オルタナティブ・ブログ > 谷誠之の 「カラスは白いかもしれない」 >

人を動かすものは何でしょうか?様々な「座右の銘」から、それを探っていきたいと思っています

13. わざと「もやもや感」を残す研修の意図とは

»

お久しぶりですー。(こんなんばっかりや)

先日、あるヒューマンスキル系の研修を受けてきました。中身そのものは、それはそれでとってもためになったのですが、それ以上にためになった講師の方の一言がありました。

演習課題の正解や解答例は、わざと提示しない。なぜなら、研修が終わった後に「もやもや感」を残すためだ。

はじめは、ええっ!と思いました。確かに最近の研修では、ヒューマンスキル系の研修であっても、よく「これって答えは何なんですか?」とか、「模範解答は?」とか、よく求められるのです。ヒューマンスキルの世界に「正解」はありませんが、「妥当なやり方」というのはあります。そこで私は、テキストの末尾に「あくまでも妥当解であって、正解ではありませんよ」と前置きした上で、解答例を載せています。

それが、この講師の方は、解答例を提示しない、とおっしゃるのです。びっくりしました。受講者のニーズをあえて無視するというわけです。しかし、その理由を聞いて納得しました。

解答例を提示したら、受講者はとりあえずその場では「すっきり」する。
しかし、それと同時にその演習のことはもう考えなくなってしまう。
解答例を提示しなかったら、受講者にはいつまでも「もやもや感」が残る。そして、「あの演習の答えは何だろう?」といつまでも考えるようになる。『考え続けてもらう』、それが狙いだ。

私にとっては、まったく逆転の発想でした。ヒューマンスキル系の研修の別の課題は、「受けたら受けっぱなしになってしまう」ことです。それを防ぐために私もさまざまな工夫をしているのですが、「解答例を提示しない」というのは、受けっぱなしになることを防ぐための斬新かつ効果の高い方法です。

一方で、受講者からは「解答例をもらえなくて不満だ」という意見を頂戴する可能性もあります。そこで、「なぜ解答例を提示しないか」ということをきちんと説明するわけです。この説明がなければ、受講者は解答例をもらえないことにフォーカスして、不満だけが残ってしまう(本来の目的が満たせない)ことでしょう。

私も、いろいろな形でこの「解答例をあえて提示しない」というやり方を試みてみることにします。

Comment(0)