SXSW2017観戦記ーその2 SONYの挑戦"The WOW Factory"
昨夜、NHK BSでも二時間に渡って特集されたSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)。世界80か国以上からの参加者同士がネットワーキングを目的に"参戦"するフェスティバルだ。日本企業も様々な分野から参戦していますが、この観戦記では、主に日本企業の参戦の模様をレポートしていきます。
まず、トップバッターはソニーです。今回、同じ家電分野の企業とはいえPanasonicとは目指す方向感がかなり違う印象を持ちました。一言でいうとさまざなコンテンツも含めてソニーグループの総力を結集した体験型のブースといった感じだろうか。SXSW2017では最も楽しめたブースの1つである。
《倉庫を貸し切った "The WOW Factory"はまさに"驚き工場"》
"The WOW Factory"と名づけられたソニーのブースは、他の企業がひしめくオースティンコンベンションセンターの向かいにあるJAPANFACTORYと呼ばれる別棟にてソニーの最新技術を活用したプロトタイプや研究開発段階のプロジェクト、ソニーのエンタテインメントコンテンツと組み合わせたアトラクション型の展示などを紹介していた。順を追ってすべての展示を紹介していこう。
1.A BLANK CANVAS COMES TO LIFE
まず、入り口を入ってその鮮やかな画像にビックリしたのは高画質の大型ディスプレイ。微細なLED素子を光源とする独自開発のディスプレイらしいが、こんな巨大なディスプレイが我が家に来る日も近いのだろうか。
《LED High Image Quality Video Wall-Crystal LED Intergrated Structure》
2.IMMERSIVE SPACE ENTERTAINMENT
ヘッドマウントディスプレイなどのデバイスを装着することなく、自然なインタラクションにより没入体験を楽しめる没入空間型VRシステム。参加者の椅子の動きを検出し、ドーム型スクリーンに投影する動画やCGを変化させるインタラクティブな没入体験を提供。筆者も含め、ヘッドマウントディスプレイが嫌いな人も多いはず。必然かつ面白いアプローチだと思った。
《Music Visualizer & Cyber Gym》
3.MUSIC WITH ANY SURFACE UI
プロジェクターで映し出したスクリーンに直接触れて操作することで、コミュニケーションをとれる空間を提供する「Xperia Touch」。CES2017で発表されたばかりのこのサービスは、キーボードやドラムを自分で選択して表示することができる。直観的に操作できるユーザーインターフェースを用いて新しいコミュニケーションスタイルを提案していた。これは子供にもすぐに楽しめそうなので家族や友だち同士で一緒に遊べそうだ。一緒に展示していたXperiaブランドのイヤフォンが近未来的でカッコ良かった!
《New User Interface on Xperia Touch》
《Xperia Touch DJ & Xperia Ear "Open-style CONCEPT" 》
4.PLAY THE NEW HUMAN PERCEPTION
迷路のようなステージで「視覚交換鬼ごっこ」をヘッドマウントディスプレイを装着した来場者が体験していた。Superception(超Super +知覚 perception)はコンピュータ技術を用いて人間の感覚に介入して人間の知覚を接続することで、工学的に知覚や認知を拡張、変容させる研究の枠組みらしい。
《Superception》
5.IMMERSIVE PROJECTION MAPPING EXPERIENCE
最近話題のスポーツクライミングとソニーの技術、そしてスパイダーマンのコンテンツが融合したアトラクション。Moving Projectorで投映されるスパイダーマンと共に壁を登り、ゴールをめざすゲームが体験できる。これは、単にスポーツクライミングとしてだけではなくゲーム感覚でスパイダーマンになった気分になれる。思わず日本にいるアメコミ好きの友達に画像を送ってしまった。
《Sony's visual interaction technology》
6. POWERFUL EXPERIENCE USING YOUR BODY AND BRAIN!
これは、もうディズニーランドのインディージョーンズのノリ(笑)。VRアトラクション制作会社「Hashilus」とソニー・ミュージックグループが、共同で五感をフルに使ったVRアトラクション。ヘッドマウンドディスプレイをつけてトロッコに乗ると大冒険がスタート!!
