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ランボーじゃないけど(体系化の弊害〜続き)

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 放っておくと悪い事の方を考えがちで、今回も弊害の続きです。弊害といっても、体系を勉強するのは無意味だとか言いたいわけではありません。むしろ強力に真逆ですので、そこのところはよろしくお願いします。

 

ランボーじゃないけど

 ランボーという映画がありました。ひとことでいうと元ベトナム戦争従軍兵の主役が、不当な仕打ちを受け、森の中でひとりひとり返り討ちにするといった様なストーリーです。

 シルベスター・スタローン演じる主役のランボーが、軍人のころに学んだテクニックで土遁の術(どとんのじゅつ)よろしく、土にまみれて隠れていたりとか、あり得ないと思われる様な状況が展開されていました。まさにヒーローものです。
 自衛隊の高校でも当然、偽装の授業(!)がありました。隣のクラスと合同で、校庭のある所まで連れて行かれました。「ここから、ここの範囲に◯◯3曹(下士官)が隠れているから見つけてみろ!」。皆の前には芝生が広がっていて、前方10メートルぐらいの所に高さ3メートルぐらい、幹の直径20センチぐらいの植木が50センチ間隔ぐらいで横に並んでます。だいたい、幅20メートルぐらいの範囲です。
 約60人で、5分ぐらい、目を皿の様にして見渡したのですが、見つかりません。「おおーい、イイぞォ!」。
 みんなの真正面、たった10メートル程前にある木の一部がスッと横に動いて、こちらに向かってゆっくりと歩いて来ました...。

 「ランボーみたいなのは映画だ」ぐらいに思って、最初から出来るとは思っていなかった私には本当にすごいインパクトでした。「こんな事が本当にあるんだ...。スゲーぞ!空挺レンジャー!」

 

バブルがはじけて

 もう一つは退職後。バブルがはじけてすぐ、大卒が新隊員として多く自衛隊に入隊する様になった、というドキュメンタリーを見た記憶があります。私も経験しましたが、作業内容からすると、とんでもないギチギチの時間設定で、次の集合時間が告げられ、遅れた人数掛ける10回なり、20回なり、いずれにしても100回ぐらいは「必ず」腕立て伏せになります(あと、「かがみ跳躍」というスクワットも)。そこで大卒の新入隊員が驚くのは、上司あるいは先生にあたる指導役も一緒に腕立て伏せをする事だったそうです。そこでスイッチが入った、ということでした。そんな教育、受けた事ないと。
 私が3年生のころの区隊長(担任の先生、幹部)も、富士の演習場で一晩かけてやる35キロの行軍訓練の際に、「一度も座らなかった」と、約5年後に同期3人で熊本まで訪問した際、初めて聞かされました。「えっ、そんな筈は」と思って帰宅後、写真を見ると、休憩時間にヘタばっている私の横で、写真撮影のためにしゃがんでいるだけでした。あいかわらず、しゃがんでるのに不自然なぐらい背筋がビシッと伸びてるし...。


多くの体系やプロセスが関係することによる諦観、無関心、縦割り感覚

 マネジャーは現場の何から何迄、できなきゃダメだと言いたい訳ではありません。そんな事が不可能なのは、できない事だらけの自分を見ても分かります。
 ただ、私がIT業界に入って強く感じたのは、「最初からできない事と諦めて、目指してないことが沢山ある」「実はたいして勉強や研究もしていない(特にマネジメントの領域)」ということです。
 これには、膨大な客先のドキュメントや、膨大な体系群、生み出さなければならないドキュメントなど、プロジェクトをビジネスとして進めて行くにあたっての対象となる情報量の多さ、複雑さが影響していると思います。圧倒されて「とにかく何か、はじめろ!」と、よく見るとパニックの一種、ただの「恐怖への反応(Reaction, Reactive )」となっています。これは、プロジェクト・マネジャーらの実現すべき「Proactive」とは全く逆です。

「せめて、可能な限り Win-Win を目指そうよ」「デス・マーチを当たり前のように言うなよ」と言いたいだけです。

 

マネジメント不在のための便利な言葉たち

 そのためにいろいろと標語?も用意されています。代表的なのは「仕様変更は当たり前」です。「仕様変更ゼロを本当に実現するとして、やり方は本当に今の延長線上なのだろうか?全く違ったりするのではないだろうか?」などと本気で考え、じっくり議論した事はどれだけあるでしょうか?

 ほかにも「専門用語でしか表現できないし、勉強しないお客さんには分かりっこない」「お客さんに怒られるのが仕事」「お客さん、仕様書、見てくれないからな」「仕様凍結期限」「お客さんは決めてくれないから」「いまさらそれは聞けない」「顧客の現場を見に行くなんて言ったら怒られる」「開発の現場を知ってしまったら、ビシっと言えなくなるから見ない」「グチや文句を言わずに言われた通りにやるのが仕事」「お客さんにあまり要求をしゃべらせると、仕様が膨らむから、しゃべらせるな」「お客さんに予算1億円あたり1メートルのドキュメントといわれた。予算○十億円なんで、マネジャーとして、トラック一杯のドキュメントを作らせたぞ!(だれがそのドキュメントをキチンと読んで、根拠をもって承認するんでしょう。そんなことをやめさせるのがマネジメントだと思います。何を自慢してるんだろう?国を代表する大企業がいったい何をやってるんだ?)」等々。
 他にもスゴいのがあった記憶はあるのですが、思い出せなくてヨカッタです。

 すぐには根拠を持って反論できない、しにくい、安易な表現。

 これらのフレーズが新入社員の頃から繰り返されながら組み上がった脳内プログラムで、いったいどれだけの人々がヒドイ思いをしてきたのだろう? と思います。

 何か問題が起こってしまってから、気持ちの切り替えのためにこういった言葉を使うのまで、全くダメとは言いませんが、特にマネジメント側が最初からこういった気持ちでいるのは、残念極まりないと思っています。でも、そう思い込まざるを得ないような「組織のムード」や「現象の見え方」があるのも事実です。ひとり一人がどうにもできない気持ちになるのもよく分かります。

 不思議な事に、これらの標語の効果は、大抵、仕様策定者から上位になればなる程、仕事が楽になる効果を生んでいて、結果とんでもない目に合うのは、具体的にモノ作りをしているSE(仕様策定者など)、プログラマや、システム納品後、稼動し続けて顧客にとっての具体的な利益を提供しつづけるために保守・運用を行う役割など、「直接、価値を生み出している」人達です。ですので、変えられる権限を持った人々は、辛い思いをする事が比較的少ないため、実感、切実感もなく、なかなか改善される気配がありませんでした。

長くなりますので、今回はこんな所で...  次回につづきます。

最後にご案内:

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今回の記事のような事も含め、実務者、マネジメント相互に有意義な議論ができればと思っています。

 

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