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現役アーティストの目線でこれからの音楽のあり方を考察していきます。社会の様々な課題に対するアイデアを、音楽が持つ可能性と強引にこじつけてコミットします。

【前編】アーティストが国際交流フェスやってみた

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 8/23に、フィリピンのマニラで、アーティストによる国際交流フェス「Artist Market」を開催しました。

 「アーティストによる」という点が非常に重要かつ大きな挑戦で、この規模の企画をアーティスト主体で開催できたことは、音楽とアーティストの社会的な存在意義をほんの少しでも提示できたんじゃないかと思っています。

 今回は、この企画の過程をレポート的に前後編に分けてお送りします。前編ではいかにして開催に至ったか、後編では直面した課題と今後の展望について、綴ってみようと思います。

 まずは前編です。どうぞお付き合いください。 

▼イベント概要

artist market poster.png 日本とフィリピンのアーティストによる、国を越えたアートフェス「Artist Market」です。日本から12人、フィリピンから7人のアーティストが参加しました。今回が初となる若手プロアーティストの手による国際交流フェスティバルです。
会場は、フィリピンの首都マニラにある400人収容の本格エンターテイメントホールTIU劇場で、「アートx音楽」「日本xフィリピン」の2部構成のコラボレーションショーを展開。
国を越え、夢を叶えるアートと音楽の素晴らしさを伝えるべく、現地の教育機関を通じて、未来ある子供達も招待しました。

 扉を開けると400人収容の立派なホール。敷地内にはレコーディングスタジオ、カフェ、屋外イベントスペースが完備される豪華な空間を初めて見た時、鳥肌が止まりませんでした。

 

▼音楽で出来ることを音楽家が実現させる

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 劇場オーナーは元ジャーナリストの日本人で、フィリピンのスモーキーマウンテンで目にした貧困層の子供の現状にショックを受けたのをきっかけに、Creative Image Foundationという貧困層向けの教育機関を運営されています。

 この企画は、音楽で社会貢献する方法を模索する僕の思いと、子供に夢を与え手に職をつけさせたいという劇場オーナーの思いがリンクして実現しました。

誰でも立てるステージではない、と子供たちに思わせてほしい。そこに立つことを目標にするような夢のあるステージにしてほしい。」という想いを託して頂き、5月からという超過密日程の中で企画がスタートしました。

 まず思いついたのは、仙台のアーティストと行った東日本大震災復興支援プロジェクト「Share Happiness」の国際版でした。フィリピンでもレイテ島などが天災に見舞われたばかりなので、同じ島国である日本との相互支援プロジェクトはどうだろう、と。

しかし、Share Happinessプロジェクトの国内での募金状況は芳しくありませんでした。そもそもの主旨が、音楽で関係性を結んだアーティストによる地域活性化にフォーカスしており、募金をメインに打ち出してはいなかったのです。これを国際版にして金銭面での結果を残し、社会に訴えかけるには人手・コスト両面でも現状では難しいことは明らかでした。何より、フィリピンに縁もゆかりもないアーティストが突発的にやるプロジェクトということ自体に、どうしても違和感がありました。

 そこで、両国のプロアーティストが主体的に一つの国際的なフェスを手掛ける、というプランにしました。まずはアーティストが国を越えた繋がりを持ち、意識を共有した上で次のステップを目指すことにしたのです。僕ら日本人アーティストにとっても、フィリピン人アーティストにとっても夢のあるプロジェクトが始まりました。

 

▼企画の裏テーマ「やれんじゃねーの?!サマソニ!」

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 この企画のベースは、国内で開催実績がある「Artist Market」という企画で、アーティスト自らが音楽の楽しさや価値を公共の場で発信する試みです。

アーティストの中には、ライブハウスで働いたり、制作過程で機材を扱う人もいるので、ゆくゆくは企画から運営までアーティストが行う、大規模なフェスの開催も可能だと考えています。

応募・投票の「出れんの?!サマソニ?!」ではなく、「やれんのじゃねーの?!サマソニ!」くらいの決意で、志のあるアーティストが自らフェスをやってしまってもいいんじゃないでしょうか。まぁ本当にできるかどうかは置いといて。

そのためには、集客面やブッキングに至るまで血の通った関係をアーティスト同士が築く必要があります。

今回の目的は欲張らず、ただやろうと思ったことを確実に実現すること。マーケティングや波及性など、お金に関わることを気にするのはあとで、まずはモデルケースを作ることに集中しました。

