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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「俺の話を聴け!シニア」問題

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先日、研修の中で、アクティブリスニング(傾聴)を扱い、「後輩の話を聴きましょうね」と解説もしたところ、

「ああ、こういうの、年上の人に勉強してもらいたいなぁ」

というつぶやきが聞こえました。30代くらいの方からです。

「上司とか年長者、話、聴いてませんか?」

とにこにこしながら問いかけると、

「全員って訳じゃないですけど、まあ聴いていない。こちらが話そうと思っても、ほとんどしゃべっている。最後まで話をさせてくれない」

とのこと。

わかります、わかります、わかります。

わかります、に2000点。倍の4000点。仁くんもつけちゃう。座布団も10枚あげちゃう。

その昔、といっても、15年くらい前の話ですが、私が関わった上司たちも人の話は全く聴いていませんでした。

この話は、何度か書いたので、読んでいくうちにデジャビュ感が漂うかもしれませんが、もう一度。

ある時、「社長面談がある」というので、社員が一人ずつ呼ばれたことがあります。全社員を対象とするというので、私の番が回ってくるまで2か月くらいあったような気がします。

面談待ちでいると、終わった同僚から続々と話が聞こえてきます。

「どうだった?」

「面談というから、僕の話を聴いてくれるのかと思ったら、ほとんどの時間、社長がしゃべっていた」

とのこと。

どの同僚も口をそろえて、

「そうそう! 9割は社長が話していた」

「あ、俺も話を聴かなくちゃな、というので、やった!やっと話せると思って、一言いうと10倍以上返ってきて、結局私はずっと聞き役だった」

などというわけです。

私の順番が回ってきたら、本当にそうでした!

全く聴いちゃいない。

「社員の話を聴きたい」

といって個別面談を設定したはずなのに、まったく聴いちゃあいない。

たとえば、

「田中さんは、これからのキャリアをどう考えているの?」

「ええと、私は、〇〇を極めたいと思っていまして、そのためには」

「あ、そうだよね。それってさー、××という道もあると思うんだけど、それは考えてみたのかな?今、世の中を見ると××とか〇〇とか△△といった考え方もあって、たとえば、アメリカでは、・・・・ヨーロッパだと・・・社内しか見てないと・・だろうけど・・・・」

10分続く。

私のキャリア観はどこかへすっ飛んでしまい、社長の演説を聴く羽目に。

あまりにあまりな展開だったので、その後もこんな調子で、合計45分くらい話を聴かされた最後に「何かある?」と言われたのをいいことに、

「あのですね。もう少し社員の話を落ち着いてじっくり聴いてください」

「え?俺、聴いているよね」

「いえ、今だって、45分は社長が話していました。ついでなので申しますが、面談が終わった同僚は口をそろえて、"何も話せなかった""話を聴く時間が長かった"と意気消沈して戻ってきましたよ。もっと社員の声を我慢して聴いてください」と言ってみました。

『言ったったー』

「俺、聴いていない?え?そうなの?」

ことほど左様に、職位が上がると話を聴かなくなるものなのですよね。

年齢が上がっても同じです。

年齢が上がって、職位も上がると、ダブルで話が聴けなくなります。(という人が多いものです)

「俺の話を聴け!シニア」があちこちに湧き出てくるのです。部下の話を聴くより、「いいか、わしの話を聴くんだぞ、今からいいこというからな」的なシニアがどんどん増殖してくる、らしいのです。

上述の30代の方も、気を付けないと20年後には、「俺の話を聴け!シニア」になってしまう可能性はあります。

話を聴くって、難しいことです。

年齢を重ねると、自分の人生経験も増え、考えも想いもあるので、どうしてもしゃべりたくなるんですよね。

でも、若手の話を聴いてみれば、それはそれはとても面白いことを話してくれるものです。

頷いて、「それで?」「へぇ」「面白いね」などと応じるとよいのですが、意識が必要です。

幸い、今、私の周りには、「俺の話を聴け!シニア」が一人もいないので、誰もがきちんと話を聴いてくれ、「聴いてくれない」不満を抱えるケースは見聞きすることがなくなりました。

昭和生まれがあかんのか、

シニアがあかんのか、

MGRがあかんのか、

どうなのでしょうか?

まあ、とにかく、最後まで聴いてください、皆さん。


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・・・こういうことを言うと、「部下の話がまだるっこしいからだ」「忙しいんだから、簡潔に話さないほうが悪い」などと反論が来る可能性がありますが、そういうことを言っているわけじゃあない。と先に述べておきたいと思います。まる。

     

阿川さんの本、するっと読めて、そして深いです。おススメ。

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