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現役アーティストの目線でこれからの音楽のあり方を考察していきます。社会の様々な課題に対するアイデアを、音楽が持つ可能性と強引にこじつけてコミットします。

「音楽で食う」ということの意味

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「Christmas for ALL」という曲が、12/15にiTunesで配信リリースされました。

これは、全国10アーティストによるコラボレーションソングで、僕も参加させていただいています。おかげさまで、iTunesのR&B/ソウルチャートで7位を獲得しました。ありがとうございます。

PVも公開されていますので、この記事を見ながらでも聴いてやっていただけたら幸いです。

 

▼ヒットチャートの意味

 さて、7位とか言いましたが、人によって反応はまちまちです。別に大したことはないと思うかもしれないし、「すげー!頑張ってるね!」と言ってくれる人もいます。

 ヒットチャートの上位には、なかなか崩せぬ壁があります。しかも、このブログでもしきりに書いてきましたが、チャートのトップテンに入ったところで、正直それだけで生活していくことはできません。

 アーティストや業界の人は、必ずしも「お金にならない=価値がない」と思っているわけではないと思いますが、アイドルが上位を独占している状況も相まって、少なくとも今のヒットチャートに魅力を感じていない人は多いと思います。

 でも、ファンの方の心情はどうなんでしょうね。きっと好きなアーティストが上位にいれば嬉しいし、知名度はまだまだでも応援しているアーティストが上位に上がってきたら、きっと友人にもオススメしやすくなりますよね。

 そういう意味では、逃げちゃダメだ、とも思うわけです。

というか今回の件で、忘れかけていたそういう気持ちを思い出させてもらいました。



メジャーデビューの意味

 きっとどの業界もメディアとの繋がりがあれば露出の機会が増えますから、売上が伸び、予算も追加して、プロモーションプロモーション・・・というのが理想ですよね。

 メジャーデビューという響きには、それらが含まれていると思いますが、今はただメジャーデビューすればいいってわけじゃありません。

かなり大雑把に説明すると、メジャーと言われているのは、日本レコード協会に大金を払って加盟できる財力を持つレコード会社のことです。

そのレコード会社はモノを作るのが役割で、あとは音楽出版社やJASRACなどから売上の分配(著作隣接権と発売権)を待ちます。

(レコード会社は、著作権の規定上、著作権を所有できないので、音楽出版社が必要)

日本では、テレビ局が傘下に音楽出版社を保有することができるので、だいたいそこを目掛けて依頼するとテレビのタイアップなどが決まりやすいんです。

メジャーのレコード会社は基本的に個人とは契約しないので、マネジメントをする音楽事務所に所属するのが第一歩とされています。

 とか、色々めんどくさいから曖昧になってしまいがちですが、システムを把握し分配率のことをしっかり考えると、メジャーを目指すのか、インディーズでやるのか、独立するのか、道筋が見えてくるんじゃないでしょうか。

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▼ファストミュージックは悪か

 ファストファッションというワードは、ファッション界にデフレを巻き起こした悪の権化のように使われることもあります。

ユニクロ、H&M、ZARA、Foever21など、僕も愛用していますが、確かに高いものを買う必要がないと思うようになりましたね。

ただし、靴やバッグや帽子、服飾雑貨については、高級なものでないと長持ちしない印象もあります。

 9年近くアパレル・雑貨の業界にいたので、その業界の売上の厳しさは十分知っているんですが、ファストファッションの登場によって、ブランドや価格帯ごとの役割がはっきりしたように思えます。悪いことばかりではなく、今まで気づかなかった良質な物へ目が向きやすくなったとも思います。

 これは、昨今の音楽にも言えるんじゃないかと思うんです。技術の進歩で誰でも簡単に音楽を作れる時代故に、古き良き音楽の価値観からすると、チープだったり、物足りなく見えるかもしれません。

しかし、そのニーズはきっと古き良き音楽に求める物とは違うポイントです。それはビジュアル、ノリ、雰囲気といった曖昧なものかもしれませんが、今の時代を映し出しているに違いないんです。

 それをファストミュージックと呼ぶとしたら、僕はこのファストミュージックでユニクロ的な存在になることも大いにアリな話だと思います。「ユニクロの服は服じゃない」と言われ続けてきたけど、今では何かと「ユニクロに売ってる◯◯」と耳にするようになりました。生活に必要な存在になっている証拠です。

 誰もが気軽に音楽を手に入れられる時代になっているので、僕は本当はもっと喜ぶべきだと思います。



▼音楽で食うとは

 人は滅多なことがない限り、一度0円になったものに、お金を出しません。この時代、音楽はフリーで手に入ることを前提に考えていくべきですよね。

音楽の販売でお金を稼ぐと考えると、CDや音楽データの売り上げ、放送、貸し出し、その他の使用料といったライセンス料くらい。

体験でお金を稼ぐと考えると、ライブやワークショップ、レッスンもここに入るかな?そんな感じです。

でも音楽は全くのタダになってしまうとしたら?どうしましょうね。

 僕が思うに、すべてに共通する唯一のポイントは「その人である」ということだと思います。要するに実演家、アーティスト自身ですね。

現在の音楽のビジネスモデルは、音楽を売って利益分配するシステムです。でも、アーティストに価値を見出し、その価値にお金を払うのであれば、コピーもできないし、人件費とかの概念から無料なんてありえないです。

 にもかかわらず、バイトの子にはお金を払っているのに、慰問に来るアーティストには無料が当然というスタンスで依頼をされるという話をよく聞きます。お金じゃないよ、でもおかしいでしょ、と。

 つまり、至極当たり前のことばかり言っていますが、音楽で食うということは、人件費または手当を正当にいただくことから始めなければと思っている次第なのです。

 



▼仮説を検証してみる

 と、いうことで、アーティストの社会的価値を高めることを目的として、2015年に、社会貢献型の音楽法人を立ち上げることにしました。形態はNPO法人です。

 なにやら金儲けと社会貢献を結びつけようとしている風に誤解されそうですが、どうか趣旨を雑味なしでご理解いただきたいです。

2014年はフィリピンとの国際交流フェスをやったり、東京の蒲田という町の町おこしの企画、福島や仙台や神奈川の社会福祉系の方との交流など経験させていただきました。遡れば、2012年の全国技能五輪大会の公式サポートソングや、2013年の赤い羽根募金とのコラボ楽曲のリリースなどもしていました。

こういう取り組みに、手応えというか、やりがいを感じていますし、「人の役に立ちたい」「必要とされたい」という寂しがりでシンプルな思いもあり、必然的に設立を考えました。

 僕はクラブやライブハウスも嫌いではないですが、ショッピングモールや野外での出演数にはちょっとした自信があるくらい積極的に取り組んできました。ストリートライブは一度もやってないんですけどね。各地でいただく反応や言葉は本当に新鮮で、時代やその地域の課題を反映しているので、その地に足を運ぶ重要性にも気づかされました。

 今の若者や子供達がカッコイイと思える音楽をやり、アーティストを職業として胸を張って志せる時代が来たら最高だと思います。

冒頭のヒットチャートの話からも逃げず、社会に音楽で貢献していくスタイルに挑戦したいと思います。

詳細は追ってアップしていきますので、ぜひ、応援のほどよろしくお願いします。

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