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体系化によるメリット

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 前回、「プロジェクトが上手くいかない組織では、自分達の仕事の業務分析ができていない」といった事を書かせていただきました。


 私はこのあたりに、体系化のメリットがあると感じています。これまで、自分達の仕事についての業務分析ができていなかったがために本来重要な価値があったにもか かわらず、しっかりと評価されていなかった仕事やそれらに携わる人々をより正しく評価できる様になるのではないでしょうか。


表現が実現する評価

  ITIL,BABOK,PMBOKと、「基本の存在」を誰もが意識出来るような体系化が実現されてきて、さらに言えば、それらの資格をもっていたり、知っ ていることによって、より大きな利益が見込めるということになって、やっと「急がば回る対象」の「手がかり」をイメージしやすくなったということです。


  共通の言葉で表現出来るようになったことで、より良く価値を理解したり、さらにそれを伝える事が大幅にしやすくなりますし、顧客や上位マネジメント層な ど、聞く側にも問題意識を(以前よりは)持っていただけるようになっていると思います。これはとても大きな事です。


存在の認識

 つい最近まで、プロジェク ト・マネジャーという役割はIT業界に存在しておらず、「SE」という「技術者の仕事の一部」となっていましたし、BAにあたる業務分析も一般に「極めて重要」と言われているにもかかわらず、現実には「下請けSEが初期段階に、ざっくりとやる仕事」のように言われながら進めざるを得ない状況でした。そのままでうまく行かないことはわかっていましたので、評価されないことは承知の上で、言ってみれば隠れてこれらPM、BA活動の品質向上の努力を重ねてきました。最終結果さえうまく行けば、全てOKになりますが、先が見えない中で、一般的でない活動の承認を得たりすることがとても難しい事は、特に大組織や官庁の方々はおわかりいただけると思います。これは実作業者としては非常に辛いものでした。

 「重要」という「頭での理解」はあるにもかかわらず、だからといって目の前 のプロジェクトをうまく行かせる具体的な行動を考え出す事には繋がらずに、実は「ざっくり仕事」になっているという状態です。この手のギャップがある状況 を「急がば回れができていない」と捉えていて、何よりも問題なのは、その状況に気づいていない(ふりをしている?)と言うところだと思っていました。


ITILのエリアに対する評価

  ITILの分野も同様です。
 ITILの具体的な内容については、私はこれから勉強するので何とも言えないのですが、全般的に「保守・運用」業務 は、その重要性に比べ、あまり評価されてこなかった様に感じます。

 25年ほど前、私がIT業界に入って読んだ本の最初の数冊の中に「保守運用をイメージした上でのシステム開発」という主旨の書籍は、しっかりと存在していました。
 私のこれまでの開発では、結局この実務タイミング(運用・保守サービス段階)で どれだけの利益を顧客に提供できるかが重要である、というイメージでやってきたつもりです(自分が直接実施しないにしても、この段階に責任をもつという意識)。そうすると「急がば回る」対象は必然として山ほど挙がってくるわけです(主として業務分析、要件定義までの活動)。


交渉ツールとしての体系

 でも、何かしら一般に知られたメジャーなトピックなどがあって、それに照らし合わせての説明などをしない限り、いくらうまく説明できたとしても、「言っている事はわかるが、一般的ではない」「専門書にはない」「理屈を並べるな、仕事はそうじゃない」「顧客を説得できない (説得できないだろうから、伝える事もしない)」などといった理由で極めて実現しにくいことが、まま、ありました。

 ITIL,BABOK,PMBOKなどが広く知られることで(しかも個々の記述の根拠までは明示されていないことで)、とてもうまく「プロとして見た、あるべき姿」を表現し、実現するのためのツールとなっていると思っています。


最後に、

 最後に、やはり一定以上メジャーとなった体系には、それ相応の理由があると感じています。わりとよく安易に「あれは理論、実際には使えない」といったような事を耳にすることがありますが、もしかするとそれはアプローチが逆かも知れません。

「目の前のプロジェクトへの最適化を考え抜いた結果が、PMBOKに照らし合わせてスマートに説明できるか」というアプローチで使うという事かと思います。

プロジェクトと捉えられる複雑な活動を対象に、汎用の記述から、自動的に目の前の問題に対する答えが得られるわけはありません。汎用の記述で、何かその通りにやったらうまく行くという類のものは存在するはずがないと思っています。

 いずれにしても私にとってはPMBOKは「うまく行った実務経験の塊からのアウトプット」に見えます。

 次回は、体系化の弊害の方を考えてみたいと思います。

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