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人事領域(上流/elearing/ERP)コンサルでの人材開発/人事の一歩先の動向を考えます!

人口減少時代に問われる「シニア人材」の再定義 ― 労働力不足ではなく、戦略不足が問題なのではないか ―

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人口構造の変化は、もはや未来予測ではなく現実です。
少子高齢化は不可逆的に進み、労働人口は確実に縮小しています。多くの議論は「人が足りない」という結論に収束しますが、本当に問うべきはそこなのでしょうか。

私はむしろ、「人が足りない」のではなく「人を活かす戦略が足りない」のではないかと感じています。

1. 人口構造の変化が意味するもの

日本の生産年齢人口は1995年をピークに減少を続けています。
一方で、60代・70代の健康寿命は延び、働く意欲を持つシニア層は確実に増えています。

にもかかわらず、多くの企業では、

・定年=一律退場
・再雇用=補助的業務
・経験=過去のもの

という扱いが続いています。

これは人的資本の毀損に近い状態です。

2. AI時代とシニア人材の価値

ここで示唆に富むのが、AI時代における人間の価値を論じたこの動画です。

https://m.youtube.com/watch?v=BUDq_pWwmmo

AIが高度化するほど、人間に求められるのは「判断」「意味づけ」「経験に基づく洞察」です。
これは偶然ではなく、むしろ長年の経験を積んだシニア層が強みを持つ領域です。

AIは計算を加速させますが、
「何を問うべきか」
「どのリスクを取るべきか」
「どの判断が妥当か」
を決めるのは依然として人間です。

特に組織においては、

・複雑な利害調整
・暗黙知の継承
・長期的視点での意思決定

といった領域で、シニア人材の価値はむしろ相対的に高まっています。

3. 労働力問題か、経済成長問題か

人口減少を「支える側と支えられる側の二極化」として語る論調もあります。
しかし長期的には、女性の社会進出や多様な働き方の拡大により、単純な二極構造は平坦化していく可能性があります。

より深刻なのは、労働力不足そのものよりも、

・付加価値を生む構造を設計できていないこと
・経験を戦略資源として活用できていないこと
・年齢で一律に線を引いていること

ではないでしょうか。

4. シニア人材を「再雇用」ではなく「戦略人材」として位置づける

今後求められるのは、

・プロジェクト型での高度専門活用
・メンタリング/コーチング制度の制度化
・AI活用を前提とした経験知の構造化
・年齢ではなく役割・価値基準での評価

といった設計です。

単なる延長雇用ではなく、
「組織の知的資産としての再配置」
という視点が不可欠です。

5. 結論:人口減少は危機ではなく、設計思想を問う試金石

人口減少は避けられません。
しかし、活かし方は選べます。

AIが進化する時代において、人間の経験・判断・倫理観の価値はむしろ高まっています。
その意味で、シニア人材の戦略的活用は「福祉政策」ではなく「成長戦略」です。

議論を恐れる必要はありません。
国民投票であれ、制度改革であれ、企業の人材戦略であれ、
重要なのは「自分たちで決める」という主体性です。

人口構造の変化は、日本の組織設計を問い直す機会でもあります。
この転換点をどう活かすかが、これからの10年を左右するのではないでしょうか。

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