事例記事の構成をそろそろ見直すべきか?
ITに強いビジネスライターの森川滋之です。
今年の仕事もあと1本で終了。明日か明後日には脱稿しそうです。急に仕事が飛び込んでこなければ、2週間半ぐらいダラダラ酒を英気を養い、2020年の新しい取り組みについて考えることができそうです。ありがたいことです。
さてIT企業のPR手段としては定番の導入事例記事(以下、事例記事)。まあITに限らずBtoB企業の場合、顧客の口コミを集めにくいので、事例記事というのはなかなか有効です。
ところが事例記事の離脱率が最近高いようで、これはそろそろ見直しの時期なのかなと思うのであります。
某ICT企業の悩み
某大手ICT企業から、代理店経由だが、最近仕事をいただくようになった。
A社は老舗なのだが、事例記事によるPRについてはあまりノウハウがない。それ以前にSEOもあまりノウハウがない。PVがかなり少ないと言う。紺屋の白袴といったところか。
しかし法人のWebマーケ部門が本気でSEOをやれば、すぐにPVは増えることだろう。それよりも問題なのは、せっかく見に来てくれたユーザーがすぐに帰ってしまうこと。つまり離脱率が高いのである。
僕の名誉のために言っておくと、A社向けにはまだ1本しか記事を書いていないし、その記事も公開したばかりで結果の分析もまだである。つまり僕の記事が悪くて離脱率が高いわけではない。むしろそういうこともあって、ライターを変えるために代理店を変えたのである。
だが僕も離脱率を下げる自信があるわけではない。
A社では、ごく一般的な事例記事のテンプレートに沿っているのだが、もはやそのテンプレートが機能していないのではないかと思うからだ。
一般的な事例記事のテンプレートとは
一般的な導入事例記事のテンプレートとは、以下のようなものである。企業によって多少前後したりするが、大きくは変わらない。
0. リード
0.1. 導入企業の担当者と企業ロゴ・建物などが映っている大きめの写真
0.2. 事例のキャッチコピー
0.3. リード文
1. イントロダクション
1.1. 導入した企業の紹介
1.2. 導入した企業での導入商品の使われ方
1.3. 導入効果
2. 導入経緯
2.1. 導入前の課題
2.2. 商品の選定基準
2.3. 提供会社を知った経緯
2.4. 提供会社に決めた理由
3. まとめ
3.1. 商品および提供会社に対する評価
3.2. 導入を考えている人へのアドバイス
3.3. 提供会社への今後の期待
以上である。
つかみがつかみになっていない?
さて僕が思うのは、この構成はもはや飽きられているのではないかということだ。どうもスピード感がない気がする。
この構成において、0と1はいわゆる「つかみ」になる。
特に0の重要性は高い。
8割だか9割だか忘れたが、ある調査では、ほとんどの人が雑誌記事を読むか読まないかを、冒頭の写真と大見出しを見て決めるのだそうだ。
事例記事でも同様で0の重要性は極めて高いのだが、ここがおざなりになっている企業は多い。特に事例のキャッチコピーがない企業もあり、何をかいわんやである。リード文もただつけただけという感じの企業が多い。
ここでかなり離脱しているものと考えられる。したがって逆に、ここまでを改善すれば離脱率はかなり下がる。
だが僕が問題だと思うのは、1である。特に「1.1.導入した企業の紹介」である。せっかく事例取材に協力いただいたので、その企業のPRにもなればという気持ちは分かる。だが、これをいきなり読みたい人はどれだけいるのだろうか?
僕なら読み飛ばす。事例を一通り読み終えてから、付録的にあるのなら、どれどれと読むかもしれない。そこまで読んでいるのなら、導入した企業への感情移入もあり得るからだ。しかし、いきなりは必要ないと思う。PRのつもりが逆効果になるかもしれない。
と考える広報・マーケは本当に少ないようだ。テレビCMの9割がつまらないのはそのせいだろう。
つかみが良ければ、離脱率は当然上がる。ここまででモタモタしないことだ。
導入効果の箇条書きも無意味では?
つかみを良くしようと、導入効果を箇条書きにして冒頭に載せる企業も多いが、これもあまり意味があるとは思えない。
というのは、人間、実は図とか表とか箇条書きを読むのがあまり得意じゃないからである。図や表が力を発揮するのは、言語だけではうまく説明できないときである。逆にいえば、そのような時にしか図表は使わない方がいいのだ。
箇条書きは図に近いところがある。例えばこの記事でも、事例記事の構成は箇条書き的に書いた。これを文章で書かれるとイメージが湧かないが、上の図であれば、リード+3章構成なのだなということが一目で分かる。
だが「導入前の課題/導入後の効果」などを箇条書きで書かれると、それを読むのはけっこう面倒になる。図の中にたくさんの文字があるイメージになるからだ。
つかみとしての効果はないと思うのだ。むしろまとめにあった方がいい。
A社の事例記事の離脱率が高いのは、これが冒頭にあるからだと実は思っている。
あるいは読むのも面倒だが、逆にこれで分かった気になって、離脱するユーザーもいるのかもしれない。
全体に長すぎる
つかみでモタモタしているので、内容も同様にモタモタしている。
そもそも文字数が多い。
法人向けのコンテンツなので8割以上がPCから来ているそうだが、しかし彼らも普段はスマホに親しんでいる。スマホユーザーはだいたい1,200文字を超えると離脱すると聞く(※)。
※出所不明。正確な統計をご存知の方は是非ご教示ください
だが、だいたいの事例記事は2,500~3,000文字、中には4,000文字以上というのもある。パンフレットなら、それでも読む人はいそうだが、Webではどうだろうか。
せいぜいリードを除き、本文を1,500文字以内にまとめる方が良さそうに思う。
それだとライターの文字単価が高くなり過ぎて嫌なのだろうか?(笑)
しかしライターとしてはダラダラ書く方がずっと楽で、1,500文字ぐらいにまとめる方が難しい。文字単価がいくらなんてけちくさいことを言わず、難しい仕事に高い報酬を払ってほしいと思う次第だ。
本稿では、つかみについて詳しく言及したが、全体に構成を見直すべき時期が来たと思う。
(などと言いながら、この文章2,300文字を超えています・・・。)
最後に少しだけ宣伝(読み飛ばして構いません)
ただ、この手のテンプレートは先輩社員から引き継がれていたりして、なかなか変更が難しい。提案しても却下される可能性が極めて高い。
もし一緒に新しい事例構成を考えたいという企業様があれば、ぜひお声がけください。その際にはコンサル料を見積に入れさせていただきますが。
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