【次世代PR試論】広告の仕様書を作る(9)
僕独自の方法論で、企業に対して広告の仕様書(オリエンシート)作成を支援している。その方法論について述べる9回目。今回が最終回だ。
オリエンシートを作成するにあたっては、関係者間で「商品軸」(「誰に」・「何を」・「なぜ」提供しているのかを言語化したもの)を共有することが大切だと僕は主張している。
前回は、オリエンシートの内容について述べた。
ポイントを伝えれば提案してくれる広告代理店相手なら前回のもので十分なことが多いが、制作会社であればもう少し詳細な指示が必要になることもある。
今回は、どういう指示をすべきかについて述べる。
●スクリプトを添付する
具体的には、内容詳細としてスクリプトを添付する。以前、ある会社で作成を支援したスクリプトが下図である。
▲製作会社に依頼する場合のスクリプト
3分間の販促ビデオのスクリプトである。例によって内容は見えないようにしたが、細かさは伝わるだろう。
製作会社にお願いするときには、このぐらい細かいものを提示しないとやり取りが多くなり、返って時間が掛かるのである。
表の欄は左から、「項目」、「図版で表現する内容」、「スクリプト」となっている。
問題は、「項目」にあたる部分だ。上から順に、「誘導」、「つかみ」、「物語」、「効用」、「後押し」、「行動促進」となっている。これらはどういう意味だろうか?
●AIDCAの法則をベースに考える
これは、実はAIDCA(アイドカ)の法則というものをベースにしている。人によってはAIDMAの法則というものを知っているかもしれない。これら2つは若干違うが、ほぼ一緒と言っていい。
ここでは、AIDCAの法則について説明する。
以下、Wikipediaからの引用である。
消費者が消費行動を行うまでの心理的な過程を表した消費者行動分析モデルの名称。消費者が企業や商品の広告を見てから、Attention(注目)→Interest(興味)→Desire(欲望)→Conviction(確信)→Action(購買行動)にいたるまでの広告原則の頭文字をとった略称であり、「AIDCAモデル」や「AIDCAの法則」などとよばれることもある。
分かりやすく図解すると下図のようになる。
▲AIDCAの法則
DMでもWebサイトの広告でも、また販促ビデオでもこの順序で訴求すると効果が高いと言われている。活用しない手はない。
●スクリプトの順番への落とし込み
ただ、僕の経験ではAIDCAの法則はそのままでは使いにくい。
スクリプトの実物をイメージしたものに落としこむと使い勝手がよくなる。それが、前述の「誘導」、「つかみ」、「物語」、「効用」、「後押し」、「行動促進」の6ステップなのだ。僕は、これを「広告スクリプトの6ステップ」と呼んでいる。
AIDCAと広告スクリプトの6ステップを対照させたものが下図である。
これを参考にして、スクリプトを作成して欲しい。
●広告スクリプトの6ステップの効果
僕は、DMもチラシもWebサイトの広告もすべて広告スクリプトの6ステップをベースに書いている。
これは実際にかなりの効果がある。
以前、ある商工会議所で広告スクリプトの6ステップに関するセミナーを開催した。セミナーの後、ある会社の方から、前回のキャンペーンのDMの効果が期待より低かったので見て欲しいという相談があった。
そこで、広告スクリプトの6ステップにそって見直し、次回はこのように書くといいというアドバイスをした。その間20分ぐらい。その後、メールを2往復したが、僕がトータルで使った時間は1時間足らずだった。
その後、同じ会社からお礼と結果を知らせるメールが来た。その結果が下の表である。
問い合わせ率が3倍になり、成約率に至っては15倍になっている。また、問い合わせた会社は、問い合わせた段階で既に採用を決めていたことも分かる(営業マンはかなり楽だったはずだ)。
6ステップを採用すると、Webサイトの見直しも簡単になる。
アクセス数が少ないなら「誘導」に問題がある(SEOも誘導の一部だ)。アクセスはそこそこあるのだが、すぐにページから立ち去っているのなら「つかみ」の問題である。「物語」に問題があるのか「効用」に問題があるのかは、滞留時間でだいたい推測できる。結構滞留しているのにコンバージョンに結びつかないのであれば「後押し」と「行動促進」に見直すべき箇所がある。
効果もあり、見直しもし易い広告スクリプトの6ステップを是非活用していただきたい。
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