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現役アーティストの目線でこれからの音楽のあり方を考察していきます。社会の様々な課題に対するアイデアを、音楽が持つ可能性と強引にこじつけてコミットします。

アーティスト至上主義の到来

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 音楽ビジネスは、まさに今、転換期を迎えています。
 僕はシンガーソングライターとして活動する傍ら、企業や自治体のイベントを企画・制作する音楽プランニングブランド「ウマミタス」を運営しています。メジャー神話にあやかるなら、元メジャーアーティストと言っても許される立場でもあります。
 このブログでは、徹底した現役アーティスト目線で、新しい音楽ビジネスのあり方について語っていこうと思っています。

▼音楽ビジネスの仕組み
 一般的にアーティストは、レコード会社、プロダクション、音楽出版社の3つの会社と契約をします。レコード会社は隣接権と発売権、音楽出版社は著作権を扱います。プロダクションは、アーティストのスケジュール管理やブッキングを行います。
 具体的な数字でCDの売上の分配率を挙げるとこうなります。

CD売上げ分配グラフ.png

 ちなみに印税額は販売枚数ではなく出荷枚数(生産された数)で計算され、出荷枚数の2割は返品控除として計算の対象から除かれます。
 原盤印税は制作費を出した所が受け取るので、レコード会社かプロダクションが受け取ります。3000円のCDの場合、アーティスト印税収入は1枚あたり約30円。著作権印税は以下のように分配されるので、作詞作曲をした場合はプラス約67円となり、最大でも97円の収入です。

【著作権印税の分配】

  1. 売上(3000円x0.8=2400円)の6%を著作権管理団体が徴収 → 144円
  2. その6%から、手数料として6%が著作権管理団体に → 8.64円
  3. その残り(144円-8.64円=135.36円)の50%が音楽出版社に → 67.68円
  4. その残りが作詞・作曲家に(基本的に50%ずつ) → 33.84円

 ※作家事務所に登録している作家の場合、30%をマネジメント料として徴収される
 ※配信やFM、TV、有線などからも著作権料を回収する

  例えば月収30万円を得たい場合は、3000円のCDを3000枚以上売らねばならないのですね。ちなみに、iTunesの著作権印税は、1曲あたり7%程度発生し、そのうち11%(CDより高い!)が著作権管理団体へ。
 ストリーミングのSpottifyやPandora Radioの収益については相当長くややこしくなるので、こちらの榎本さんの記事をどうぞ。

 →SpotifyとPandoraが普及するとレーベルやアーティストが2倍、儲かる理由(Musicman-NET)


▼メジャー神話の終焉
 では、今どれだけCDが売れるのかというと、オリコンの2014年4月時点で、オリコンの週間シングルCD売上げ30位の枚数は1478枚となり、オリコン史上初めて1500枚を割りました。100位に至っては、354枚です。

 →CDシングル売上がさらに縮小...オリコン週間30位が史上初の1500枚割れ、50位で900枚割れ、100位は僅か354枚 : The Natsu Style - オリコン&音楽ランキング分析

 いわゆるメジャーと言われているのは、日本レコード協会に加盟しているレコード会社のことです。
 日本レコード協会のHPによると、入会条件は正味出荷金額5億円以上の法人であること、入会金300万円、年会費300~600万円というもので、これを払える会社ということは桁違いのセールスがあるんじゃないだろうか? と期待してしまいますよね。
 有力な音楽出版社やプロダクションとの繋がりがあることから、プロモーションの規模が大きくなる可能性はあります。が、既述のオリコンの売上げを見ると、それが既に神話と化していることが分かります。
 アーティストは有名になるのと同じくらい音楽活動を続けたいし、そのためには収入が必要です。その観点で考えると、3000円のCDを3000枚売るためにいろいろな物を犠牲にするより、100枚売って30万円を直接手にする仕組みの方がいいと考える人も多いのではないでしょうか。
 配信は個人でもできますし、プロモーションはソーシャルメディア等を駆使すればある程度の規模までは安価にできる時代です。インディーズや個人で活動しているアーティストのほとんどはこの現実を知っており、はじめから独立アーティストの道を選ぶ人もいるのです。
 ただ言っておきたいのは、メジャーが全てダメだ、アホだ、という話ではありません。音楽の現場の人たちの情熱は凄まじく、四六時中アーティストのことを考えて素晴らしい仕事をされてる方を何人か知っています。作家、ディレクター、プロデューサー。立場は違えど彼らに共通して感じられるのは、アーティストを心から愛し、最高の作品を作ろうとする姿勢です。
 僕が言いたいのは、そういうマインドこそ、音楽業界の原点であってほしいということです。

▼「IT×音楽」の時代が示すマルチな人材の必要性
 海外では、日本より何年も前から音楽の売上げに陰りが出始め、大手CDストアは姿を消しました。
 配信販売のiTunesに続き、Pandora RadioやSpotifyなどのサブスクリプションやストリーミングサービスが勃興し、流通についてもTunecoreなど一般ユーザーが直接インターネットサービスに配信できるサービスが定番となりました。プロモーションもSNSの普及によって、デジタルマーケティングの時代へ突入しています。
 これまでは数百~数千万円を投資し、それを数倍にして回収するモデルだったのが、最少コストで最大の効果を上げ、回転率を上げて稼いでいく仕組みに変化したのです。こうして、規模を問わなければミニマムな体制で(なんなら1人で)全方位的な音楽活動を展開できる時代になったのです。
 最近では、自宅や安価で素早くレコーディングできる環境も増えてきました。
 そうなると、コストで一番大きいのは人件費なので、打開策として1人何役もできるマルチなスキルを持つ人材を探します。そういう人材がいれば、スピード、質、コストなど全てを解決できるので、これからの時代は複数のスキルを持つ人が重宝されると思います。
 作る人の所に然るべきお金が落ちる仕組みを作るためには、こういった現場レベルの努力も必要だと思います。
 また、電話が携帯に、本や日記がブログに、メールがLINEになったのと同じように、音楽はCDからデータになりました。こだわりの物を数年かけて作るのも、デモレベルの物を即座に売るのも、悪ではありません。誰のために、どういった形で、どのレベルにこだわるのか、そういった自由も含めて楽しむ時代なのかもしれません。

▼だからアーティスト至上主義
 東京の渋谷では、実力を認め合うアーティスト同士がコミュニティを作り、小さくてもつぎつぎと新しい形のイベントやコラボレーションが生まれています。そこにライブハウスやクラブも加わって、強力なライブ文化が育ちつつあります。
 既存の音楽業界に見切りをつけたと言わんばかりに、上質なエンターテイメントを自分たちがやろうという気運が芽生えているのです。そこには曖昧な役割が入る余地はなく、プロダクション、レコード会社、音楽出版社を、いちパートナーとして選ぶ対象に捉え直しつつあります。
 変えるべきはまずアーティストの意識であり、アーティスト自らが価値を証明していくべきなのです。ぜひ身近なライブハウスに足を運んで、あなたの推しアーティストを見つけちゃってください。
 次の時代のプロデューサーは、この記事を読んでくださっている、音楽業界以外の方かもしれません。

***<参考>***

http://newsphere.jp/business/20140320-2/

http://www.forbes.com/sites/timworstall/2013/07/21/theres-an-awful-lot-of-nonsense-being-talked-about-spotify-royalties/

http://www.sanpou-s.net/school-music/special/01/

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1246052747

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 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
 初回なので張り切っちゃいましたが、次回からはもう少しユルい感じも書いてみようと思います。

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