「クソみたいな仕事をさも面白そうに言うなよ」と思った・・・んだそうです。
ある企業でセミナーを担当しまして、部下育成とか後進指導について皆さんと議論していた時、こんなセリフが飛び出してきました。
「新人のころ、クソみたいな仕事を、さも面白そうに言う上司がいて、新人ながら、そういうウソを言っちゃだめだと強く思っていた。だから、自分が上司になったら、ウソを付くのではなく、正しく説明すべきだと思った。もちろん、クソみたいなつまらない仕事はあるんだけど、面白そうにだますのがイケないと思う」
だいたいこんな感じのことをおっしゃっていたように記憶しています。
私の手元メモに「クソみたいな仕事を楽しそうに言わない」などと走り書きしていることから、生の声だったと思います(笑
この話を聞いて、私も思い出したことがあります。
ずいぶん前のことですけれど(最近のことは差しさわりがあるので、ずいぶん前の話しかできないし、最近のことであっても、「ずいぶん前の話ですが」と断ることにしています。いや、これは本当に15年以上前の話ですが)、
新しくやってきた上司に、
「これは、淳子さんの"ため"になるから、やってみない?」
「これは、淳子さんの"成長"に役立つから、やってみて」
とひたすら、「私のため」を強調して仕事をアサインされることとなりました。
『おお、そうか。私の成長、私のためを思ってくださっているのだなぁ』『仕事なんだからやって、とか、とりあえずやって!と言われるより、私のためになる、と言われると悪い気はしないなぁ』
とまだまだ純粋だった30代淳子さんは思ったものでした。
しかし、よぉーくよぉーーーーーーーーーく耳をそばだてて聴いているとですね、
誰にでもいつでもどんな仕事でも言っている訳ですね。
「これ、●●さんの"ため"になるから、やってみて」
・・・テンプレートのように。●●を変えれば誰にでも使えますぜ、だんな的な・・・。
しかも、しかも、さらによく考えてみると、どうもその新任上司にとって"メンドクサイ"仕事が私たちに"ため"になる、という理由づけと共に割り当てられているような気がしてきました。
新人上司にとって、新しい組織でのあれこれは、覚えるのも理解するのもめんどくさい。
前からわかっていることなら簡単にすっとできるけれど、新しく覚えたり、新しく他者と調整したりするってのは結構エネルギーがいる。
そのたぐいの、上司にとってメンドクサイと思われるものが、「ためになるから」と言われて、私たち部下に降り注がれていることに気づいてしまったのでしたー。
ああ、ウソはあかん。ウソはあかん。
それなら、「まだ右も左もよくわからんので、これ、助けてくれない?」と言われいたほうがうんといい。
「わかりました。それなら人肌脱ぎましょう」と言ったかもしれない。
それを「あなたの成長のためになるから」なんて、ひどいわ、ひどいわ。
・・・まあそんな想い出が走馬灯のように、冒頭の「クソみたいな仕事」という発言でよみがえってきたのでありました。
会社には、「クリエイティブな仕事」「わくわくする仕事」もあれば、「クソみたいな仕事」もあるわけですけれど、こういうの、上手に言わないと部下のやる気を本当に下げちゃいますよねぇ。
で、以前、逢った20代後半くらいの男性が語ってくれた想い出を最後に。
「ボクは、新人時代、いわゆる"新人仕事"がたくさん割り当てられて、たいていがルーチンワークで、だんだん飽きてきて、つまらなくなって来ました。たとえば、ただ何かを数えるとか、データが合っているか突き合わせるとか、書類を整えるとか・・。ある時、週次作業の一つを『ああ、つまんねぇな。早く次の新人入ってこないかな』と思いながらやっていたら、脇を先輩が通りかかりまして、彼、こう言ったんです。
『何やってんの?』
『●●作業です』
『ああ、それか』
『はい...』
『君がやっているその仕事、地味だよね。地味だけど、このチーム全員のためにとても重要な仕事なんだ。皆のためにありがとうね』
そうやって席に戻って行ったんです。
ああ、地味だけど、重要で、だからありがとう!ってOJT担当でもない先輩に言われて、それ以来、ちゃんとやろう、と心入れ替えました」
いい話だ。
「地味は地味」とちゃんと言ったわけですね。つまり、冒頭の男性の言葉を借りれば「クソみたいな仕事」ということでしょう(でもないのかな?)
それを、「でも、重要なことで」「皆のためにありがとう」
ありがとう、ありがとう。
「皆のためにありがとう」
なんて素敵な言葉なんだ!
あ、これ、「言葉のチカラ」のネタにすればよかった・・・・。
・・・というわけで、忘れてましたが、「言葉のチカラ」、公開されました。
ヤァ! ヤァ! ヤァ! 新入社員がやって来る――新人が言われてうれしい言葉、戸惑う言葉
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