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Digital×PR 大航海時代

西方への旅 - 中国デジタル見聞録

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 *上海万博にて中国館を遠く望む

西方への旅

8月上旬、盛夏のさなかに中国にでかけて来ました。会社の研修として、中国にある弊社の子会社やパートナー企業の若手のメンバーが集い、デジタル・コミュニケーションについて議論をするという目的での訪中です。

今回は、この中国研修の見聞録として、中国のデジタル環境や事例などをご紹介します。

中国では弊社子会社のプラップチャイナがオフィスを構える上海と北京に1週間ほど滞在しました。
ご想像の通り、この時期の中国はとにかく暑い! 東京もかなり暑いので気温としては近いのですが、大陸的というか昼間に外を出歩くと服が熱くなる。まさに焼けるような暑さです。


中国のデジタル・マーケティング事例

まず、上海にて弊社のパートナーであるOgilvy PRのオフィスを訪問し、セミナー形式で事例の交換会を行いました。

Ogilvy PRは360° Digital Influenceというチームで世界的にデジタル・マーケティングを推進しています。(プラップジャパンでもそのノウハウを共有しています)上海Digital InfluenceチームのMichael Darraghさんのプレゼンテーションでは、中国におけるDigital Influenceチームのユニークな事例を聞くことができました。

その中からいくつかの事例や取り組みを紹介します。

■VANSのスケートスクール
Tudou.comという動画共有サイトで、初心者向けにスケートボードの教則ビデオを展開した事例

■デジタル・プレスキット
メディア向けの資料をUSBメモリやウェブサイトで展開するサービス

■インフルエンサー・リレーションズ
有力なブロガー(VIPブロガー)とのリレーションを構築。リスト化して管理している。
Top20のブロガーのトラフィックを合わせると1000万ものPV数になる。
万博のスニーク・プレビューなどブロガーにとって有益なネタを提供したり、カラオケ(中国ではKTVといいます)で親睦を深めるといった地道な活動です。

■Goodyear(タイヤメーカー)のバイラルCM
こちらは広告ですが、飛行船を使ったOOH(屋外広告)で有名なGoodyear社が、中国の女性ドライバーにリーチするために展開したコマーシャルです。内容は、運転しながら会話をする女性がふたり。まるで男性のことを話しているかのような内容なのですが、実はタイヤの話をしている、というオチがあります。このCMが話題になって、「男もタイヤも強くて安全なものがいい」という言説が生まれたそうです(笑)

CMは中国最大の動画サイトYouku.comなどにアップロードされており、こちらで見ることができます。


他に、チリワインのデジタル・キャンペーン事例、商品名を明かさずに行った化粧品のサンプリング事例を紹介いただきました。

この他にもいろいろな事例がASIA DIGITAL MAPというアジア地域のデジタル・マーケティング情報を集めたDigital Influenceチームのブログに掲載されていますので、ぜひ見てみてください。
   

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*Ogilvy Shinghaiのオフィスの壁面には、かのデイヴィッド・オグルヴィさんの肖像が描かれていました。ありがたや。

中国のインターネット事情

先にインターネットを活用した事例を紹介しましたが、中国のインターネット環境は日本と大きく違います。

ミーティングの際にお話をしてくださったパートナー企業の講義内容から簡潔に中国のインターネット環境についてまとめてみます。

中国のインターネットユーザー数は4億人超、世界一のユーザー数です。しかも普及率自体はまだ30%程度とユーザー数はこれからも伸びていくと考えられます。
ちなみに日本のインターネットユーザー数は9,408万人で普及率は78%ですので、中国の規模はとても大きいです。(総務省調査より)

また、情報収集の際には新聞やTVよりもインターネットの検索で情報収集をすることが一般的です。そのほかにインターネットの用途として、音楽のダウンロードや動画の視聴、ゲームの視聴などが若者を中心に多くなっており、またコミュニケーション手段としてMSNメッセンジャーなどのインスタントメッセンジャー(IM)が広く使われています。ちなみに、Googleが中国から撤退したことは記憶に新しいですが、中国では検索エンジンというと百度(Baidu)が圧倒的なシェア(9割と言われています)をもっています。中国ではECの市場も高い成長率で推移しているものの、市場の8割近くがTaobaoに占められており、独自のEC展開は難しい状況にあるようです。


