70歳までの就業が一般的になるなら、60歳で引退モードに入っている場合じゃないんじゃない?
40代後半のころの話。
お取引先で、非常に厳しく鍛えてくださる人材育成担当者がいらっしゃって、長年のお付き合いの中で、徐々に関係ができていき、最後は、
「もう、田中さんだから、何をリクエストしても応えてくれるでしょ」
という信頼を得るまでになった。
本当に厳しく指導されたが、そういうお客様もだんだん珍しくなって、今思うと貴重な体験であった。
その方をAさんとしよう。
Aさんは、60歳になった時、1年契約の再雇用という道を選んだ。
最前線で、人材育成についてプランし、運営していたAさんは、60歳になって再雇用の立場になった途端に、一歩、後ろに引くようになった。
会議でも発言しない。
研修当日も事務局として動き回っていらっしゃるが、私に意見とかアドバイスとか質問などなさらない。
絶対何かおっしゃりたいことがあるはずなのに、とずっと思っていた。
ある時、Aさんに尋ねた。
「Aさん、一歩も二歩も後ろに下がったような印象があるのですが、意図的ですか?」
「はい、そうです。僕は、あと5年以内でここを去ります。これからは、前面に出てはいけないと自戒しています。若い人たちの考えでやらないとね。僕が何か言うと、若い人が動きにくいでしょ」
と。
言いたいことは、やはり色々おありなのだろうと、その時思ったものの、Aさんは65歳になるまで、本当に数歩下がった立ち位置から、人材育成の担当者として、私たちと関わってくださった。最後まで一歩下がったままを貫いた。
私は、その姿を見ていたし、強く印象に残っていたので、昨年、60歳になった時、
「一歩後ろに引かねばならぬ」
と強く意識してしまった。
そして、あれこれを後輩などに譲っていった。
自分が前に出ないように、意見言わないように。
・・・しかし、うまくいかなかった。
まず、自分のアイデンティティが揺らいだ。
「中年の危機」どころの騒ぎじゃない。
「還暦の危機」である。
周囲から「淳子さんはあと数年でいなくなるのだから、今の内に●●」という言葉を掛けられるようになって、あれこれ引き継がねば、という気持ちにもなったが、自分を見失いかけた。
ある時、そのことをあるマネージャに話したら、
「フーン、あと数年で絶対にいなくならない人って、この会社にいるのかな。誰だって数年でいなくなる可能性はあるのだから、いなくなるって、別に定年を迎えた人だけじゃないよね」
それを言われてはっとした。
そうだ、別に、「いつかいなくなる」のは、私だけじゃない。
それで61歳になって気分を切り替えた。
遠慮なく、前に出ようと。
悔しかったら、さらに私の前に出てみてよ、と。
・・・
現在、大手ほど70歳までの雇用を実現しようと人事制度などを変えているのをよく耳にする。
60歳で「一歩後ろに下がる」なんてしていたら、10年間も下がっていなければならない。
これって、シニア自身のためというよりも、(それもあるが)
組織にとって勿体ないことだ。
だから、何も下がる必要はないのだ。
どんどん出ていけばよい。
その内、下がるつもりがないのに、どんどん下がっていってしまう日が来るだろう。
まだまだ60代なんて若いのだ。
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