった。そのお店の名前は喫茶「前衛」。この店を知ったきっかけは路上でチラシをもらったからである。

・・・「前衛」?・・・当時学生の自分には非常にインパクトのある名前だった。お店の名前に「前衛」なんてわざわざ付けるなんて・・・。宗教系?政治系?。当時、後に大問題となるオウム真理教をはじめ、様々な新興宗教とかが話題になっていた頃なので、何か一回行ったら最後、どこかに引き込まれてしまうのでは?まで考えたこともあった。

が、とにかくチラシに書いてあった

「ランチバイキング700円」

という値段が、他のどこの店の普通のランチと比べても画期的に安く、また、コーヒー等もお替わり自由、ということで足を踏み入れると、学生からサラリーマンやらたくさんの人でごった返しており、”普通に”過ごせた。名前にびびってたのは何だったのだろう?というぐらいである。

ちなみに、当時は一般向けのインターネット等も無かった頃。その店がどういう店なのか?なんてことは知る由も無かったが、数年前、ふと思い出して検索すると、こういうお店だった、ということがわかった。

在りし日の前衛倶楽部
http://www5e.biglobe.ne.jp/~elnino/Folder_Associates/Folder_Clubs/Clb_ZenEi.htm

それはさておき。

ランチバイキングとして、うどんやそば、カレー、小鉢もの、だけではなく、ステーキや刺身、にぎり寿司も出されて、常に20種類程度のおかずが700円で食べられるのもびっくりなのだが、このお店にはもう一つ謎があった。

12時までにご来店のお客様、14時以降にご来店のお客様100円引き

これだけ聞けば、今時、どこの居酒屋でもやっている、早めに入ればビール半額等の割引サービスと何も変わらないと思うだろう。

ただこのお店において自分が不思議に思ったのは、

・入り口には、番台風におじさんが一人受付をしているだけ
・名前を書かされる訳ではない
・入った時に伝票を渡される訳では無い
・空いていそうなフロアに振り分けをされるが、そのフロアにそもそも店員さんが居ないこともあり、別に誰か別の人がカウントしている訳でも無さそう
・入ったら基本的に時間制限は無い。居たければずーっとでも居ていられる
・帰りに、その入り口に居たおじさんに誰もが一律に700円を払う
・当然POSレジのようなものは一切無い

というルールだけが存在している中で、どのようにして100円引きを実現するのか?という所だった。

もう正解を思いついた方も居られるかもしれないが、もう少しお付き合い願いたい。

自分は謎だった。100円割引券をくれるだけじゃないの?いやいや、あの番台に居るおじさんが恐ろしく記憶力の良い人で、出てくる時に、「あなたは12時までに来た」とか、「14時以降に来た」とか覚えているのでは?案外、自己申告制度になっているとか?お客さんの良心に任せるとか?

自分の思いついたのはこの程度である。

昼休みの時間が決められたアルバイトだったため、なかなかその割引制度のトリックを暴く、いや、割引制度の恩恵に預かる機会が無いまま、幾度となくそのお店に行き、ずっと謎を抱えたまま過ごしていたが、ある日、割引対象時間に行くことができるチャンスが訪れた。

確か11時55分ぐらいだったと思う。いつものように店に行くと、いつものようにまた番台風の場所におじさんが座っていた。

おじさん:「バイキングご利用ですか?」
自分  :「はい」
おじさん:「じゃあこれ
自分  :「え?

おじさんが自分に渡したものは、100円玉だった。

そう、このお店は割引対象時間に来店すると、先に100円をお客さんに支払っていたのである。

このお店の出口は一つ、後払い式、値段は均一(バイキングで700円)というシステムにおいて、時間を記録することなく、伝票を作成する訳でもなく、割引を実現するには?という問いに対しての見事な解決策だと思う。先に100円を渡しているから、出て行くお客さんからは必ず700円徴収すれば良いのだ。入る時に確実に一人一人に渡しているから、「俺、引いてもらっていない」という人が出てくるはずも無い。

このような柔軟な発想ができるか?というのは、約20年経った今でも自分の永遠のテーマである。

追記1:このお店、今は閉めてしまっているらしい。自分もご無沙汰していたのだから、何も言えない。惜しむらくは夜の部に一度も行かなかったことである。

追記2:2階はより一層、ダンスフロアチックであり、グランドピアノも置いてあったのだが、このランチバイキング時にはそのグランドピアノさえも、にぎり寿司や煮物等の置き場と化しているところに、このお店の割り切りの凄さも感じ得た。

追記3:時間制限は無いが、次から次へとお客さんがいらっしゃるので、ご飯も食べ終わったのに、そこに居座り続ける、という度胸は(特に自分には)無かった。

追記4:今では当たり前にあるバイキングだが、当時は高級系にしかなく、こういった普通のご飯でバイキングにしているところは珍しかった。
ご飯の電子ジャー、カレーの鍋、お店の人用通路、うどんとそばの玉、ゆでる鍋、うどんとそばのつゆの鍋
という配置がされている中、
カレーうどんを作る人が結構居たのにも驚かされた。そうだ、カレーライスかうどんか、という食べ方を強制されている訳では無いのだ、バイキングだから自由に食べれば良いのだ、という発見ができたのもこの頃である。

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