中国のデジタルな特徴

中国のインターネット事情やデジタル・マーケティングの事例について知ることでわかった中国のデジタル環境の特徴は以下のようにまとめられます。

1. とにかく人が多い
圧倒的に多くの人がデジタルな生活をしているのが中国です

2. アクセス統制が敷かれているが、類似のサービスでカバー
インターネットの万里の長城ことGreat Firewallによるアクセス規制のためにTwitterもfacebookもYouTubeもUstreamも中国国内ではアクセスできません。しかし、類似のサービスが存在しているようで、その中で独自にコミュニケーションが行われている状況です。(まだ中継系のサービスはなさそうでしたが…)

3. 面白いものはすぐにシェアされる
口コミの力は人の数の多さに比例するのか、中国では変わった動画や写真があるとすぐにシェアされ、話題になるといいます。たとえばノキアのバイラルCMなどは日本でも話題になり、その成功例だといわれています。ユーザーにいかに面白いと思ってもらえるか、参加を促せるかがデジタル・マーケターにとってはカギとなります。面白いと思ってもらえなければ…圧倒的な情報の流量の中で、それはないも同然です。


日本と全く違うというわけではありませんが、中国は独自の環境下で多くのユーザーがデジタル生活を送っていることがわかりました。
*マーケティング的にはペイパーポストが看過されているなど倫理観として欧米や日本とはことなる状況があるようですが…

このような環境で、中国ではデジタル・コミュニケーションはもはや必須になっています。
技術的な観点ではほかの国、今までのコミュニケーションと異なる部分は多くありますが、デジタルとはいえそこにいるのは「人」です。コミュニケーションのプロとして、ユーザーや環境を理解し、どのようにコミュニケーションをデザインするのかが重要なのだということを改めて認識するきっかけとなりました。

(ちょっと宣伝です…)ちなみに弊社でも、中国における企業のマーケティング支援の施策として、バイドゥのリスティング広告とPRを組み合わせてご提供するサービスや、中国からの訪日予定者向けにクーポンを発行し、集客と購買傾向の分析をするサービスなどを提供しています。実は。(詳しくはこちらをご覧ください)2月の春節や10月初旬の国慶節といった中国の大型連休の際には、ビザ発行緩和の影響もあってか多くの中国人観光客が日本にやってきてお買い物をするという現象が起きているようです。これらのサービスによって日本に来た後にアプローチするだけではなく、中国で旅行の計画を立てている人にもアプローチすることが可能になります。これは中国に現地法人を持っている弊社ならではのサービスだなぁと個人的にも思っています(笑)


補遺 – 万博と水には気をつけろ

研修では缶詰のミーティングだけではなく、中国文化を理解するためにも上海万博や上海環球金融中心、万里の長城に行ってきました。上海万博では、待たずに入ることができるという前触れで中国館に行ったのですが…。灼熱の中、2時間ほど並んで待ちました。列に並んでいてもどんどん抜かれていきました。日本では考えられないことですが、郷に入らば…ですね。中国館の中では4面スクリーンでの映画やIt’s a small world的なアトラクションなどがあり、中国の発展を紹介するような内容でした。個人的な感想としては「中国はこんなに発展して豊かになりました。国民の皆さん、幸せですよね!」というメッセージを感じ、どちらかといえば中国国民に向けた内容だったのではないかと思います。期待していたコリドーの壁面いっぱいのデジタル絵巻は大変美しくてよかったのですが、いかんせん並んだ疲労のため館内をくまなくみる気力がなく、さっと流して見るにとどまってしまいました。他の巨大赤ちゃんロボットで有名なスペイン館など、他のパビリオンも見てみたかったのですが、休憩しては少し散歩とお買いものをしているうちに集合時間に。チャンスがあればもう一度行ってもいいかなと思います。また、万博後はおなかを壊す男性陣が多数。一説によれば水が合わなかったのではないかと言われていますが真実は闇の中。中国に行く際にはミネラルウォーターであっても煮沸してから飲む、歯磨きなど口に入れる水も同じく注意する、できれば海外ブランドの水(たとえばevian。しかし価格は日本円で1.5L@400円と高いです)を飲むなど水にはとにかく気を付けようと心に誓ったのでした。

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*中国館にて。どう見ても大混雑。

 

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