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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

【自分軸ブランディング】ブランド構築・展開と自分軸

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前回は、ブランド評価と自分軸というテーマで話をした。

今回は、ブランド構築・展開と自分軸というテーマでお話しする(再掲下図参照)。

2014060401.png

●ブランド構築・展開と自分軸

ブランディング活動チェックリスト(以下、チェックリスト)を見ると、ブランド構築・展開の項目は3個ある。

その3個と自分軸の関係を示したのが、下図である。

2014070201.png▲クリックすると拡大図

項目はすべて、ブランドの構築・展開の考え方となっている。

●ブランド構築・展開を考える手順

ブランド構築・展開を考える手順は以下の通りだ。いつものとおりだが、念のために書いておく。

  1. 大前提として、自分軸を考える
  2. チェックリストの№24~26の順に、自分軸の当該項目と突き合わせながら、(図では省略しているが)チェックリストの「現状評価と改善策」の欄を埋めていく
  3. 全く埋まらない欄があれば、ブランディング活動が行われていないということのなので、方針を決め、行動計画を立てる
  4. 埋めることはできたが不満足な欄があれば、同様に方針を決め、行動計画を立てる
  5. 行動して結果が出れば、チェックリストに反映し、自分軸にフィードバックすべきことがあればする

●会社全体か事業別か製品カテゴリ別か製品別か

まず、考えるべきことはブランドの階層である。会社全体をブランドとするのか、事業別なのか、製品カテゴリ別なのか、それとも製品別なのかということである。

具体例は、上図の表内にあるので参照されたい。

自分軸も対象階層で作成する。会社全体の自分軸を「会社軸」、事業の自分軸を「事業軸」、製品カテゴリまたは製品の自分軸を「商品軸」などと呼ぶこともある(企業に提案する際に「自分軸」では伝わりづらい傾向があるため)。

名前は違っても、「誰に・何を・なぜ」提供しているのかを言語化するということについては変わらない。対象が変わっても同じ方法論が使えるのが「自分軸」の利点である。

●会社で1つか複数か

次に考えるのはブランド利用の方針である。

コーポレート・ブランドの下に複数の事業・製品等を展開するのか、社内に複数のブランドを持つのかということである。

ブランド階層と紛らわしいが、前項は対象とするブランドがどの階層のものなのかを意識するということであり、この項では、会社に存在するブランドは1つなのか複数なのかという話である。

マスター・ブランド戦略の代表例はナイキであろう。同社ではシューズ、ウェア、アクセサリ類すべてをナイキ・ブランドで統一している。

この戦略のメリットは、マーケティング資源(人・モノ・金・情報など)を集中投下できるため効率的であること。逆にデメリットは1つのブランドに依存ことによりリスクや成長限界があるということ。

マルチ・ブランド戦略の代表例はネスレであろう。「Good Food, Good Life」という企業スローガンは統一しつつも、「ネスカフェ」や「キットカット」など多数のブランドを展開している。

ネスレのHPを見たら、「えっ? これってネスレ製品なの?」と思うような商品が見つかる人が多いのではないだろうか。

P&GやLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)なども同様の企業である。

この戦略のメリットは、同一カテゴリで複数ブランドを展開することでシェアが取れることと、リスク分散することで売上の安定性を享受できること。逆にデメリットは、マーケティング資源に分散による非効率だ。

つまり、マスター・ブランド戦略とマルチ・ブランド戦略のメリット・デメリットは表裏一体になっているということである。

そこで、出てくるのが折衷案だ。サブ・ブランド戦略と呼ばれるもので、マスター・ブランドと個別ブランドを組み合わせる。「アサヒ・スーパードライ」や「Yahoo!BB」などが代表例だ。

マスター・ブランドのお墨付きで個別ブランドの特徴をアピールすることができる(つまり効率的)が、ブランド体系が複雑になるため管理が難しく、一貫性が保てなくおそれもある。

小規模な企業はマスター・ブランド戦略、大企業はマルチ・ブランド戦略またはサブ・ブランド戦略という傾向がありそうだが、基本的には企業のステージや市場の特性などを考慮して、ケース・バイ・ケースで決めていくべきものである。

私がコンサルティングしている小規模な製造業では、製品カテゴリが2種類しかないのにも関わらずサブ・ブランド戦略を展開している。そうするのが、会社の歴史と市場特性に一番ふさわしいからなのだ。

●ブランドの拡張を考える

プランドは拡張することができる。ただし、拡張の是非については慎重に考えなければならない。ブランド拡張で失敗すると、せっかく築き上げてきたブランドの価値に傷がつくからだ。

ブランド拡張の是非は、下記のポイントで検討する。

  • そのブランドは、新製品(カテゴリ)にも効果的で、マイナス面はないか
  • その新製品(カテゴリ)は、そのブランドを補強するか、マイナス面はないか
  • そのブランド拡張により、他の製品カテゴリへのブランド拡張機会を阻害しないか

ブランドについても「ブランド軸」を作る必要があるようだ。上記のようなことは、ブランド軸と相談して決めなければならない。

ブランド拡張のパターンは7種類ある。上図の表に具体的なパターンを挙げている。

それぞれ具体例を挙げよう(表中の丸数字は機種依存文字につき本文中ではカッコ数字にした)。

(1)「形態の拡張」は、袋麺からカップ麺への拡張のようなことである。

(2)「独自の風味・原料・成分を利用」は、カルプス・ゼリーやエビアンの化粧水などが分かりやすい例である。

(3)「使用シーン、カテゴリを軸とした拡張」は、たとえばゴルフウェアのメーカーが、ゴルフクラブやゴルフシューズに拡張するというようなことである。

(4)「同一顧客への拡張」は、銀行のクレジット・カードや自動車ディーラーの保険販売などが当てはまる。

(5)「専門技術・知識を転用」は、ホンダが芝刈り機を製造販売するようなこと。

(6)「便益・属性・特徴を活用」は、スポーツジムがスポーツドリンクやサプリメントを販売するようなこと。

(7)「人名などのイメージから拡張」は、飲食店などに多い。周富徳の店などが分かりやすい例だろう。人名そのものでなく、特定の人物を彷彿とさせる例もある。それは、大勝軒だ。大勝軒はフランチャイズではなく、店によって味の違いもあるが、創業者の山岸一雄氏の教えを守るラーメン職人の店だというブランディングがなされている。

上記7項目は、あくまでブランド拡張の方向性のパターンである。ブランド拡張の検討の際には役に立つが、ブランド拡張をするかどうか自体が重要な検討項目であることを忘れず、慎重に検討して欲しい。

なお、以上の項目は「自分軸」を考える際に、いくつも考慮されているはずだ。なので、「自分軸」(企業軸、事業軸、商品軸など)をよく見れば、ブランド拡張のヒントが出てくるはずだ。

次回は、「育成」と自分軸の関係について書く。

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