【書評】生きづらさを感じている全ての人に読んでほしい本
「内向型専門コンサルタント」渡瀬謙さんから新著『「内向型の自分を変えたい」と思ったら読む本』を頂戴したので、ご紹介したいと思います。
その前に、渡瀬さん、肩書きが変ってますけど・・・。「サイレントセールストレーナー」だったのでは?
まあ、書籍のターゲティングというのはとても難しく、店舗や中小企業であればターゲットは絞ったほうがいいと言われているのに対して、書籍は大量消費財と同様、できるだけ広げたほうがいいとされているような気がします。
小説などだとそれこそターゲティングさえしないですよね。ビジネス書であれば、著者の専門性の範囲内でできる限り広げないと、企画が通らないというのが現実です。
良い悪いは別として、出版もマスビジネスなので、絞り込みすぎるのは怖いのですね。逆に絞りたいのであれば、自費出版にするか(今は電子書籍があるので昔より敷居が低くなりました)、ネットで情報商材として販売するほうがいいでしょう(売り方さえ知っていれば、そのほうが実入りもいいですし)。
ということで、渡瀬さん(というより発売元の大和出版かも)としては、このたび「内向型でかつ営業職の人」から「内向型で自分の性格に悩んでいる人」にまでターゲットを広げたということなのでしょう。
書籍が売れるようになってからターゲットを広げるというのは(渡瀬さんにとってはたしか26冊めの本になります)、おそらく珍しいことのように思うのですが(あくまで個人的イメージですが)、僕としてはもっと広げてもいいかなと思いました。
タイトルにも書きましたが、「生きづらさを感じている全ての人」に読んでほしいと思うからです。
●6つのステップで結局性格を変えない
さて、この本は「内向型の性格を外向型に直す」という本ではありません。
つまり、パーティーでひとりぼっちになりがちな人が、社交的になれるという本ではありません。
「社交的になんてならなくてもいいよ」という、ある意味乱暴な本です。
しかし、社交的になれる本より、数百倍価値のある本だと思います。人生が楽になりますから。
タイトルはウソではないのです。ちょっと巧妙なだけです。「内向型の自分を変えたい」と思ったら本当に読めばいいのです。そして「内向型」のままでいいと分かります。
でも、内向型の人は渡瀬さんもそうだったらしいですが、自分を変えたくて仕方がないんですね。それに対しても、渡瀬さんはいろいろと身も蓋もないことを書いていますが、それはできれば本書を読んでください。
この本には内向型の人が自分を変えたいと思ったときに、そんなことをしなくてもいいという分かるまでの6つのステップが書いてあります。
普通は、あるべき理想の自分に変るためのステップが書いてあるものですが、変らなくていいと分かるまでのステップが書いてあるのです。
簡単に言えば、自己肯定のための本です。だけど、多くの自己肯定本は自己肯定ができればどれだけいいことがあるかしか書いていません。言ってみれば、精神論の本です。
それはそれで元気が出るかもしれませんが、僕の経験では読み終わったときだけですね、元気になれるのは。
本書の場合は、懇切丁寧にどうやれば自己肯定できるようになるか、その方法論を渡瀬さん自身の数々の恥ずかしいエピソードを交えて書いているので、本当に元気になれる人が多いのではないでしょうか。
それでも元気になれない人は、僕も通っていたので全然恥ずかしくありませんから、クリニックに通いましょう。
●そんな人は内向型だけではない
で、僕が読んでいる途中から思ったのは、生きづらいのは何も内向型の人だけではないということでした。
僕もパーティーでは壁の花になりがちだし、人見知りですが、しかし自分が内向型だと思うことはあまりありません。人見知りで上がり症だとは思いますが、主張することは主張するほうですし、そもそも人目が気になるのは意識が外に向いているわけですから、むしろ外向型の特徴とも言えます(これについてはこちらの記事がわかりやすい)。
いずれにしろ、僕にとっては自分が内向的なのか外向的なのかなどどっちでもいいことです。しかし、クリニックに通っていたと書いた通り、つい最近までずっと生きづらさを感じていました。
だから、よく分かるのです。この本は、内向型かどうかなど関係なく、生きづらさを感じている全ての人に通用する本だと。
僕自身、本書の6つのステップを知りませんでしたが、ほぼこれと同じ段階を経て(行きつ戻りつしましたけれど)、ようやく50歳を過ぎて、人生捨てたものじゃないと幸せを感じられるようになりました。
ただ、書店にも渡瀬さんにも「内向型専門家」というブランディングがあるので、本人には書けないことでしょう。なので、僕が代わりに書いた次第です。
最後にもう一度、全ての生きづらい人に本書を強くお薦めします。
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2009年版では諸事情で入らなかったもう1つの物語を加え、解説編を一から書き直しました。
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