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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

【次世代PR試論】広告の仕様書を作る(4)

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僕独自の方法論で、企業に対して広告の仕様書(オリエンシート)作成を支援している。その方法論について述べる4回目。

オリエンシートを作成するにあたっては、関係者間で「商品軸」(「誰に」・「何を」・「なぜ」提供しているのかを言語化したもの)を共有することが大切だと僕は主張している。

「誰に」・「何を」・「なぜ」の3つの中でも特に重要なのは、「なぜ」である。前回も説明したとおり、「なぜ」を先に聞けば「誰に」と「何を」は比較的簡単に言語化できるのだが、「誰に」や「何を」を先に聞くとなかなか出てこない(現時点では、この一文の意味が良くわからない人もいるかもしれないが、次回以降分かるだろう)。

商品を売っている理由(なぜ)がはっきりしないと、売る相手(誰に)も提供している価値(何を)もはっきりと見えてこないのである。

そこで、今回は「なぜ」を導き出す観点と、深堀りする方法について、やや詳しく説明する。

● 「なぜ」を導き出す観点は大きく4つ

(「商品軸」と同じフォーマットである)「自分軸」の発見支援を始めた頃は、ただ「なぜ、それをやり始めたのですか?」と聞くぐらいしか能がなかったのだが、何度か支援を繰り返すうちに、大きく4つの観点があることがわかってきた(下図、クリックすると拡大図)。

2014041601.png「志」、「能」、「人」、「生」が大きな観点であり、その中に「なぜ」を導き出すヒントになるキーワードが並んでいる。

やり始めた頃の仮説としては、「志」――すなわち理念や使命感、あるいは夢が根底にあるのだろうと思っていた。もちろん一定数いるのだが、意外と少なかったのである。

聞いていると、挫折や苦労などの強烈な経験が根底にある人が多いことがわかった(「生き様」の意味で「生」としている)。

だが、それだけではないこともわかってきた。実は「志」や「生」だけでは、僕自身のことが説明できなかったからだ。自己分析してわかったことは、僕は得意なことにしがみついている(要するに、これでダメならどうしようもないからやっている)ということだった。こういう人も意外と多い。そこで「能」(「能力」のこと)も観点としてあることがわかった。

そのどれにも当てはまらない人が後に出てきた。その人が言うには、恩人の影響だというのである。そこで「人」という観点を付け加えた。

2010年には4つの大きな観点が出揃い、それ以降は増えていないというのが現状である(各観点のキーワードはその後増えたが、現在は増やしていない)。

「なぜ、それをやり始めたのですか?」とただ聞くのではなかなか答えは出てこないのだが、上図のような観点とキーワードを用意すると、どれかには引っかかってくるので導き出し易くなる。

なお、こういうキーワードを列挙すると全部に答えないといけないと思う人が必ずいる。そんなことはもちろんなく、強く引っかかるものが1つでもあれば十分である。

●3段階で深堀りする

「なぜ、その商品を売っているのですか?」と突然聞かれても、ほとんどの人は即答できない。無意識に刻み込まれているからだろう。なので、前項の観点とキーワードを見せて数分かけて列挙してもらっても、表面的な答えしか出てこないのが普通である。

これも以前は、トヨタに倣って、「なぜを3回繰り返しましょう」と言っていただけだったのだが、あるとき「自分軸」を発見するためのワークショップに参加したコンサルタント氏が、こんなふうに深堀りしたらどうでしょう?と提案してくださったのが下図である。

2014041602.png

具体例を示そう。

介護施設の経営支援をしているコンサルタントが、「なぜ」として「両親を入居させたくないような介護施設が多いから」と答えたとしよう。十分な理由だが、同じような人は多いのでコンサルタントとしての差別化は難しい。第一この言葉が介護施設の経営者に響くかといえば、反発のほうが多いように思われる。

そこで、次はそう思うに至った体験・事例などを聞く。「どういう経験からそう思ったのでしょうか?」と。

すると、「ある介護施設で経営者と話をしていたときに、老人に対する差別的な発言を聞く機会があった。しかも、経営者は何の気なしに言ったことで悪気はなかった」というような経験談が出てくる。

さらに畳み掛ける。「その発言を聞いた時の気持ち(思い)はどうでしたか?」と。

今度は、「一瞬、ムッとしたけれど、実は自分にも同じような差別的な気持ちがあることのではないかと思った」というような答えが出てくる。

もう少しだけ深堀りする。「そのことと、最初の『両親を入居させたくない施設が多すぎる』とを関連付けて、ご自身の真意を説明できますか?」と。

「実は、自分にも両親に介護が必要になったら厄介だなあという気持ちが強いんだと分かった。自分の両親でもそうなんだから、ましてや他人の親を本当にきちっと介護してくれるのか不安だ。それが、両親を入居させたくない施設が多いという発言と結びついたんだと思う。なので、『家族の本音を理解し、家族を安心させられる介護施設を作りたい』というのが自分がこの仕事をしている理由(なぜ)だと思う」

やろうと思えば、まだまだ深堀りできるかもしれないが、これ以上はカウンセリングの領域かもしれない。

以上は、実際の言語化支援の事例をいくつかミックスした架空の例だが、このコンサルタントの顧客である介護施設の経営者からみたら、深堀りした後に出てきた言葉のほうが響くものになっていると思う。

今回は、「なぜ」を導き出し、さらにそれを深堀りする方法についてお話しした。何度も強調するが「なぜ」こそが最も重要である。ブランディングの要でもあるし(人は存在理由に共感したときにブランドとして認める)、またビジネスを続けるためのモチベーションの源泉でもあるからだ。

次回は、「何を」の考え方について説明する。「何を」は提供価値であり、それを説明できている会社や営業マンは少ない。次回を読めば、それが説明できるようになるだろう。

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