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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

元気のない業界はCMも変・・・と思いきや

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明治安田生命に何の恨みもないし、同社に対して悪口をいうつもりもない(最後まで読んでもらえれば明らかだが)。今朝たまたまCMを見ていて、変だなあと思ったので、今回はこのCMについて考察してみたい。

http://www.meijiyasuda.co.jp/profile/event/cm_history/first/

どういう制作意図なのかは、明治安田生命のHPに書いてある。引用する。

当社が「日本初の生命保険会社」であることを紹介しながら、創業から130年をこえた今でも、初心を忘れずお客さまに安心をお届けする、というメッセージを込めた新作CMです。本CMには、江角マキコさんに出演いただいています。

確かに、まったくこの通りのCMである。

しかし、このCMは誰に宛てたものなのか?

 

CMの宛先は、顧客層とは限らない。

仮に、上のCMが顧客層に宛てたものだとしたら、変だと思わないだろうか?

「日本初の生命保険会社」だから明治安田生命を選ぶ顧客って、そんなにいるのだろうか?

僕が、このCMを見た感想は、「へぇ~、知らなかった。教えてくれてありがとう。以上!」であった。

もちろん、いま契約している保険を解約して、明治安田生命に乗り換えようとは露程も思わなかった。

それどころか、これだけのことを言うために、江角マキコさんのようないかにもギャラの高そうなタレントを使う必要はないだろうとさえ思った。

江角さんのギャラが保険料に影響を及ぼすほどとまでは思わないが、それでもこの会社は経費節減をして、少しでも保険料を安くする努力をしているのか疑問に感じたのだった。

まあ、僕のように何でも意地悪く勘ぐる人は少ないのかもしれないが、どちらかというと顧客層にはネガティブな印象を(たぶん無意識に)与えるCMだといえる。

※実は、最後にどんでん返しがあります。

 

にCMの宛先として考えられるのは、販売員(代理店含む)・株主・社員およびその家族・就活生およびその家族などである。

販売員向けのCMはコカコーラなどが得意とする。コカコーラは顧客向けにも展開しつつ、実は常に代理店(彼らの場合はボトラー)のことを考えている。ボトラーが売りやすいようにCMを作るのだ。さすがに「世界有数のマーケティング会社」と言われるだけのことはある。

株主宛ては、株価などが下がってきているときに、企業のイメージアップを図るためにCMを打つケース。これ単独というのは珍しいが、株価も上がればという下心が見えるCMはいくつもある。

社員およびその家族というのは、業態がBtoBで世間での認知度が低い会社が打つCMだ。この手の会社の社員は自社の認知度が低いことに不満を感じていることが多い。社員の家族も同様だ。そんなことで社員のモチベーションが下がることもある。そこで社員のモチベーションを上げるために打つCMがあるのだ(実は、僕が昔いた会社がこの目的で深夜枠のCMと電車の広告を出したことがある。社員には好評だった)。

就活生およびその家族というのもある。これは社員およびその家族と似ている。就活生の家族、特に親は会社の認知度や信頼度、つまり安心感にこだわる。ならCMを打っている会社なら安心感があるだろうということだ。

そもそもCMというのは、会社や商品のイメージと認知度の向上のために打つもので、宛先が単独であることは少ない。ただ、宛先ごとに目的は別なのだから、あまり全方位的に作ってしまうと、メッセージがぼやけてしまう。

メッセージがぼやけると効果が薄れるばかりか、変なCMだなあという印象を残すことになる。

 

治安田生命のCMは、明確に顧客向けと書いてある。 しかし、個人客の立場としての僕はイマイチ感心しなかった。

では、販売員向けかというと、顧客が感心しないものを販売員が利用できるわけがない。保険の外交員が来て、「うちは日本一古い生命保険会社なんですよ」と言われても、「はあ、そうですか」としか言いようがない。

どうしてこんなCMを作るのだろうか。

最初に立てた仮説は、元気のない業界では広告代理店の担当者も不優秀なので、こんなCMを作るのだろうということだった。

僕の周囲だけで考えると、内資系の生保会社というのは一部のネット企業以外では契約者が少ない。僕の周囲ではプルデンシャルが圧倒的に強い。それで、内資系の生保会社は元気がないと思い込んでいた。

しかし、(内資系の)生保業界は本当に元気のない業界なのか?