《Special Showcase for future WOW: Gold Rush VR》
7.TRY THE FUTURE FIRST
ソニーの技術や研究開発の一部をオープンにして、利用者である生活者とまさに共創しようというプロジェクトがFuture Lab Program。ちょっとスタイリッシュな首輪のようなハンズフリーで音楽や音声による情報をインタラクティブに楽しめることをコンセプトとした"N"と物体を含むインタラクティブな空間をテーブル上に作り出すことを目的とした"T"の2つのコンセプトプロトタイプを展示していた。
《Future Lab Program コンセプト"N"には小型カメラも内臓》
プロジェクターで映し出されるアリスや建築物の画像を操作する様は、ちょっとした昔のSF映画の世界。住宅産業の新築設計シミュレーションにすぐ使えそうだった。
《Future Lab Program コンセプト"T"》
8.THE FIRST IMMERSIVE INTERACTIVE EXPERIENCEY
映画「バイオハザード:ザ・ファイナル」(Resident Evil: The Final Chapter)が持つ独自の世界観とソニーの触覚技術を掛け合せた没入型インタラクティブ体験。これも直ぐにどこかのアトラクションでサービスが開始されてもおかしくない。マシンガン片手にゾンビを片っ端から打ちのめすのだが、やがて迫り来るゾンビに食べられてしまうとその感覚が着用したスーツから伝わってくる。あぁ、気持ち悪い。あの時の胸と背中の感触が蘇ってきた(笑)
《Sony's Interaction Technolog》
9.THE POWER OF SOUND IS WITHIN YOU
昨年発表された「MOTION SONIC PROJECT」は、手首に装着するデバイスにマイクとジャイロセンサーなどを組み合わせ、ジェスチャーに合わせて情報を高精度に取得し音楽を奏でる。「カラダの動きを音に変える」「カラダの動きで音楽を操る」という、2つの体験を生みだす。来場者が実際に装着して体を自由自在に動かし、思い思いの音を奏でる楽しさを提供していた。しかし、この粘土細工のような"腕輪"はいかがなものか。今回の展示でもっともソニーらしくないデザインだった。
《Motion Sonic Project》
10.EXPERIENCE TOTAL SENSORY OVERLOAD
PlayStation®VR対応ゲーム「Rez Infinite」の共感覚的なコンセプトを具体化するのがこのRez Infinite + Synesthesia Suitシナスタジア・スーツ。26個の振動素子により音楽が振動と共に全身を巡り、その振動部分のLEDが点灯する。振動にはテクスチャ(質感)が伴い、弦楽器で弾かれている感覚、太鼓で叩かれている感覚等が再現される。音楽を耳からだけではなく、触覚や視覚として体感できる共感覚スーツ。白人の人が装着すると何ともサマになる。
《Rezinfinite+Synesthesia Suit》
11.JUMP!TELEPORT AND IMMERSE YOURSELF
今話題のMixed Reality CAVE experience 4K超短焦点プロジェクターを4台用いた全周囲映像空間CAVE型システム。物理的な移動や無限の環境を経験することなく、複数のユーザーがMR / VRを体験できるという。ソニーの超短焦点プロジェクターを活用し、ヘッドマウントディスプレイや自分の影に気を散らすことなく、ゲームモードに没頭することができるらしい。世界各地の風景を360度で複数人で体験させてもらったが景色だけだと感動は薄い。実際にリアルなゲームを体験してみたかった。
《Mixed Reality CAVE Experience》
学生のころからファンだったウォークマンやハンディーカムのソニーは、プレステを経て、今大きく脱皮しようとしている。Xperiaのブランド名が示すようにアップルのように世界に新たなエクスペリエンスを提供する会社として復活して欲しいと切実に感じているのは私だけではないはずだ。
(つづく)