 

▼3曲のコラボ曲の制作

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 海外では、素人もプロも関係無くAwesome!と思わせた者が勝ります。

この企画において、「アーティストによる」という点が重要なのは既述の通りですが、もう一つ「プロである」という点も重要だと考えました。

それを示す手段として、パフォーマンスだけではなく、3曲のオリジナルコラボ楽曲を作ることにしました。

機材や制作のインフラが行き届いていない東南アジアにおいて、楽曲を形にすることは、分かりやすいプロの証になります。

 今回制作した3曲には作詞家、作曲家、アレンジャー、エンジニア、オールジャパンの体制で臨みました。発音や録音環境、通信環境、ディレクションなど難しいことや反省点は多々ありましたが、とにもかくにも形にしたことで改善点をはっきり実感できたことが大きな収穫です。

 制作費として計上すると、どんなに抑えても数十万円規模のプロジェクトですが、僕の周りや各アーティストのブレーンのお力をお借りして実現できました。

 後日フィリピンの劇場の方でPVを制作してYoutubeへアップしてくれますので、お楽しみに。

 

▼出演者は「闘える」アーティスト

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 フィリピンへは往復で5万円で4時間もあれば行けますが、自費での遠征になるため、有志を募っての開催になりました。個別にオファーしたわけではなく、一度だけ僕のFacebook上でコンセプトとざっくりした概要のみを公開して賛同者を募り、それに反応してくれたアーティストに声をかけさせて頂きました。精力的に活動しながら進むべき道を模索したり、常にアンテナを張っているアーティストには、この一度の投稿で十分届くと思ったのです。

大変申し訳ないのですが、「旅費は出るか」「ギャラはどうなるか」「企画の詳細が詰まってから検討したい」「事務所に確認してから」「イベント出演のみなら」といった内容を含むお問い合わせを頂いたアーティストさんは、お断りさせて頂きました。

こういった前例のない企画に取り組むにはスピード感が命ですし、参加者それぞれが自分なりの仮説や意義を持って自発的に取り組めなければ、たちまち頓挫してしまうからです。

面白いことに、モチベーションが高い人は、自分の情報発信の仕方も上手で、うまくセルフプロデュースが出来ているように感じます。

 こうして日本からは発信力がありチャンスや情報に敏感で、優先順位を自分で決められる「闘えるアーティスト」が集まり、フィリピンからは、会場のTIU劇場に縁がありテレビ番組にも出演する人気若手アーティストをご紹介頂きました

▼きっかけはライブペインティング

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 昨年、東京でライブペインティングとコラボして歌うという趣旨のイベントで、ペインターの伊倉真理恵さんと出会いました。このイベントの仕掛け人の一人が、国内外でベンチャー企業と交流のある方で、フィリピンで200人程度の規模でビジネス交流会「野武士会」をされている掛川さんという方でした。伊倉さんも掛川さんも、CNE1というフィリピンの語学学校に通われていたこともあり、現在も現地にシェアハウスを持たれています。

 そして今年の3月、フィリピンのマニラで開催された野武士会にて歌わせて頂いた際、フィリピン在住のペインター山形敦子さんのご紹介で、今回の舞台となる「TIUシアター」のオーナー瓜生さんが聴きに来てくださっていました。

この繋がりのおかげで、今回の企画が実現できたのです。もちろんイベント当日はライブペイントも行われ、劇場の外壁は日本人ペインターのアートで埋め尽くされています。すごいですよこの迫力。

▼まとめ

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 こうしてめでたく開催が出来たんですが、もちろんすんなり実現したはずもなく・・・。

とにかく、予算も時間も人手も前例もないことを始めてしまったからには、ミッション・インポッシブルなわけで。できない、間に合わない、という言葉だけは口にしないようにしてきました。やりきって形にしなければゼロと同じです。
 今回、企画・運営・司会・出演をさせて頂きましたが、まだまだ力不足を感じました。「アーティストだけで」と言いつつも、もちろん音楽関係者や劇場スタッフ、現地の友人のみなさんのお力添えがあってのこと。どこまで自分たちでできて、どこから力を借りたいかも今回明確になりました。

 ということで、次回は後編。反省点や課題、アーティストの未来の話をしていきたいと思っています。

 本日もこじつけ失礼しました。ではでは。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

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