 

調べてみた。

元気があるかどうかの指標はいろいろあるだろうけど、一番敏感なのは学生だ。

学生が近視眼的なのは昔からで、僕らが就活をしていたころの花形が証券会社と銀行だったことでも分かる。ただその分、いま現在元気のある業界については彼らは敏感だ。

そこで、2012年の「大学生が選んだ就職人気企業ランキング」というのを調べてみた。データとしては2次的(本来は財務諸表等が1次的であるという意味で)であるが、それなりに企業を調べている学生たちの一つの結論である。情報としては価値があるだろう。

  • 文系男子:日本生命11(14、12)、第一生命19(14、12)、住友生命80(―、―)、明治安田生命89(145、133)
  • 理系男子:日本生命49(51、33)、第一生命86(33、43)
  • 文系女子:日本生命16(11、12)、第一生命19(6、19)、住友生命49(―、―)、明治安田生命79(―、―)
  • 理系女子:なし

文系男子は150位まで、理系男子、文系女子は100位まで、理系女子は50位までのランキングだ。社名の横の数字は2012年度の順位。カッコ内は左から2011年、2010年の順位だ。"―"はランク外だったことを表す。

一部上場企業だけでも数千社、日本国内には数百万社の企業があるわけだから、このランキングをみる限りでは、内資系の生命保険会社に元気がないというのは妥当ではない。

特筆すべきは住友生命と明治安田生命がランク外(文系男子については100位以内という観点で)だったのが、今年になってランクインしたこと。生保各社は、学生の評価では元気を取り戻しつつある、ということなのだろう。

 

生の感覚が正確なのか、もうちょっとだけ検討してみよう。

どのカテゴリでも圧倒的に強いのは総合商社だ。これは僕のイメージとも合う。

業界ではなく、メルクマーク的な会社で見てみよう。資生堂だ。同社は、中国では唯一といってもいいほど大成功している企業で、業績もよい。イメージもいいし、元気もありそうだ。

順位を見てみよう。文系男子89位、理系男子99位、文系女子15位、理系女子3位。

どのカテゴリでもランクインしているが、特徴的なのは男子と女子との温度差だ。資生堂は積極的に女性を活用する会社だということで知られている。そのあたりが順位に如実に表れている。特に研究開発を志望する理系女子にはたまらない会社だろう。

少ない事例で恐縮だが、学生たちが極めて常識的な知識と感覚で就職先を希望していることだけは分かる。

 

治安田生命が2012年になって、学生人気ランキングに登場していることをみると、実は就活生およびその家族に向けてCMを打っているということなのだろうか?

その可能性もあるが、もっとありそうな結論がある。ここまで考えて、あることを思い出した。

先日、プルデンシャル生命の僕の担当者K氏と話す機会があった。このことだ。

そのときにアリコがガンガンCMを打っている件について、率直に聞いてみた。K氏は以前、契約したときに、某保険会社がCMを打ちまくっていることに対して、結局宣伝広告費が保険料に反映されるのだから、あの価格にもからくりがあるんだと説明してくれた。

アリコも高齢者向けに安い保険料で提供している。当然、アリコ批判になると思いきや、K氏はあっさりとこういった。

「アリコさんは、法人営業に力を入れているので、CMをバンバン打つのはかまわないんです」

目からウロコだった。

明治安田生命の実際の売上比率が分からなかったので断定はできないが、HPをみる限り、法人営業にかなり力を入れているのが分かる。

なるほど、理念だとか信用だとかそういう話は、法人相手のほうが響く話だ。きちっとしたタレントを使うのも、法人に向けているということの表れなのだろう。

 

ずれにしろ、元気のない業界だからCMもイマイチなどという結論よりはマシだ。

何が言いたいのか分からない記事になってしまったが、教訓はある。

簡単に結論を出す前に、もう一歩ぐらいは考えよう。多少はマシな意見になるから。

 

記事に共感した方は、ぜひ下記のサイトにもお立ち寄りください。

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▼マーケティングで最も大事なことは自分軸を持つこと。
 Who、What、Whyの3Wメソッドで、行き詰まりからの起死回生を!

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▼自社の考えをインタビューして文書化してほしい方は

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