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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「会社のために勉強している」という発想はもうやめた方がいいんじゃないか。

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以前(といっても5年くらい前のこと)、30代のITエンジニアの方たちがこんな話で盛り上がっている場面に遭遇しました。

4-5人いた中の一人が
「俺、土日のどちらかは、勉強に充てているなぁ。 平日だけじゃ追いつかないし、技術がどんどん進化していくので、土日も片方が使っている。もちろん数時間だけではあるけど。そうしないと、自分の技術力を維持・向上できないし」
といった発言をした後、残りの3-4人が、口ぐちにこう言ったのです。

「え? お前、土日に"会社のための"勉強してるの? 信じらんねぇ」
「なんで"会社のため"に土日つぶしてまで勉強してんの?」
「"会社のための"の勉強で、自分の大事なプライベートな時間まで浸食されたくないよな」
「俺、会社にいる間は勉強するけど、会社を一歩出たら、勉強なんてしねぇ」
「なぁ、そうだよなぁ。"会社のための"勉強なんて・・・」
「土日は、遊ぶためにあるんだよ」

・・・うお、そうか、そう考えるのか。

まあ、もちろん、「業務命令」で勉強する必要があるなら、終業時間内にその時間を確保する必要はあるでしょう。(少なくとも、法律上は)

でも、「会社のための勉強」という捉え方って、ホントにそれで合っているのでしょうか。

会社の業務知識を得る、よそで使えないローカルなルールを覚える、というようなことならまだしも、最新のIT技術やら業界知識やら・・・そういったことって、本当に"会社のための"なんでしょうか。

4月から「キャリアコンサルタント試験」に向けて勉強を始め、4月5月とそのための講座に毎週末通学しているのですが、そこで出てくる話を聴く度にこの30代の方たちのことを思い出してしまいます。

「自分のキャリアは自分で切り開く」
「自分で自分が納得のいくキャリア(これは職業だけでなく、人生全般を指します)を送る」

今の時代は、「自律キャリア」という考え方が主流で、それはとりもなおさず、全員が会社に入って、ミスなく過ごせば、ほぼ全員が課長や部長に昇進し、給料もどんどん上がっていく・・・雇用も安定、一社を勤め上げるという時代ではなくなったことの現れでもあるでしょう。

会社なんていつまであるかわからない。
大きな会社だろうとそれは変わらない。
小さな会社は吹けば飛んでしまうかもしれないけれど、
大きな会社は外資が入ってきて、全く異なる文化になることだってある。

・・・ということになってくると、

勉強というのは、「会社のため」ではなく、「自分のため」に行うものであって、
「自分のため」というのは、

●雇われる能力
だったり
●雇われ続ける能力
だったりを常に磨いておくってことなんだと思うのですね。
(「雇われたくない」人は、「自分で何かをする能力」を)

冒頭の30代は、「会社のために」なんて勉強しねー、平日の勤務時間内ならするけど、それは必要最低限・・・なんて話していたけれど、
彼らにはまだ定年まで40年近く残っていて、どうするのだろう、と心配してしまいました。

"会社のために"勉強しているのではなく、"自分を守るため"に勉強しているんじゃないでしょうか。

勉強している=自分を守る、と言う風にはならないけれど、何もしないでいるよりは、ましだと思うのです。

どこにいても「安泰」ってことはもはやなくなっていて、大手にいても、伝統的企業にいてもそれは同じで。

机に向かって行うだけが勉強ではないけれど、「土日に仕事関係の勉強なんてしねー」と考えていること自体が、ある意味、"会社に依存"しているということなのかもしれません。

文科省も数年前から、「生き抜く力を育てること」と力説していますしね。

ここには、こんな風にも書かれています。国を挙げて、「もう会社みたいなもん(組織)に頼るな」と言っているような・・。

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今まさに我が国に求められているもの、
 それは、「自立・協働・創造に向けた一人一人の主体的な学び」である。
(リンク: http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo2/siryou/attach/1330546.htm )
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【キャリアに関するこれまでに読んだ本たち(の一部)】

※こうやって調べてみると、私が読んだ時はハードカバーだったのが新書になっていたりして、便利!

             


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