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【ベーシック・インカム】で世の中はこう変わる

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ベーシックインカムが導入されると何が変わるでしょうか。まず、期待されるメリットについて考えます。

企業の国際競争力

先に説明したように、法人税の廃止によって利益の内部留保がやりやすくなるだけではありません。

企業が支払う従業員の給与は、ベーシックインカムの分だけ減ります。例えば、現在月給35万の社員がいるとします。月額20万円のベーシックインカムが導入されると、企業が払う給与は15万になります。人件費の安い国で月給15万円の従業員を雇うのと企業の負担は同じです。国内で雇用してもコスト面で海外と十分競争できる可能性が出てきます。

現在の制度では、商品等を輸出する企業が輸出取引を行った場合に、消費税が還付されます。50%の消費税を全額還付にはならないかもしれませんが、輸出が有利になると期待されます。

ネットカフェ難民問題・シングルマザーや高齢者の住宅問題

生きている限り無条件にもらえるベーシックインカムがあれば、家賃を滞納しそうだから部屋を貸してもらえない、ということがなくなります。シングルマザーは、子供のために家にいるべきか、あるいは託児施設に預けてさらに稼ぐかを、自由に選択できるようになります。

個人のワークライフバランス

失業が怖いという理由で今の仕事を無理に続ける必要がなくなります。無理な仕事のさせ方に対しては「No」を言うことができます。うつ病や過労死が減るでしょう。

家族の介護のためにフルタイムの仕事ができなくなっても、生活の心配をしなくてすみます。

農林水産業などの再生

収入が不安定だったり低かったりする産業や業種であっても、仕事に意義や魅力があれば、働く人が集まってくる可能性があります。

長野県にベーシックインカムに期待している村があります。

信州 中川村  村長からのメッセージ

「ベーシック・インカム」は妙案かも

働くことの意義と給与バランス

今後ますます重要になってくる介護の現場では、2007度の介護労働者の離職率は21.6%でした。前年度に比べて1.3ポイント上昇しました。一方、経営の効率面での対応状況をみると、「人件費総額を圧縮した(給与水準切り下げ、人員削減等)」が18.5%で最も多くなっています。また、介護サービスを運営する上での問題点をみると、全体では「今の介護報酬では人材確保等に十分な賃金を払えない」が64.7%で最も多くなっています。

より少ない人数と給与で、より多く働かなければならないために、介護が割に合わない仕事になっていて、離職者が増えていると考えられます。ベーシックインカムによって、改善される部分があるかもしれません。

平成19年度 介護労働実態調査結果

反対に、これまで安い賃金や不十分な待遇でも人を雇用できた職種には、求人しても人が来なくなるかもしれません。人気のない職種では、人を確保するためにある程度まで賃金を上げざるを得ないでしょう。これはベーシック・インカムのデメリットのように思われるかもしれませんが、見方を変えれば、今まで他に選択肢がないために、いかに多くの人が割に合わない仕事を我慢していたか、ということに過ぎません。

勤める以外の生き方

最低限の生活の不安がなくなれば、アーティスト、ミュージシャン、俳優など、芸術・芸能関係で才能を発揮する若者が増えるかもしれません。

行政機構の簡素化

年金、生活保護、児童手当、失業手当など複雑な現金給付のしくみがなくなると、これらの給付の申請受付、資格審査、不正受給の監視などの必要がなくなります。全員に無条件で支給されるベーシックインカムでは、今の生活保護で問題になるような不正受給は原則的に成り立ちません。生活保護の申請に行ったら、役所の窓口で嫌がらせのような対応をされた、というようなこともなくなります。社会保険庁の民営化を議論する以前に、社会保険庁の機能そのものが不要になるかもしれません。

ざっとあげただけでも、いろいろ考えられます。行き詰まり感がある現行制度を続けていくよりは、いい世の中になりそうな期待が持てるように思われます。

一方で、いろいろな反論や疑問も出ています。次回は、ベーシックインカムに関する疑問に答えます。

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