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人を動かすものは何でしょうか?様々な「座右の銘」から、それを探っていきたいと思っています

16. 「確証バイアス」にご用心 ~血液型と性格との相関について~

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少し前の記事になるんですが、「血液型と性格『関連なし』」という記事が出回りました。リンク先が無くなった時のために抜粋しておくと、おおむね次の通りです。

血液型と性格の関連性に科学的根拠はないとする統計学的な解析結果を、九州大の縄田健悟講師(社会心理学)が発表した。
縄田講師は、経済学分野の研究チームが、2004~05年に日米の1万人以上を対象に、生活上の様々な好き嫌いなどを尋ねた意識調査に、回答者の血液型が記載されていることに注目。血液型によって回答に違いがあるかどうかを解析した。
その結果、血液型によって差があったのは68項目中3項目だけで、その差もごくわずかだった。このため「無関連であることを強く示した」と結論づけた。

もともと私は、血液型占いは昔から一切信じないほうでした。仕事の関係で数種類の心理学を学習してからは、ますます「人間の性格や行動特性の大部分は後天的に決定づけられるもので、遺伝などの先天的な要素はほとんど関係ない。ましてや血液型とは全然関係ない」という気持ちを強く抱くようになりました。今回の記事は、持論を強化してくれるものです。

一方、ロジカルシンキングやクリティカルシンキングなども扱っている私としては、この記事のウラをとらないわけにはいきません。さっそく日本心理学協会のWebページに訪れました。該当する機関誌は会員の人しか読めないようですが、ここからサマリーを読むことはできます。「血液型と性格の無関連性」と題された論文は、機関誌の第85巻第2号に載っています。サマリーはこちらからごらんください。サマリーには、

2004年から2005年にかけて、日米で合わせて10,000人以上のサンプルをとって調べたが、68項目のパーソナリティーのうち血液型(ABO型)との相関が認められたのは3項目のみで、その相関指数も0.3%以下であった。この結果は、血液型と人格との非関連性を示している。

と書かれています。

一方で、「いや、そんなことはない。A型のXさんは確かに几帳面だし、B型のYさんは確かにいいかげんだ」と反論する人もいるでしょう。それは無意識のうちに、正確証バイアスという現象が発生しているに過ぎないのです。

確証バイアスとは、これまた社会心理学の用語でして、自分に都合のいい情報だけを集めて(都合の悪い情報は無意識のうちに無視するか、あるいは意識的に避けて通って)、自分の先入観を強化する、という行動です。自分の意見や支持を正当化したいが故に、人間が無意識のうちにとってしまう行動です。

例えば、「バナナダイエット(本当にそんなものがあるかどうかは別にして)は効果的である」と信じている人は、バナナダイエットの成功体験談を見るにつけ、「ほら、やっぱりバナナダイエットは効果的なんだ」という持論を強化していきます。一方、バナナダイエットは全く効果がなかった、という体験談は無意識のうちに無視するか、あるいは「それはたまたまその人とバナナダイエットが合わなかっただけだ」と意識的にその結果を避けて通ろうとしてしまうわけです。

では、私の血液型は?私はおそらくおおらかで、滅多に激高することがありません。しかし仕事でうまくいかないことがあったり、予定外のことがあったりすると、激しく落ち込んだり、他人を責めたりすることがあります。何かに極端にのめり込むことがありますが、自分に興味のあること以外は無頓着で、よく知っているジャンルとまったく知らないジャンルが非常に激しい傾向にあります。また、整理整頓できているように見えますが、机の引き出しの中はシッチャカメッチャカです。

一方、「ZさんはB型だけど几帳面だ。めずらしい」というような話をよく耳にします。「B型の人はいいかげんだ」と信じ込んでいる人は、いいかげんなYさんを見たときに持論が強化され、几帳面なZさんを見たときは「めずらしい」という一言で片付けて、まるでマイノリティのように扱ってしまいます。確証バイアスは結構恐ろしいものなのです。

血液型だけに限りません。年俸制でない会社で働いている人が「我が社にも年俸制を取り入れるべきだ」と考えている場合は、年俸制のメリットや、年俸制を導入して成功している企業の事例ばかりを注目し、持論を強化してしまう可能性があります。年俸制のデメリットや失敗事例にも同様に注目し、メリットとデメリットを同じはかりで評価して「やっぱり年俸制を取り入れるほうが良い」と判断するのであれば良いのですが、それができる人はなかなかいません。実はこれがロジカルシンキングとクリティカルシンキングとの違いにも関係してくるのですが、それはまた次の機会に。

ものごとを正しく判断するためには、必ず自分の意見や支持に対する反対意見にも忠実に耳を傾けるようにしましょう。確証バイアスは無意識のうちに発生するので、反証に耳を傾けるのはよほど意識しないと難しいものです。反証されると辛いしね。

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ところで、私のこの投稿そのものにも確証バイアスがかかっていることは間違いありません。もし「血液型と性格との相関が証明された」という記事が踊ったのなら、私はその記事をきっと避けて通っていたでしょうから。

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